ピアノとバイオリン

道具

楽器と道具は、また違うと思うのです。楽器には、魂があります。確実にあります。弾き手が思いを持てば持つほど、楽器は答えてくれます。

 

私が最も選んだ道は、「書くこと」でしたが、私はペンには執着や愛を感じません。書くという「行為」に愛を感じます。ペンをいくら愛してもいいものは書けません。しかし、楽器は違うのです。

「愛すれば、いい音を出す」のです。それは、魔法なのです。

 

自転車

話は変わりますが、自転車について書きます。私には愛用していたピンクの自転車がありました。苦楽を共にした大事な自転車でした。しかし、母はその大切な自転車を簡単に人にあげてしまいました。

新しい自転車を最近必要になり買ったのですが、それは青い色をしています。あえてピンクはやめました。私は、その自転車にあのピンクの自転車の魂や、私の込めた思いがつながっていればいいのにと思わずにいられないのです。

ピアノ

ピアノを弾くということは、これに少し似ています。いくら家のピアノを愛していても、ピアニストは、コンサート会場のピアノを愛し直さねばなりません。自分がピアノに込めた思いを、引き継がないといけません。そうしないと本番でいい演奏ができません。

つまり、ピアニストは、ピアノという物体ではなく、概念を愛する必要があるのです。

だから、私はピアノが、バイオリンより奥深いと思うのかもしれません。

 

以前、母の生徒さんのNさんが、バイオリンでドイツに留学しました。私はとてもその人にあこがれていました。しかし、その人は夢破れて帰国し、日本で華々しい結婚式をあげることで全てをごまかしてしまいました。まるで発表会のように披露宴で自分の腕前を披露した彼女は、見ていて全くしらけるものでした。

 

楽器への愛を、汚してほしくない。結婚式などで。結婚は、自分の手柄自慢ではないでしょう。バイオリンが泣いてますよ。

ペンの替え芯

私は書くことが大好きです。ためしに、ペンを愛してみようと、替え芯を買ってみましたが、替え芯を買うという面倒くささに負けてしまいました。結局、安いペンを気軽に買うほうがいいようです。

 

物への愛は、本当は概念を愛さねばならないのです。どんな楽器を持つ人も、自分の楽器だけに執着するべきではありません。美しい思いをいつもいつも、使うものに込めていれば、それを失っても、次のものに引き継がれるのです。

 

風邪を切って青い自転車をこぎながら、また、昔、実家で弾いたなつかしいピアノを思いながら、今の家のピアノを弾きながら、いろんなものを大事に生きて行く素晴らしさをかみしめています。

karinomaki
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