「フ~ッ!!」
「なぜ、そんなに慌てているのですか?」
「いや、だって、ずっと普通に姿が見えてる状態のままで
家の中にいられると、何か不安だし、かと言って、
突然、魔法で透明になっても、それはそれで怪しいし、
父さんも母さんも、ビックリしちゃうだろ?」
「不安・・・なぜ不安なのでしょうか?それに、
なぜ、それで驚くのでしょうか?」
アーチフィスは、この世界では
〝他の人は皆、魔法が使えない〟という事も、
そんな〝魔法が使える自分〟がこの世界では
異質である事も、
まだ知らないようだった。
(はぁ・・・アーチフィスって頭良いのに、
〝現実とゲームの違い〟だけは、
まだ理解してないんだな~)
そして、今日もまた、一緒に、歩いて学校へ向かった。
「遊舞さん、今日も、透明になって、あなたのそばにいます」
「ありがとう。じゃあ、頼んだよ」
「はい」
遊舞は、また、アーチフィスを透明にした。
〝シュン〟
遊舞は、また学校に入って、授業を受けた。
その日の6時間目の授業は、
「理科」だった。
遊舞はその時、
(あ~、この教科、成績優秀な泳が特に得意なヤツだ!!でも、
昨日、泳はあんな事、言ってたけど、言ってた事、何が何だか
さっぱり解んなかったな~)と思っていた。
やがて、授業が終わり・・・・・・
「〝起立〟〝礼〟〝着席〟」
〝キーンコーンカーンコーン〟
その日もまた、泳、奏、演人と一緒に帰った。
すると、奏が
「今日は、何もなかったね~。良かった良かった!!」と言った。
遊舞も、
「うん!!本当に良かったよ!!!」と言った。
すると、演人は、
「しかし、昨日のアレは、何だったんだろうね~」と言った。
遊舞は、
「さぁ?でも、今日はホント、
何もなくて良かったな~!!!」と言う。
奏と演人は、
「そうだね」と答えた。
泳は、
「そうだね。でも、昨日の事、どういう事だったのか、
本当に気になるね」と言った。
遊舞は、
「うん。それに、先生も言ってた通り、
また、いつ起こるか分からないから、
気をつけないといけないね」と答えた。
奏と演人と泳は、
「うん。気をつけよう」と言った。
数十分歩いたところで、
また皆、バラバラになり、遊舞はまた1人になった。
遊舞も、
(そうだよな~。気をつけないとな~)と思っていた。
「ただいま~」
「おかえり~」
家に帰った後、また、いつものように
自分の部屋へ行った。
「良し、アーチフィスの透明を解くか」
〝シュン〟
「アーチフィス、昨日、言ってくれた通り、
ちょっと宿題、手伝って~」
「かしこまりました」
「算数の問題のここなんだけどさ、
これ、一体、どうやって解けば良いの?」
「あ~、コレですか。ここはこうして」
「なるほど~!説明が解りやすい!!
さっすがアーチフィス!!!」
〝カキカキカキカキ〟
「ここは、どう解くの?」
「こうです」
「なるほど~!!ホント助かる~!!!」
いつもなら30分ほどかかる算数の宿題が、
アーチフィスが教えてくれると、
10分で終わってしまった。
「わ~!!あっという間に終わっちゃった~!!!
ホント、ありがとう!!!アーチフィス!!!」
「いえいえ。これくらい、何でもありません」
「いや~、でも、アーチフィスって、
ホントに凄いな~!!カッコ良いし、頭良いし、
ホント、僕なんかとは大違いだよ!!!」
「いえ、遊舞さんも、努力すれば、
これくらい出来るようになりますよ」
「そうかな~?」
「はい。きっと」
「ありがとう。でも、きっと、アーチフィスには敵わないよ」
「ありがとうございます。ですが、遊舞さんも、
まだ、自分で自分の才能や魅力に気がついていないだけなのでは?」
「え~?そう?僕の才能や魅力って何だろう?
僕は、特別、頭が良いワケでもないし、同じクラスの子達みたいに
何か得意な事があるワケでもないし、
あえて言うなら〝ゲーム〟。ってとこだけど、
〝ゲーム〟が上手いからって、別にモテるワケじゃないし、
それを〝カッコ良い〟って思ってくれる人も、少なそうだしな~」
「そうですか?世間がどう評価するかは知りませんが、
私は、無駄な特技などないと思っていますが」
「そうかな?」
「はい」
その時、遊舞は、
(今まで考えた事もなかったけど、
僕のこの特技がいつか役に立つ時が来るのかな~?)と
思っていた。
その後、漢字ドリルや国語の教科書の音読もして、
全ての宿題をした。
「ああっ!終わった~っ!!」
「お疲れ様でした」
「じゃあ、今日は何しよ。あ、そうだ!!
アーチフィス、〝音楽〟聴いてみない?」
「〝音楽〟ですか?」
「え?アーチフィス、音楽、知らないの?」
「いえ、知っていますが、遊舞さんのような年齢のお方が
音楽を聴くというのが、少し意外で・・・」
「失礼だな~!!どんな年齢でも、音楽って、楽しいんだよ!!!」
「そうなんですか」
遊舞は、アーチフィスに
CDで〝J-POP〟の色々な曲を聴かせた。
〝♪~〟
「なるほど」
「ん?どうかしたの?」
「いえ、〝音楽というのは、こういうモノもあるんだな~と
思いまして〟」
「え?アーチフィス、〝J-POP〟聴いた事ないの?」
「はい。私は、元々は、イギリスに住んでいたので」
「そっか~。まぁ、アーチフィスにとっては、
色んなモノが、まだ見慣れないモノばっかだもんな~。
でも、〝J-POP〟も、なかなか良いでしょ!?」
「はい。良いとは思います。
こういう文化もあるのだという事が良く解りました」
「え?何か、曖昧な感想だな~・・・他に何か感想ないの?」
「・・・それ以外には、ありませんね」
遊舞は、
(・・・そっか~。やっぱり、アーチフィスには、
〝面白い〟って事がどういう事か解らないんだな)と思った。