γ(ガンマ)‐オリザノールと生活習慣病予防
糖尿病や肥満症といった生活習慣病を改善したり、発症するリスクを下げたりするために、単にカロリーを減らしたり、1つの栄養素を過剰に摂取したり制限したりすることは、逆に栄養バランスを崩してしまうことも考えられるため、得策だとは言えません。
生活習慣病を改善するには、余分なカロリーや糖質・脂質を減らし、それと共に、現代人に不足しがちなビタミンやミネラル、食物繊維などをうまく補って栄養バランスをうまく整えてあげる必要があるように思います。
玄米にはビタミンやミネラル、食物繊維といった不足しがちな栄養素が豊富に含まれているため、栄養バランスを整えるのに最適だと思われますが、それらの栄養素以外にも、玄米に含まれる有効成分γ(ガンマ)‐オリザノールが生活習慣病の改善に役立ってくれそうです。
益崎裕章氏ら研究チームは、マウスや細胞を用いた基礎研究により、玄米に含まれる成分の、特にγ(ガンマ)‐オリザノールが、高脂肪食に対する嗜好性を軽減させ、抗肥満、抗糖尿病効果を発揮することに深く関与していることを明らかにしたそうです。
益崎氏によると、マウスも人間も高脂肪食に高い依存性を示すことが知られているそうで、さらにその依存性の強さはタバコやアルコール、麻薬類などよりも上回ることが分かってきているそうです。
また、高脂肪食の嗜好性については、脳の視床下部における小胞体ストレスの上昇が深く関与しており、高脂肪食の摂取によって小胞体ストレスが亢進すると、より高脂肪食への依存が強化されてしまうと言います。
しかし益崎氏は玄米に含まれる有効成分のγ(ガンマ)‐オリザノールが、視床下部における小胞体ストレスを軽減する「分子シャペロン」として機能して、高脂肪依存食の悪循環を断ち切る作用があることを見出したとしています。
それ以外にもγ(ガンマ)‐オリザノールには、視床下部におけるカテコールアミン代謝に作用して、自律神経機能を調節することに関わっていることが知られ
ており、そのため自律神経失調症や更年期障害、過敏性腸症候群や脂質異常症などに対して、臨床応用されていきたと益崎氏は述べています。
高脂肪食をいくら食べても脳の報酬系がなかなか満足せず、それどころか高脂肪食への嗜好がど
んどん強くなっていくことは、肥満や糖尿病への発症リスクを非常に高めてしまうように思いますが、そういった依存性を抑制するとされる玄米のγ(ガンマ)‐オリザノールの効果・効能については、これからますます期待が高まります。
参考文献 渡邊昌監
修 『玄米のエビデンス』 キラジェンヌ