話は変わりますが、自転車について書きます。私には愛用していたピンクの自転車がありました。苦楽を共にした大事な自転車でした。しかし、母はその大切な自転車を簡単に人にあげてしまいました。
新しい自転車を最近必要になり買ったのですが、それは青い色をしています。あえてピンクはやめました。私は、その自転車にあのピンクの自転車の魂や、私の込めた思いがつながっていればいいのにと思わずにいられないのです。
ピアノを弾くということは、これに少し似ています。いくら家のピアノを愛していても、ピアニストは、コンサート会場のピアノを愛し直さねばなりません。自分がピアノに込めた思いを、引き継がないといけません。そうしないと本番でいい演奏ができません。
つまり、ピアニストは、ピアノという物体ではなく、概念を愛する必要があるのです。
だから、私はピアノが、バイオリンより奥深いと思うのかもしれません。
以前、母の生徒さんのNさんが、バイオリンでドイツに留学しました。私はとてもその人にあこがれていました。しかし、その人は夢破れて帰国し、日本で華々しい結婚式をあげることで全てをごまかしてしまいました。まるで発表会のように披露宴で自分の腕前を披露した彼女は、見ていて全くしらけるものでした。
楽器への愛を、汚してほしくない。結婚式などで。結婚は、自分の手柄自慢ではないでしょう。バイオリンが泣いてますよ。