そして、朝・・・・・・
誰かが霧河の家にやって来て、ピンポンを鳴らした。
〝ピーンポーン〟
「は~い」
「警察です。〝霧河竜令〟さんですね?」
「はい。そうですが」
「署までご同行願います」
「え!?」
「昨日、あなたが怪しげな服装をして、
〝サムターン回し〟などの〝ピッキング〟で、色々な家に侵入しているところを、ある、とても目が良いという青年が見たそうです。証拠もあります。その青年は、懐中電灯を持っていて、
あなたの姿をしっかり写真や動画に撮ったそうです」
「え・・・・・・!?え~~~~~~!?」
〝ガチャ〟
霧河は、手錠をかけられ、事情聴取される事になった。
それからしばらくして、裁判になった。
霧河は、株取引でかなりの大金を
稼いでいるが、強い弁護士を雇ったりはしなかった。
なぜなら、
霧河は、たくさんの、子供などの人達にプレゼントを
渡しながらも、自分が犯罪行為をしている事を、自覚していたからである。
そして、今までに、クリスマスに霧河と関わった子供達、その子供達の親、そして、霧河の会社の社員達、「喫茶窓際族」の店長「窓河実爪」も出席し、開廷した・・・・・・
そこには、
「まさかあの霧河が・・・・・・」、あるいは、
「ったく、勝手に色んな人の家に入って、何考えてんだよ」、
あるいは、
「ピッキングに、住居不法侵入罪、あの大手のおもちゃ会社の係長がやるなんて、泥を塗るような真似しやがって」、
あるいは、
「大人として恥を知れよ」などと言っている者達がいた・・・・・・
そんな色々な言葉を聞いて、霧河は、
(そうだよな・・・返す言葉もない・・・)と思った。
霧河の「サンタクロースパイ」としての活動に反対する者は
とても多く、霧河の敗訴、有罪が決定しそうな空気になっていた。
(は~・・・そうか、やっぱりな。俺は、敗訴して、
逮捕されるんだ。会社の人達にも多大な迷惑をかけた。でも、
これが運命なんだ。悪い事したから、それが自分に返ってきただけなんだ・・・)
そこで、
裁判長が、判決の結果を言い渡そうとし、
息を大きく吸う。
しかし、そこで・・・・・・
「ちょっと待ってください!!!」と、
ある成人女性が言い、その声が、裁判所内に
響き渡った。その言葉に、皆、とても驚いた。
しかし、
一番驚いたのは霧河だった。
「え・・・・・・!!!???」
異議を唱えたその成人女性は、去年のクリスマスに
霧河がマフラーを渡した「河合愛」の、以前まで
クリスマスやサンタクロースを馬鹿にしていた母親だった。
「あの、彼がどれだけ良い人で、どれだけ娘を喜ばせてくれたか、どれだけ娘を思ってくれたか知ってますか?彼は、クリスマスを
本気で愛し、クリスマスやサンタクロースを
馬鹿にして、毎年、娘にプレゼントを与えていなかった私に
代わって、娘に夢や希望を与えてくれたんです!!!そうやって、
彼からプレゼントをもらって、初めてクリスマスプレゼントを
もらった娘は、とても笑って喜んでたんです!!!それを
きっかけに私は、〝今まで娘にとてもヒドい事をしていたな〟と思って、自分を見つめ直して変わる事が出来たんです!!!
以前の私は、娘を充分に愛してあげていませんでした!!!
彼が、とても大切な事を教えてくれたんです!!!」と言った。
それを聞いて、霧河は、とても驚いていた。
すると、愛の母が言った言葉を聞いて、
彼からプレゼントをもらった子供達も、皆、
「そうだよ!!!このお兄さん、凄く良い事してくれたんだよ!!!お兄さん、とっても良い人なんだよ!!!」と言い、他の、
プレゼントをあげた子供の親や、あの、元日に大金などのモノを
あげた夫婦などの人達も、
「夢のない人生なんてつまらない!!!」と言い、
他のたくさんの大人達も、
「そうだそうだ!!!」と言い、
そして、裁判は、逆転大勝利し、霧河は、無罪を勝ち取り、
そこにいたたくさんの人達が、
クラッカーを盛大に「パ~ン!!!」と鳴らした。
霧河を有罪にしたかった大人達は、
「ちくしょ~~~!!!」と、とても悔しそうにしている。
そこで、霧河の「サンタクロースパイ」としての今までの活躍や
無罪判決は、大きなニュースになり、テレビの報道番組や新聞などでも、あっちこっちで大きく取り上げられた。
そして、
彼の功績は、とても誉めたたえられ、公式に認められ、
表彰される事となった。時間が流れ、数か月後の授賞式にて・・・・・・
「おめでとうございます。あなたは、サンタクロースとして、
子供達に様々なプレゼントのみならず、夢や希望を与えた事を、
ここに賞します」と言って、賞状が授与された。
霧河は、それを受け取り、同時に、
表彰式に出席していた、たくさんの人達が
拍手し、とても大きな歓声が上がる。
〝パチパチパチパチ〟
「ワ~ッ!!おめでと~~~う!!!」と。
霧河は、拍手してくれた人達がいる方向に
振り向き、とても嬉しそうに笑顔で手を振り、
「ありがと~~~う!!!」と言った。