エロゴルフ(1)

岡崎は、松山のゴルフに対する考え方を参考にしたく、吉岡のせこいゴルフをからかうことにした。「聞いてください、こいつのゴルフは、石橋を叩くというか、刻みのよっちゃん、と呼ばれているんです。なんせ、ロングのセカンドで、グリーンまで約250ヤードもあるのに、7番ウッドでフェアウエーに必ず打つんです。肝っ玉が小さいというか、まったく、チャレンジ精神と言うものがないんですよ。松山さん、何とか言ってあげてください」松山は、クスクスと小さな笑い声を漏らし、笑顔を作った。「いや、ま~~、誰しもコース攻略があります。吉岡さんには、それなりの計算があって、クラブを選択されているんじゃ、ないですか。でも、冒険も、スリルがあって、いいものですよ」

 

人前でバカにされ、かなりムカついた吉岡は、岡崎を睨み付けた。吉岡は、神経質でミスするとかなり落ち込むタイプであるため、バクチのようなショットを嫌っていた。松山にコース攻略と理解してもらい、少し機嫌がよくなった。「さすが、会長は、トップアマでいらっしゃる。自分の技術の未熟さを理解してのクラブ選択なのです。こいつは、ディボットでも、スプーンで打つんですよ。正気の沙汰じゃありませんよ」松山は、二人の会話に吹き出しそうになった。仲がいいのか悪いのか、ここまで言い合えるのは、親友だからだと思った。

 

「まあ、そう、お互いの欠点を指摘しても、スコアはよくなりませんよ。吉岡さんのようにミスを減らすことも大切だし、岡崎さんのようにツーオン狙いで、チャレンジするのも大切です。とにかく、ゴルフは、コースを彼女と思って、あの手この手で攻略しながら、楽しくやればいいんじゃないですか。植木も、ショートウッドを使って、ようやく、90が切れるようになり、ゴルフが面白くなってきたみたいですよ」松山はシングルだから、技術的なことを指摘するとてっきり岡崎は思っていた。ところが、まったく意に反して、コース攻略の観点から上手に教授したことに感銘してしまった。

 

「さすが、トップアマの松山さん。凡人とは、わけが違う。ゴルフ哲学をお持ちなんですね。我々なんか、ゴルファーのうちに入ってませんな」岡崎が、マジな顔つきで返事すると、隣のピンクヘアのホステスが岡崎をイジルかのように松山に話しかけた。「会長さん、真面目そうな顔をしているけど、オカちゃんって、エロエロなんだから。チョ~さわり魔。ネ~、オカちゃん」岡崎は、突然エロの実態を暴かれ顔を真っ赤にした。「おい、まあ~、エロには間違いないが、触られて喜んでいるくせに」ピンクヘアのホステスは「モ~~」とよがり声をあげて、唇を突き出し岡崎の頬にキスをした。

岡崎は、少し前かがみになり、左手の小指を立てて松山に話しかけた。「松山さん、こっちの方だったら、ママにお願いすれば、何とでもなりますけん。ママは、中洲では、ちょっとした顔なんです。AV監督とも懇意にしとりますけん」あきれた吉岡は、即座に岡崎の性癖をぶちまけた。「会長、岡崎の言うことを真に受けてはいけません。なんせ、飲み、打つ、買う、三拍子そろった遊び人なんです。しかも、いまだ独身です。どうしようもない奴です」本性をぶちまけられた岡崎は、「そこまで言うか」とつぶやき、目を丸くし、口をとがらせた。

 

ピンクヘアのホステスが岡崎の頭をポンと叩いた。「まったく、エロイんだから。ママに言いつけるわよ。最近、御無沙汰だったけど、浮気してたんじゃないの。も~~、くやし~~」ピンクヘアのホステスは、岡崎の股間をギュッと握りしめ催促した。岡崎は、目を丸くするとニコッと笑って、ホステスの股間の奥に手を突っ込み、しばらく、指を動かしていた。ピンクヘアのホステスは、岡崎にぞっこん見たいで、抱き着くと目を閉じてよがり始めた。

 

松山は、AVと聞いて、目を輝かせた。白々しい演技をするピンクヘアのホステスを見ていると、なんとなく、撮影現場で演技しているAV嬢に思えてきた。目を凝らして店内を見渡すと顔の判別がつかないほど、入った当初よりさらに薄暗くなっているように感じられた。頭を傾けて体を預けているスリムなホステスに声をかけた。「ちょっと、照明を落としているみたいだね。君の顔もよく見えないよ」彼女は、唇を松山の耳たぶにこすりつけてささやいた。「これは、おさわりタイムの合図なの」

 

店内はかなり薄暗くてホステスの姿がよく見えなかったが、改めて目を凝らして店内を見渡すと席を立って歩いているホステスは、みんな超ミニスカであることに気づいた。腰かけたホステスのスカートは、テーブルで隠れて見えなかったが、左隣のテーブルのホステスたちは、お客に抱きついてか細いよがり声を響かせていた。その時、スリムなホステスがふいに耳打ちした。「女性のことだったら、私に言って、ママにお願いしてあげるから。それと、今がチャンス」と言って松山の左手を握り占めると股間の奥に押し込んだ。

 

付き合いゴルフ

 

伊達は、ゴルフをやったことがない沢富を強引に引き連れて西区にあるアコーディアゴルフ練習場に来ていた。先日、伊達はF大学からの親友、岡崎にゴルフを誘われていた。岡崎は親友だから、断ったからと言って不仲になるようなことはなかったが、断れない理由があった。と言うのは、伊達の細君、ナオコの父親と岡崎の父親は、不動産売買で裏取引をやっていた。ナオコの父親からプレゼントしてもらったマンションは、岡崎の父親の計らいで、帳簿価額以下で購入したものだった。そのこともあり、ナオコの父親の顔を立てるためにも、岡崎の機嫌を損ねるわけにはいかなかった。

 

カウンターで1F30番と31番を取った伊達は、嫌がる沢富の背中を押しながら練習場内に入って行った。伊達は、キャディーバッグを30番に置くと沢富にピッチングを手渡した。「おい、そ~、イヤな顔をするな。食わず嫌いは、よくないぞ。とにかく、やってみろ。やっているうちに、面白くなるのが、ゴルフってもんだ。俺だって、恥をかきながら、やってるんだ。とにかく、打ってみろ」沢富は、左手に手袋をするとピッチングを右手に取り座席に立った。一度、目の前のミニスカ少女の張りのあるお尻をチラッと見て、大きなテークバックから思いっきり振り下ろした。ビューと音はしたが、ボールはそのままだった。も一度振るとヘッドの先にあたり、右方向にコロコロと転がった。

 

沢富の目の前では、ミニスカ少女が大きなお尻を突き出し、ゆっくりとテークバックしながら肩を目いっぱいひねっていた。ダウンスイングに入り一気に振り下ろすとバシッと音をたてたボールは、まっすぐ200ヤードほど飛んで行った。愕然とした沢富は、ミニスカ少女にバカにされるようで即座に打つのをやめた。「先輩、当たりませんよ。もう、いいです。先輩、練習してください」伊達は、クスクスと笑いながら、返事した。「最初から、当たりっこないさ。俺なんか、何度、空振りしたことか。まあ、俺の打つのを見てろ」伊達は、ドライバーを手に取ると、大きなスタンスで、テークバックした。一気にダウンスイングに入ると「カ~~ン」と快音を響かせたボールは、大きくカーブを描いて右方向に飛んで行った。当たりはよかったが、強烈なスライスだった。

 

「またか」とつぶやき、伊達は、がっかりした表情を作り、沢富に話かけた。「まあ、ゴルフとは、こんなもんだ」沢富は、あんなに曲がっては、ラウンドしてもゴルフにならないのではないかと同情心が起きた。「先輩、ゴルフってものは、誰が考えたんでしょうね。こんなに小さなボールを小さなヘッドでまっすぐ打つなんて、そもそも、凡人には、出来っこありませんよ。プロは、モンスターですよ。野球もろくにできない僕なんかがやるスポーツじゃありません。先輩も諦めたらどうです?」伊達は、ドスンと椅子に腰を落としがっかりした表情を見せた。「まったく、どうして、まっすぐ飛ばね~んだ。くそ~~。そういっても、付き合いってもんがあるし。断るわけには、いかないんだよな~~」

ゴルフをやりたくないという本心を知った沢富は、伊達が気の毒になってしまった。「先輩、プロだって、最初は当たらなかったはずです。とにかくやっていれば、当たるようになるかもしれません。よし、かっ飛ばしてやる」沢富は、ミニスカ少女がキャディーバッグを担いで帰りかけたのをチラッと見て、ホッとした表情でもう一度座席に立った。何度か、ピッチングを振ったが、やはりまともにあたらなかった。「やっぱ、ダメです。僕には、スポーツの才能がないんです」

 

 伊達は、じっと沢富のスイングを見ていた。「まあ、そう嘆くな。パターは、誰だってできる。とにかく、グリーンまでボールを転がせば、なんとかなる。おい、9番ウッドで打ってみろ。これなら、きっと当たる。まず、見本を見せるから、よ~~く、見てろ」伊達は、9番ウッドを手に取り、座席に立った。少し短く持ち、コックをせずに、ヒョイと持ち上げハーフスイングした。ピシッと音がすると100ヤードほどまっすぐ飛んだ。目を丸くした沢富は、「ウォー」と言って拍手した。

 

 「先輩、まっすぐ飛んだじゃないですか。僕もやってみます」沢富は、9番ウッドを手渡されると伊達をまねしてハーフスイングした。ピシッと音がすると100ヤード以上飛んだ。「オ~~。見ました?先輩。まっすぐ飛びましたよ。僕って、天才かも?」伊達は、ゴルフでよくある能天気な発言に苦笑いした。「まあ、その調子だ。とにかく、前に進めばいいんだ。サワが、一緒に来てくれれば、気が楽だ」

 

 気をよくして腰かけた沢富は、スライスが治らず、気落ちして座席でうなだれている伊達に話しかけた。「先輩、ロシア皇帝KGBカンパニーのうわさ、聞いてますか?なんでも、中洲にカジノを作るらしいです。東京かと思っていたのに、よりによって、中洲とは。しかも、風俗産業にも手を広げるらしいです。中洲のソープ嬢は、どうなるんですかね」伊達は、ついに日本も攻撃の対象になってしまったと暗い顔になった。「もう、日本は、おしまいだ。ほとんどの基幹企業は、欧米の多国籍企業に買収され、日本の従業員は奴隷扱いだ。俺たち警察官も、いつリストラされるか分かったものじゃない。イヤダ、イヤダ」

春日信彦
作家:春日信彦
エロゴルフ(1)
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