そこで、霧河の「サンタクロースパイ」としての今までの活躍や
無罪判決は、大きなニュースになり、テレビの報道番組や新聞などでも、あっちこっちで大きく取り上げられた。
そして、
彼の功績は、とても誉めたたえられ、公式に認められ、
表彰される事となった。時間が流れ、数か月後の授賞式にて・・・・・・
「おめでとうございます。あなたは、サンタクロースとして、
子供達に様々なプレゼントのみならず、夢や希望を与えた事を、
ここに賞します」と言って、賞状が授与された。
霧河は、それを受け取り、同時に、
表彰式に出席していた、たくさんの人達が
拍手し、とても大きな歓声が上がる。
〝パチパチパチパチ〟
「ワ~ッ!!おめでと~~~う!!!」と。
霧河は、拍手してくれた人達がいる方向に
振り向き、とても嬉しそうに笑顔で手を振り、
「ありがと~~~う!!!」と言った。
だが・・・・・・
〝ガバッ〟
そう、コレは、霧河が見ていた夢だった。
実は、霧河は、
クリスマス・イヴである本日、深夜に色々な家にプレゼントを
渡して帰って来て、時間が経ってから、夕方、去年の
クリスマスに霧河が会社で倒れた時、あの女性社員から言われた、「自分の身体や睡眠を大事にして」という言葉に従い、
イヴではないクリスマス当日の深夜に備えて、ずっと、
自宅の寝室で寝ていたのだ。
「何だ~。夢か~。ビックリした~!!!まぁ、
そりゃそうだよな。現実離れし過ぎてたし。でも、今の事、全部夢だったのは、悔しいし、ショックだけど、サンタクロースの存在が公になって、全ての人が〝いる〟って知っちゃったら、何か、
ロマンがないもんな~。だから、これで良いのかもしれないな」
時計を見てみると、時間は、23時37分だった。
「おっ!いっけね!!もうクリスマスになっちまう!!!
急がないと!!!〝真っ赤なお鼻の~トナカイさ~んは~♪〟、
って俺、トナカイ飼ってねぇけど(笑)」と言い、
あの、黒いサンタクロースの服を着て、玄関まで移動しようと
思ったその時、子供達をはじめとするたくさんの人達が
呼んでいる声が自分を呼んでいるような気がした。
「〝お兄さん〟、〝兄ちゃん〟、〝お兄ちゃん〟」などと。
「おっ!皆、俺を呼んでるな!!」
そこで、霧河はこんな事を思った。
(俺のやってる事は、確かに犯罪だ。だからいつか、
もしかしたら、この事が、本当に現実でもバレて、
もしかしたら、捕まってしまうかもしれない。でも、皆、
凄く喜んでくれるし、これからも、たくさんの人達に、
プレゼントだけじゃなくて、夢や希望も与えたい。だって、
それが、俺の生きる意味だと思うから)と。
外に出ようとした時、玄関に飾ってある、
霧河の幼い頃に、両親と一緒に撮った家族写真が目に留まり、
霧河は、笑顔で、
「父さん、母さん、行ってくる」と言い、
そして、玄関のドアを開けた。
〝バタン〟
「霧河竜令」。本名、「網田謎留」。これからも、彼は毎年、
クリスマスに、子供をはじめとするたくさんの人達に、
プレゼントや夢や希望を与えていくだろう。
クリスマスの朝、
〝枕元を見ると欲しいモノが置いてある〟という現象は、
もしかしたら、この、不思議な男が起こしているのかもしれない。