サンタクロースパイ

10.サンタクロースの好物は?

そして、

帰る途中、この前も行った「喫茶窓際族」に

立ち寄った。そう、前に来た時に、店の雰囲気も良くて、店長がとても良い人だったから、霧河は、この店がとても気に入ったのだ。



〝カランコロン〟



「いらっしゃい」

「すいません。今日はブラックコーヒーでお願いします」

「かしこまりました」



〝コト〟



店長はまた、霧河に話しかける。

「久しぶり!お!今日はコーヒーかい?」

「はい」

「コーヒーも好きなんだね」

「まぁ」

「この前はコーンスープだったけど、今日は

コーヒー。大人らしい飲み物も飲むんだな」

「はい」



〝ジュー〟



そこで店長も、霧河にクリスマスの話をした。

「そういや、もうすぐまたクリスマスがやって来るね。お客さん、何が欲しいんだい?」

「え?クリスマスって、大人がプレゼントを

もらうモノじゃないでしょ?」

「そうだけどさ、何か欲しいとは思わない?」

「ん~・・・大人になってからは、考えた事がないですね」

「そうか。で、子供の頃は、サンタクロースを信じてたかい?」



店長のおじさんもそんな事を聞いてきた。



「はい。信じてましたよ」

「そうか。俺も昔は信じてた」

「え?店長さんも?」

「ああ。でも、いつから信じなくなったっけな~。でも、サンタクロースって魔法使いなのに、何で子供の頃はあんなに素直に信じちゃうんだろうな。不思議だな」

「そうですね。なぜか信じちゃいますよね」

「うん(笑)。でも、子供の頃を思い出すと、何か懐かしくなるな」

「はい」

「そういえば、サンタクロースの好物って何だろう?」

「え?」



そういえば、霧河は、そんな事を考えた事は

なかった。



「サンタクロースもオッサンだから、やっぱ

酒とか煙草とか?クリスマスは、深夜に活動するから、ブラックコーヒーも飲むのかな?

まぁ、本当はいねぇから、考えても仕方ねぇけど(笑)」

「そうですね(笑)」

「ブラックコーヒーか。そういえば、昔は俺も、飲めなかったな~。それが大人になると

こうやって好きになるから、人の味覚の変化って不思議だな」と霧河は思った。そして、

霧河は、コーヒーを飲み干し、

喫茶店を出て行った。



〝カランコロン〟



「ありがとうございました」



帰った後、霧河は店長との会話を思い出した。



「久しぶりにあの店長さんと交わした会話、

楽しかったな~。しかし、なかなか普通なら

考えない事を考えてるんだな。面白い」

そして、布団に入った。

(サンタクロースの好物・・・か~。そういや、絵本とかにも、そんな事は書いてなかったな。サンタクロースは、色んな子供達に

色んなモノをあげてるけど、サンタクロース自身は何が好きなんだろ?もし、店長さんの言う通り、酒や煙草が好きなら俺と真逆だな)そうして、霧河は眠りについた。

11.クリスマスが近づいてくる!!!

そして、4日経ち、今日もまた出勤する。今日は、2010年12月10日(金)。今日も会社で、クリスマスの話をたくさん聞いた。もう、社内の風景も、クリスマス風の飾りつけがなされ、オシャレになっている。



時間が経ち、18時30分。



「あぁ~!今日も仕事が終わった~!!」

霧河は伸びをしてそう言った。



「クリスマスが少しずつ近づいてきてるな」

しみじみ思った。



クリスマスは霧河にとって、

1年の中で1番好きなイベントだ。だから、

今年も、とてもワクワクしているのだ。



「ジングルベ~ルジングルベ~ル、鈴が鳴る~!!♪」

無意識のうちにそんな歌まで口ずさんでいた。



そして、帰る前はまた、あちこちで盗み聞きによるプレゼントの調査。今夜もまた、

あちこちから「今欲しいのは〇〇」という、

クリスマスを待っている子供達の、楽しそうな声が聞こえてくる。「俺も楽しみだな!♪」

と霧河は言った。


12.ついに、また、サンタクロースになる!!!

それで、たまにある平日の

仕事の休みの日には、数週間前のように、

学校のそばなどでも子供達のほしがっているモノを聞いたりした。



で、時間のある時に、

調査して、メモ帳に書いた、子供達の欲しがっているモノを少しずつ買い、そんな事を

繰り返し、時間は流れて、クリスマス・イヴが来た。



2010年12月24日(金)。



もちろん、会社でも、

「今日は子供に〇〇をあげるの」や

「家族と一緒にクリスマスケーキを食べたり

フライドチキンを食べたりしてクリスマスパーティをするんだ」などという声がたくさん

聞こえてきて、霧河は、

(良いな~!良いな~!賑わってるな~!

クリスマス最高!!♪)と思った。



そして、霧河は家に帰り、サンタクロースの衣装を着て、子供達が欲しがっているモノを袋に詰めて、ちょうど日付が12月25日(土)

(クリスマス)に変わった時、出かけた。



本来、サンタクロースというのは、赤い服を着て空飛ぶソリに乗って、それをトナカイに引っ張ってもらって移動するものだが、

彼は、全く違う。



地に足を踏みつけて移動する。自転車に乗って移動し、金属の棒を使ってサムターン回しなどの

ピッキングで扉を開ける事によって入り、

色んな家にプレゼントを届けている。



夜空の下や真っ暗な家の中でも目立たなくするため、黒い服を着て、黒い帽子を被り、

黒い手袋をつけている。



移動手段に自転車を使っているのは、

大きな音を立てないようにして、警察や周りの人達に出来るだけ

バレにくくするためで、手袋は、ドアや色んなモノに

指紋を付けないため。もちろん、自転車も真っ黒、

手袋も真っ黒。



子供達に渡すプレゼントももちろん、全て手袋をしている状態でしか触れた事がないので、

指紋は一切付けていない。

13.女の子が起きてしまった!!!

霧河は、家を出て、まず最初に、「犬の人形が欲しい」と

言っていた女の子の家へ向かった。



そして、金属の棒を使ってカギを回し、ドアを開けた。



〝ガチャ〟



念のため、霧河が他人の家に入っているその間にも、泥棒などが

入ってこないようにするため、いつも、入ったらすぐ、内側から

手袋をつけた手でドアのカギをかけている。



〝ガチャ〟



「なるほど。こういう家か~」と思いながら霧河は、出来るだけ

足音を立てないように気をつけながら、

ペンライトを使って歩きながら、女の子の部屋を探し、

その部屋に入った。



〝キー〟



そこには女の子が寝ていた。女の子らしく、

可愛いモノやオシャレなモノでいっぱいだった。

「へ~。女の子らしい部屋だな~!」と霧河は思った。そして、

枕元に犬の人形をそっと置く。

そうすると次の瞬間、女の子はたまたま目を覚ました。



目をこすり、

「トイレ~・・・」と言った。



霧河は慌て、

「あっ!マズい!!」と壁に頭をぶつけた。

女の子が

「え?誰かいるの!?」と言って、電気を点けた。すると、霧河の姿が見えた。

女の子は「キャ~!!!」と叫んだ。

COLK
サンタクロースパイ
0
  • 0円
  • ダウンロード

10 / 64

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント