エロゴルフ(1)

沢富も日本政府の崩壊を直感していた。「先輩、それと、ここだけの話ですが、絶対に極秘ですよ。近々、大掛かりな警察組織の再編成が行われるそうです。国防機動隊と言う軍の組織のようなものができて、そこにかなりの警察官が配置換えされるそうです。さらに、女性警察官を大量に採用するみたいです。どういうつもりですかね。どうも、CIAの構想らしいですよ」肩を落とした伊達は、悲壮な顔でつぶやいた。「ついに警察官まで兵隊にされるのか。軍国主義日本だな」

 

沢富は、日本の文化を守るためにも護憲運動をすべきだと考えていた。「先輩、今こそ、警察官が護憲運動をすべき時なのです。平和憲法を守りましょう。軍国主義を許してはいけません。クビになるのを恐れていては、奴隷と同じです。闘いましょう、真の独立を目指して、闘いましょう。日本丸を沈没させてはダメです。日本丸を救う救世主がきっと現れます。諦めては、いけません」伊達は、目じりを下げていたが、ふと、岡崎の言っていたことを思い出した。「岡崎が言っていたぞ、日本のことを真剣に考えているハゲのトップアマが糸島にいるって。そうさ、救世主は、きっと現れる。よっしゃ~~、クビが怖くて、日本が救えるか!」と気合を入れた伊達は、目を輝かせ座席に立った。

 

 使ったことがない筋肉を強引に使ったため、脚腰に痛みが走り始めていた。沢富は、悲鳴を上げた。「あ~~、痛い。もう、いいです」伊達も上達しない自分に嫌気がさしていた。伊達は絶望感が漂う声で話しかけた。「もう、この辺にしとこう。俺も、疲れた。クラブは、俺のクラブを貸すから、頼むな。ティーショットに4番ウッド、セカンドは9番ウッド、寄せにウェッジ52、それとパターがあれば、ラウンドできる」沢富は、恥をかくために行くようなものだから行きたくはなかったが、伊達が気の毒に思えてついて行くことにした。眼下に広がる西区の住宅街を眺めながら待っていたブルーのハスラーは、能天気な二人を乗せると、ブルルンル~~ンと笑い声をあげて、バイパス202を東に向かって走って行った。

 

春日信彦
作家:春日信彦
エロゴルフ(1)
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