サンタの伝言

亜紀は、イラッとした顔で返事した。「サンタさんが、約束を破ることは、決してありません」少し怒ったような顔をした亜紀に伊達刑事は、顔をキョロキョロさせた。すかさず、マイケルは、大人の意見を言わせようと、伊達刑事に質問した。「刑事さんも、サンタは、約束を守ると思われますか?」伊達刑事は、何と答えて言いか困惑した。まさか、だいの大人がサンタを信じているとは言えず、かといって、信じていないともいえず、顔が真っ赤になった。

 

腹をくくっていた伊達刑事は、破れかぶれで、怒鳴るような大きな声で、返事した。「はい、亜紀ちゃんが言うんだから、間違いありません」亜紀は、笑顔を作り、左横の伊達刑事を見上げた。スタジオ内が、ド~~とどよめいた。テレビを見ている世界中の人たちも、感嘆の声を上げた。世界中の人々は、刑事を馬鹿にするどころか、尊敬の眼差しで見つめた。もはや、伊達刑事は、世界的ヒーローになってしまった。

 

午前零時は、すぐそこに迫ってきた。マイケルは、カウントを始めた。9・8・7・6・5・4・3・2・1テレビの画面にホワイトハウスがクローズアップされた。10,000羽以上の黒いカラスたちは、いっせいに羽ばたき始めた。そのときだった、黒いはずのカラスは、赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、紫、の光輝く色のカラスとなり、夜空に舞い上がった。そのとき、光り輝く真っ白い小雪が夜空にきらめき、サンタの歌声が世界中に響き渡った。

真っ赤なお鼻の トナカイさんは いつもみんなの わらいもの 

でもその年の クリスマスの日 サンタのおじさんは いいました 

暗い夜道は ぴかぴかの お前の鼻が 役に立つのさ 

いつも泣いてた トナカイさんは 今宵こそはと よろこびました

 

世界中に散らばるテロの傭兵たちは、奇跡に驚き、手に持っていた武器を落としてしまった。たった一人でバカを演じた伊達刑事は、亜紀ちゃんをおんぶして夜空を眺めていた。子供がいない彼は、そっと心の底でつぶやいた。亜紀ちゃんが、自分の子供だったらな~。彼は、亜紀に声をかけた。「亜紀ちゃん、ありがとう」亜紀は、あったかい背中で夢を見ていた。亜紀にとって、生まれてはじめてのおんぶだった。

春日信彦
作家:春日信彦
サンタの伝言
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