1)節約が良くない理由
本書のタイトルは「STOP節約」なわけですが、節約がマイナスに働くものとしては、以下のものが挙げられます。
①節約のために多大なエネルギーや時間を使う
②小銭をケチって大金を失うことが往々にしておきる
③節約によりストレスを溜めてしまう
④周りの人間を不愉快にすることがある
⑤生活が惨めに感じる
⑥その生活レベルから抜け出せなくなる
より、分かりやすくするために、悪い節約を具体的な事例で説明したいと思います。
A子さんは専業主婦で、旦那さんと一緒に暮らしています。
その日は、奥さん同士の昼食会がビュッフェ形式のレストランで行われることから、A子さんはお腹を空かせるために朝食を抜こうと考えていたため、旦那さんの朝食もパンだけという質素なものでした。
それなのに、旦那さんがトイレットペーパーを使い過ぎということを注意してしまったため、朝から夫婦喧嘩になりました。
険悪な雰囲気のまま旦那さんは会社に出勤し、A子さんも嫌な気持ちのまま洗濯を済まようとします。
ところが、洗剤をケチって少量にしたことから洋服の汚れが取れず、結局もう一度洗い直すことになってしまいました。
昼になり、他の奥さんたちとレストランに入り、1,500円のビュッフェをオーダー、元を取らなければと思ったA子さんは、ひたすら食べ続けました。
途中お腹が一杯になり、少し気持ち悪くなったので、お口直しに紅茶を飲みたかったのですが、飲み物代は別で300円必要だったため、我慢しました。
結局、制限時間ギリギリまで食べ続けた結果、本当に具合が悪くなってしまいました。
友達にそんな姿は見せたくないと思い、トイレに行って休もうとしたところ携帯を床に落としてしまい、液晶ガラスが割れてしまいました。
レストランを出ても気分が悪かったため、仕方なくA子さんは近くのドラッグストアで1,200円の胃薬を買いました。
その後、携帯を修理に出そうと携帯ショップに寄ったところ、もったいないと思って入らなかった月額300円の携帯保証サービスに入っていなかったため、2万円の修理代がかかることがわかり、とりあえず当面は割れたままで使い続けることにしました。
夕方、スーパーに買い出しに行くことにしたのですが、家の近くのスーパーは野菜が安かったものの、隣駅のスーパーが冷凍品の半額セールをやっていたため、胃のもたれが残っていたものの、隣駅まで電車で移動しました。
スーパーで冷凍品を買って帰ろうとしたところ、そのスーパーの隣に100円ショップがあるのを発見し、結局そこで買う予定の無かった商品を10点購入します。
夜になり、旦那さんが残業で疲れきった顔で帰ってきます。
奥さんはお風呂を勧めましたが、お風呂の節約のために2日目のお湯だったため、旦那さんが気乗りせずに断ったところ、奥さんは既に追い焚きをしていたため、もったいないと言ってまた喧嘩が始まりました。
イライラしていた奥さんは、旦那さんがお風呂に入っている間、気晴らしに見ていたオークションサイトでお気に入りのブランドの靴が安く売り出されていたのを見つけ、「いつも節約して我慢してるんだから、たまにはいいわよね」と自分に言い聞かせて、その靴を購入しました。
後日、その靴が届いたら、足に合わずに、結局履くことはありませんでした。
さて、これを読んで、あなたは心当たるところはありませんでしたか?
