ピアノを弾くということは、これに少し似ています。いくら家のピアノを愛していても、ピアニストは、コンサート会場のピアノを愛し直さねばなりません。自分がピアノに込めた思いを、引き継がないといけません。そうしないと本番でいい演奏ができません。
つまり、ピアニストは、ピアノという物体ではなく、概念を愛する必要があるのです。
だから、私はピアノが、バイオリンより奥深いと思うのかもしれません。
以前、母の生徒さんのNさんが、バイオリンでドイツに留学しました。私はとてもその人にあこがれていました。しかし、その人は夢破れて帰国し、日本で華々しい結婚式をあげることで全てをごまかしてしまいました。まるで発表会のように披露宴で自分の腕前を披露した彼女は、見ていて全くしらけるものでした。
楽器への愛を、汚してほしくない。結婚式などで。結婚は、自分の手柄自慢ではないでしょう。バイオリンが泣いてますよ。