しかし、そこで・・・・・・
「ちょっと待ってください!!!」と、
ある成人女性が言い、その声が、裁判所内に
響き渡った。その言葉に、皆、とても驚いた。
しかし、
一番驚いたのは霧河だった。
「え・・・・・・!!!???」
異議を唱えたその成人女性は、去年のクリスマスに
霧河がマフラーを渡した「河合愛」の、以前まで
クリスマスやサンタクロースを馬鹿にしていた母親だった。
「あの、彼がどれだけ良い人で、どれだけ娘を喜ばせてくれたか、どれだけ娘を思ってくれたか知ってますか?彼は、クリスマスを
本気で愛し、クリスマスやサンタクロースを
馬鹿にして、毎年、娘にプレゼントを与えていなかった私に
代わって、娘に夢や希望を与えてくれたんです!!!そうやって、
彼からプレゼントをもらって、初めてクリスマスプレゼントを
もらった娘は、とても笑って喜んでたんです!!!それを
きっかけに私は、〝今まで娘にとてもヒドい事をしていたな〟と思って、自分を見つめ直して変わる事が出来たんです!!!
以前の私は、娘を充分に愛してあげていませんでした!!!
彼が、とても大切な事を教えてくれたんです!!!」と言った。
それを聞いて、霧河は、とても驚いていた。
すると、愛の母が言った言葉を聞いて、
彼からプレゼントをもらった子供達も、皆、
「そうだよ!!!このお兄さん、凄く良い事してくれたんだよ!!!お兄さん、とっても良い人なんだよ!!!」と言い、他の、
プレゼントをあげた子供の親や、あの、元日に大金などのモノを
あげた夫婦などの人達も、
「夢のない人生なんてつまらない!!!」と言い、
他のたくさんの大人達も、
「そうだそうだ!!!」と言い、
そして、裁判は、逆転大勝利し、霧河は、無罪を勝ち取り、
そこにいたたくさんの人達が、
クラッカーを盛大に「パ~ン!!!」と鳴らした。
霧河を有罪にしたかった大人達は、
「ちくしょ~~~!!!」と、とても悔しそうにしている。
そこで、霧河の「サンタクロースパイ」としての今までの活躍や
無罪判決は、大きなニュースになり、テレビの報道番組や新聞などでも、あっちこっちで大きく取り上げられた。
そして、
彼の功績は、とても誉めたたえられ、公式に認められ、
表彰される事となった。時間が流れ、数か月後の授賞式にて・・・・・・
「おめでとうございます。あなたは、サンタクロースとして、
子供達に様々なプレゼントのみならず、夢や希望を与えた事を、
ここに賞します」と言って、賞状が授与された。
霧河は、それを受け取り、同時に、
表彰式に出席していた、たくさんの人達が
拍手し、とても大きな歓声が上がる。
〝パチパチパチパチ〟
「ワ~ッ!!おめでと~~~う!!!」と。
霧河は、拍手してくれた人達がいる方向に
振り向き、とても嬉しそうに笑顔で手を振り、
「ありがと~~~う!!!」と言った。
だが・・・・・・
〝ガバッ〟
そう、コレは、霧河が見ていた夢だった。
実は、霧河は、
クリスマス・イヴである本日、深夜に色々な家にプレゼントを
渡して帰って来て、時間が経ってから、夕方、去年の
クリスマスに霧河が会社で倒れた時、あの女性社員から言われた、「自分の身体や睡眠を大事にして」という言葉に従い、
イヴではないクリスマス当日の深夜に備えて、ずっと、
自宅の寝室で寝ていたのだ。
「何だ~。夢か~。ビックリした~!!!まぁ、
そりゃそうだよな。現実離れし過ぎてたし。でも、今の事、全部夢だったのは、悔しいし、ショックだけど、サンタクロースの存在が公になって、全ての人が〝いる〟って知っちゃったら、何か、
ロマンがないもんな~。だから、これで良いのかもしれないな」
時計を見てみると、時間は、23時37分だった。
「おっ!いっけね!!もうクリスマスになっちまう!!!
急がないと!!!〝真っ赤なお鼻の~トナカイさ~んは~♪〟、
って俺、トナカイ飼ってねぇけど(笑)」と言い、
あの、黒いサンタクロースの服を着て、玄関まで移動しようと
思ったその時、子供達をはじめとするたくさんの人達が
呼んでいる声が自分を呼んでいるような気がした。
「〝お兄さん〟、〝兄ちゃん〟、〝お兄ちゃん〟」などと。
「おっ!皆、俺を呼んでるな!!」
そこで、霧河はこんな事を思った。
(俺のやってる事は、確かに犯罪だ。だからいつか、
もしかしたら、この事が、本当に現実でもバレて、
もしかしたら、捕まってしまうかもしれない。でも、皆、
凄く喜んでくれるし、これからも、たくさんの人達に、
プレゼントだけじゃなくて、夢や希望も与えたい。だって、
それが、俺の生きる意味だと思うから)と。
外に出ようとした時、玄関に飾ってある、
霧河の幼い頃に、両親と一緒に撮った家族写真が目に留まり、
霧河は、笑顔で、
「父さん、母さん、行ってくる」と言い、
そして、玄関のドアを開けた。
〝バタン〟
「霧河竜令」。本名、「網田謎留」。これからも、彼は毎年、
クリスマスに、子供をはじめとするたくさんの人達に、
プレゼントや夢や希望を与えていくだろう。
クリスマスの朝、
〝枕元を見ると欲しいモノが置いてある〟という現象は、
もしかしたら、この、不思議な男が起こしているのかもしれない。