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 長年の経験から刑事は、桂子が何か隠していると直感した。刑事は、管理人に桂子の様子を詳しくし聞くことにした。「桂子さんは、崎山さんと2時少し前に電話連絡を取っていた。2時を少し回ったころに寮にやってこられた。玄関に入ると、慌てふためいていたあなたに声をかけてきた。102号のドアをノックしても返事が無かったので、あなたが合鍵でドアを開けた。部屋の中に入ってみると二人の死体が転がっていた。そうですね」刑事は、管理人の話を簡単にまとめた。

 

 真っ赤になった管理人は、震えながら答えた。「ハイ、おっしゃるとおりです。何度ノックしても、返事が無かったもので、合鍵で開けました」刑事は、ちょっと首をかしげ、頭をほんの少しかきむしり、訊ねた。「返事が無かったら、いつも、合鍵で部屋を開けるんですか?」びっくりした、管理人は、即座に打ち消した。「いや、あの時は、田柴さんが、ちょっと体調が悪いのを知っていましたし、それに、出かけるときには、必ず、声をかけられるんです。具合が悪くなって、田柴さんが、倒れているのではないかと不安になって、開けました」管理人は、自分は潔白だといわんばかりに必死に説明した。

 

 刑事は、ほんの少し顔を和らげ質問した。「部屋に入った瞬間、何か、匂いませんでしたか?香水の匂いとか?」管理人は、目を上に向けて、あの時のことを思い浮かべた。「あ、そう、確かに、化粧のような、香水のような、匂いがしたような、しなかったような。はっきり憶えていません。すんません」管理人は、頭をペコペコ下げた。刑事は、部屋の中に入った瞬間、香水の匂いをかいだ。だが、この香水の匂いは、桂子のものと同じだった。すでに、桂子は、部屋に入っていたわけだから、香水の匂いがしても不思議ではなかった。

  靴跡のサイズは、崎山のサイズと同じだった。脚立の使い道は、不明だったが、他殺との関連は見出せなかった。刑事の疑問は残ったが、結局、自殺と判定された。3Dプリンタ拳銃による自殺のニュースは、大きな話題となった。しかも、自殺した二人の男性は、ゲイではなかったか?このような根も葉もないことを書く週刊誌まで現れた。さらに、第一発見者が、自殺した一人の元カノと言うことで、桂子も週刊誌で取り上げられ、一躍、桂子は世間に知られることになった。それがきっかけで、色っぽい桂子に、映画出演のオファーが舞い込んできた。桂子のビジョンは、実現した。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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