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完結

悟り ヴィマラキールティスートラにみる驚異の宇宙論

蕨谷哲雄
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 維摩経が成立したのは紀元100年前後と言われ、新約聖書の成立期とほぼ同期です。作者は不詳ですが、主人公のヴィマラキールティは実在の人物だった可能性があります。

 仏典としては内容が平易で素人にも理解しやすく、昔から様々な翻訳がされていました。最近になって原本に近い経典が発見され仏教研究者の間では大いに話題になりました。

 私がこの経典を読んで気づいたのは、ここで語られている宇宙観が現在知られている宇宙の実態と酷似している点です。

 大乗仏典なので「天」が登場しますが、それを惑星と解釈すると、「世界」も銀河いうことになり、三千世界(千の三乗という意味)は超銀河団を内包した現在知られている宇宙像と矛盾しなくなります。

 「空」の解釈も,物理学上知られている「真空」の概念と酷似しています。

 二千年前の仏典作者に高度な科学的知識があったとは思えませんが、どのようなイメージをしたらこのような世界観を持つに至ったのか興味深いところです。

 禅では「悟りを開く」という概念を根本教義としていますが、原本は維摩経にあるようです。

「悟りを開く」とは「空の概念を理解する」ことにほかなく、一般には、「それを体得することは難しい」とされていますが、この経典は「空」の概念を伝えることを目的とし、内容も平易なので、大乗仏教に興味のある方にとっては導入本としても役立つでしょう。

 なお、この作品は仏典臭さを排除するためにSF小説仕立てになっていますが、基本的プロットは原作に従っています。
 

目次 - 全17P

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