節約というものは、このように得てして、マイナスの結果を招くことがあります。
特に、細かい数字ばかりに気が取られてしまい、無駄を省くはずが、逆にエネルギーや時間を無駄遣いしてしまうことに気づかないことがあります。
以前、私の会社で雇っていたアルバイトに、近くのコンビニでノート(500円相当)を買ってきてもらうようお願いしたところ、なかなか帰ってこずに結局1時間近く経って帰ってきたので、どうしたのかと確認したところ、「◯◯◯の文房具屋が半額で買えることが分かったので、そこまで行って来ました!」と250円分の節約ができたことを誇らしげに言っていたのですが、会社が彼にバイト料を1時間1,000円払っていることを全く失念してしまっているのです。
こういったことは、本末転倒と言わざるを得ません。
また、お金を使うべきところを我慢することで、無意識にストレスを溜めてしまっている、ということもあります。
その結果、普段我慢しているから、との理由付けをして、突発的な衝動買いをしてしまったり、そのストレスが元で人間関係が悪くなったり、病気になってしまっては意味が無いのです。
ただ、そんなことよりも、最も重要なことがあります。
それは「その生活レベルから抜け出せなくなる」ということです。
これはどういうことかについて説明します。
成功の法則と言われるものの中で最も有名なものに「引き寄せの法則」という有名な言葉があります。
これは「考えていることが自分に引き寄せられる」というもので、顕在的に考えていることはもちろん、むしろ「潜在意識に刻みつけれたことが現実になる」という世の中の普遍的な法則です。
節約というのは、お金が不足しているという事実を常に頭に置きながら、生活を切り詰めるということを、継続的に繰り返していく作業になります。
つまり、これを「引き寄せの法則」に照らし合わせてみると、潜在意識に「お金が無い」ということをまさに刻みつけることをしていることとなり、その結果、更にお金が無い状況を引き寄せる、ことにつながるのです。
言ってしまえば、成功の法則に反する、最も最悪なパターンということができます。
更に、節約をすることで、不愉快な思いや、惨めな感情が生じているとしたら、決して幸せになることはできません。
たまに、節約している人の中には、「別に我慢しているわけではない」とか、「節約の工夫を考えることが楽しい」という人もします。
しかしながら、本人が、いくら節約自体を楽しんでいたとしても、その節約というのが習慣となって、節約のイメージが頭と身体に染み付いてしまっていては、それを脱却する方法を見つけることは難しくなります。
これは、裕福な自分を想像しにくくなるためです。
成功するためには、お金持ちになった自分をイメージして、それを潜在意識に働きかけなくてはいけないのに、全く逆のことをしてしまっているのです。
2)節約するときのルール
私は、節約をすべて否定するつもりはありません。
ただ、節約する場合には、以下のルールを守っていただければと思います。
①日常生活と直接関係する出費は削らない。
②将来裕福に暮らしている楽しい自分を想像することを忘れない。
①は、具体的には以下のようなものがあります。
<水道光熱>
電気、ガス、水道
<日用雑貨>
トイレットペーパー、ティッシュ、マスク、サランラップ、輪ゴム、ゴミ袋、歯ブラシ、石鹸、シャンプー、ボディソープ、洗剤、スポンジ
例えば、エアコンをつけるのを躊躇して我慢した結果、風邪を引いたり、照明を暗くして視力が悪くなっては意味がありません。
よく照明を消している、という人がいますが、明るい中で生活している方が気持ちも明るくなります。
お風呂がもったいないからとシャワーだけにすれば、ゆとりあるひとときを過ごせませんし、身体の血流にもよくありません。
トイレットペーパーを短くすることで、まだ汚物が残ってるかも知れない、と少しでも心配するのは精神的に良くありません。
ボサボサになっている歯磨きで歯の磨き残りがあれば、口臭や虫歯につながります。
料理を美味しくいただくには、サランラップやアルミホイルをケチってはいけませんし、薄い洗剤や古びたスポンジで洗った食器はピカピカにはなりません。
気持ち良く快適な生活を送るため、そして将来お金持ちになりたいのであれば、このような出費は削ってはいけないのです。
②は、節約三昧の生活を送っていたとしても、決してそこに時間を割いたり、執着してはならないということを示唆しています。
常に、将来の豊かな生活をしている状況をイメージすることで、節約とは無縁の生活を送っているのだと潜在意識に告げる必要があるのです。
節約というのはマイナスの力なので、それをプラスにするためには、現実よりも強く理想像を想像することです。
あなたが、一生懸命、神経を擦り減らして節約したとして、どれぐらいの金額が節約できるでしょうか?
1)水道光熱費
電気、ガス、水道については、個人差がありますが、家族3人の家庭の水道光熱費の1ヶ月の平均額は23,000円だそうです。
うち、電気代が11,000円ほどを占めていて、ガスと水道がそれぞれ6,000円ほど。
これら水道光熱費について、頑張って節約している家庭で節約額は1ヶ月で5千円ぐらい、究極に切り詰めたとしても1万円が限界ではないかと思います。
2)日用雑貨
日用雑貨はもっと高が知れています。
既述した日常生活に密接に関係するものに限った場合には、そもそもの金額が安いものが多いので、1ヶ月の節約額は千円から2千円ぐらいです。
3)その他
節約を考えるとき、実は最も有効なのは、月額で固定でかかっているものです。
その最たるものが、「住宅ローン」と「保険」の2つです。
これらは、通常自動で引落しになっていることもあり、仕方がない、と思ってはいませんか?
それらに、「マイカー」を加えた3つについて、これから説明していきます。
①住宅ローン
借金が嫌いという人であっても、何故か当然のように組んでいる住宅ローンですが、実は金利というのは最ももったいない費用です。
場合によっては、返済総額が倍ぐらいになってしまうこともあるのです。
特に、最近は金利が下がっているので、「借り換え」という手を使うことで、新しい安い金利で借り直しをすることができます。
なんとなく、面倒くさい、とか、審査のし直しが不安という、先入観が先に立ってしまいがちですが、よほどのことが無い限り、借り換えは可能です。
もし、金利を1%安くすることができれば、それだけで毎月の返済額を2~3万円安くすることが可能です。
②保険
生命保険、火災保険、地震保険、家財保険、学資保険などの各種保険。
収入にもよりますが、日本の一世帯あたりの平均保険料は、月額で約3.5万円だそうです。
節約をする方は、比較的心配性の方が多いので、意外に余計な保険をかけているという人が少なくありません。
以下のプロセスで検討し直してみることをお勧めします。
<不要な保険契約の解除>
まずは、今契約している保険が本当に必要なものか? を見直してみてください。そしてどうしても必要というもの以外は解約を検討しましょう。
長く契約しているからもったいない、という人もいるかも知れませんが、今は以前ほど長期契約のメリットはありません。
<保険会社の変更>
最近は、外資系保険会社やネット系保険会社の参入で、保険業界は競争激化をしています。
かつての大手保険会社は、焦ってテレビ広告などを出していますが、実質的には何の差別化もできていないので、イメージ広告ぐらいしか出すことができません。
保険会社を変更することで、ほとんど同条件の保険で、大幅に保険額を減らすことができます。
<保険プランの変更>
今の保険プランが、過剰もしくは、今の実態に合っていない、ということも少なくありません。
一度、現在契約しているプランを必要十分な視点で見直しをしてみましょう。
最近では、クレジットカードである程度の保険がカバーできる部分もあります。
特に、貯蓄型保険は、なおさら保険会社に手数料を払ってまで貯蓄する必要はないのです。
保険は「安心を金で買う」といえば聞こえがいいですが、悪く言えば不安という弱みに付け込んだ商売という側面もあるのです。
個人的には生命保険1つで十分ではないかと思います。
それよりも、「今」の生活を豊かにすることの方が大事ではないでしょうか?
③マイカー
日本人は、持ち家やマイカーにこだわる人が多いですが、あなたは実際に車をどれぐらい使っていますか?
車は、自動車税、保険料、ガソリン代など、維持費がかなりかかります。賃貸住宅に住んでいる場合には、これに駐車場代がかかっているはずです。
また、現金で購入していない限り、カーローンであったり、最近ではリース料というのが毎月かかっていることも少なくありません。
車に乗るのを止めれば、それだけで毎月数万円は節約できるのです。
車の無い生活を想像してみましょう。
そんなに不便でしょうか?
田舎で車が無いと生活できない場合は別として、都会であれば電車やバスで移動すれば大抵のところにはいけますし、レジャーにしても、そのときだけレンタカーを借りた方が、コスト的には圧倒的に安く済みます。
それで節約できる金額でできる生活の余裕や新しい楽しみを考えれば、一度見直してみることをお勧めします。
以上、節約できる金額について説明してきましたが、金額的インパクトや費用対効果を考えた時には、月額固定でかかっている費用を優先して節約すべきであり、水道光熱費や日用雑貨品は限定的であることが分かっていただけましたか?
ちなみに、節約ではありませんが、収支をプラスにするという観点では、不要なものを売る、という方法もあります。
最近は個人間売買のサービスやアプリがたくさん出てきています。
不要になったものは、こういったフリマアプリなどで、売買してみるのは1つの方法です。
値段にこだわらなければ、かなりの確率で売ることができます。
あなたが、自分たちのため、と思って神経を擦り減らして、頑張っている節約ですが、それを止めると、以下のような恩恵を受けることができます。
①人間関係が良くなる
節約に関する細かいことでの言い合いが無くなるので、家族間での揉め事が少なくなります。
また、外部の人たちとの対人関係においても、付き合いが良くなるため、結果的に人間関係が向上します。
②ストレスない生活が送れる
細かいことで節約をしている自分にストレスが溜まる場合もあれば、節約に協力してくれない家族に不満が溜まることもあります。
「電気はこまめに消して」「水は出しっぱなしにしないで」など、注意する側も気分が悪くなるはずです。
また、せっかく外食に行ったのに、喉が渇いたのに飲み物を我慢したり、1年ぶりにお寿司屋さんに行ったのに、値段が気になって安いネタばかりを頼んでいては、外食の楽しみどころから、逆にストレスを抱えてしまいます。
心が健全であれば、健康が維持できますし、気持ち的に余裕のある生活を送ることができます。
③余計な時間を使わなくて済む
安いお店をチラシやネットでチェックしたり、スーパーのハシゴするなど、節約には多くの時間を要しています。
その結果、生活に疲れてしまってしまっている人は少なくありません。
この時間をあなたの好きなことやより大事なことに使うことができます。
それによって、ハリのある生活を送ることができます。
④心を豊かにする
これが「節約をしない」ことによる最も大きなメリットです。
具体的な例でお話しすると、例えば、休日に家族で車で遠出をするとします。節約一家は高速を使わずに一般道路を走ったところ渋滞にはまってせっかくの休日が台無しになってしましたが、こういうときぐらいはと高速で向かった別の一家は楽しいレジャーを過ごすことができました。
「家族での余暇」というのはお金で買えるものではない、大切な想い出です。将来お金に余裕ができたときには、子供は親離れしてしまったり、あなたが同じ風景でも感じるものが変わったり、と実は同じ時は二度と戻ってこないのです。
同じようなことは外食でも言えます。
外食というのは、子供にとっては、非日常的な体験です。
家で食事をしたときのことは覚えていないでしょうが、外食をした記憶は大人になっても覚えていることがあるでしょう。
更に、記念日のプレゼント。
家族や大切な人への、誕生日などのプレゼントは、金額とは関係なく嬉しいものです。
逆に、私は、過去、友人の出産祝いのプレゼントをケチってしまったことがあるのですが、そのことを未だに後悔しています。
⑤結果的にお金が手元に残るようになる
いつも節約している、我慢しているという気持ちが潜在意識に残っていると、あるときに脳がどこかで「その見返り」を求めています。
それが、衝動買いだったり、アルコールに走ったり、間食や食べ過ぎになったり、という形に現れてしまい、結果として節約を超える出費をしてしまっているということが少なくありません。
⑥将来、お金が向こうからやってくるようになる
これについては、後述します。