葬式で芽生えた恋

第2章( 11 / 14 )

妻に愛人の事が・・・。

あれから3日経ち妻と赤ちゃんが退院しました。

その日は、早めにアパートに帰ってきて家族4人で過ごしました。

妻が久しぶりに帰って来たアパートで「留守の間変わった事無かった」と言います。

私は、ドキッとして「ううん、何も変わった事は無かったよ」と周りを見渡します。

役所の手続きは2日前に済ませたので良しとして、後はお祝い返しです。

5千円、1万円と様々です。妻と私の兄弟姉妹だけで10万円以上になりお返しは何に

しようか迷いました。私が葬儀関係の仕事しているので冠婚葬祭の品は、なんとか

取り引き業者から原価で取れます。妻が「業種が役に立って良かったね」と言われ

少し得意げになります。

 

お返しはバスタオルの詰め合わせをお返しに決めました。

それだけじゃ寂しいのでドーナツも付けて命名の札に「高山 美希」と書いて貰います。

名前はいろいろ考えたけど結局は、真希の次だから美希だそうです。

それから、お返しの数を決める事にしました。ご祝儀はちゃんとバッグに入れてタンスの

奥にしまってありました。妻が祝儀袋の中身を抜いて金額を袋に書き込んでいます。

その中に直子さんがくれた出産祝いもありました。妻はそれを見て「福田さん?」と言い

首をかしげています。中を開けるとお金以外に1枚の紙が入っていて手紙のようです。

4つ折りにされた紙を妻が広げていると一瞬血の気がひきました。

 

「その、紙は?」と聞くと妻が「うん、中に入ってた」と言いながら目を通しています。

妻は「ふーん、この人は仕事のお客さん?」と聞くので私が「うん、そうだよ」と言うと

祝儀袋の中を見て「凄い、3万円も入ってる」と言い喜んでいます。

妻が、テーブルに置いた手紙を私が取って見るとこう書いてありました。

: 高山さん、この度はお子様のご出産おめでとうございます。

母の葬儀の際はいろいろお世話になり葬儀以外の事でもアドバイス等頂き

とても、感謝いたしております。

つきましては、高山さんに何かお礼をと思っていましたところ

近々、奥様がご出産されると伺っておりましたので、主人と相談しまして

その時に何か差し上げたらどうかと言われ

いろいろと出産祝いを考えましたが、他と重複すると高山さんに

ご迷惑になるかと、赤ちゃんの服やおむつ等購入される時の足しになればと思い

わずかではありますがお祝い金を包みます。 どうぞ、お受け取り下さいませ。:

私は、この手紙を見てホッとしました。

直子さんは、ほんとに凄い女性だと思いました。手紙まで添えてしかも妻が読む事も

想定した文章になっていて自分の愛人にはとても勿体ない女性だと思いました。

 

 

 

 

第2章( 12 / 14 )

妻と愛人のご対面

それから、3日後に会社の同僚や上司にはお祝い返しをして一人ずつ挨拶しました。

近い親戚は、日曜日に直接訪問して挨拶をします。

妻が、「福田さんのところも挨拶行かないとね」と言うと

「そこは、お返しだけ僕の方で持っていくから大丈夫」と言うと妻の顔色が変わります。

「何言ってるの、あれだけの大金をお祝いに頂いて、挨拶もなしでお返しだけでは・・・。」

とかなり怒っています。多分直子さんはご主人に黙ってやった事だと思うからまずいなと

「それじゃ、そこの奥さんに聞いてから行くようにしようか?」と言うと妻は頷きました。

そして、美希を抱いて「そうだよね、折角お祝いも頂いたし美希も見せてやらないとね」と

福田さんのお宅に行く気満々です。

 

翌日、私はお線香を持って事務員にこれちょっと届けてきますからといって直子さんの

家に行きます。途中電話をすると自宅は直子さんしかいないので急いで行きました。

家に着くとインターホンで「こんにちは高山です」と言うと「どうぞ」と直子の声です。

玄関から中に入り「お線香持ってきました」と言うと笑って「どうも有難う」と受け取り

3000円を渡します。私はそれを受け取りバッグに入れました。

中に入ると応接間のソファーに座ります。直子さんはコーヒーを入れて持ってきました。

「どうぞ」と言い私の前に置くと向かいのソファーに座ります。

私が「ちょっと相談があって」と言うと笑いながら「どんなご相談?」と言います。

「実は、妻がこちらに子供を連れてご挨拶に伺いたいと言ってるから・・・。」と言うと

「へぇ~、奥さんがこちらに?」と言い私が頷くと「良いじゃない、何時でもOKよ。」と

私が「えっ、大丈夫なんですか?」と言ったら「当り前でしょう主人も大歓迎よ」と

びっくりして「ご主人知っているんですか?」と聞くと直子が話したそうです。

 

 

 

第2章( 13 / 14 )

私は、ご主人にどういう風に話されたか聞いてみると、ごく普通に

「高山さん女の子生まれたそうよ」と言うと「へぇ~、どうして知ってるの?」と聞かれて

この間お線香が切れた時に電話をしたら「高山は今日休んでいます」と言うので

直接名刺に書いてある携帯に電話したら隣で赤ちゃんの泣き声がするから

「高山さんのお子さんですか?」と聞くと「はい、生まれたばかりで」と言うもんだから

「おめでとうございます、男の子ですか?」と聞くと「いいえ、また女の子です。」と

「それじゃ、暫らくお休みですか?」と聞くと「明日からでますよどうしたんですか?」と

言ったので「それじゃ、お線香持ってきて貰えますか?」とお願いしたと言ったそうです。

 

ご主人が「それじゃ何かお祝いするか」と言うので「そうね、でもお金の方が良いかも」と

言うと「それで良いから高山さんにあげといて」と言い「高山さんの赤ちゃんか?」

「見てみたいね」と言ったそうです。

「高山さんに話して見ますか?」と言うと「そうだな、その時は奥さんも一緒に・・。」と

福田さんのご主人が言ったそうです。びっくりしました、てっきりご主人に黙って祝儀を

包んだかと思っていたから、でも、よくご主人にばれなかったと思います。

 

そして次の日曜日のお昼頃福田さんのご自宅に伺う事にしました。

その日は、義父も義姉も家にいないから丁度いいかもと言う事で

お昼ごろ伺う事にしました。

その日が来て直子さんから直接電話が入ります。「今日は、時間通りこれます?」と

私が「はい、お昼前には伺います」と言うと笑って「よそいきの言葉使ってからに」と

電話の向こうでからかっています。

 

 

 

 

第2章( 14 / 14 )

愛人との意外な関係

福田さんのご自宅につくと妻は、「凄い家だね。」と言い豪邸を眺めています。

インターホンを押すと「はい、どうぞ車庫に入れてね。」と言うので

門の傍の車庫に車を入れます。5・6台ほど入る車庫で側にはご主人のベンツと

直子さん赤いフィットそれにパジェロが停まっています。

車から降りて大きいバッグを出しました。それに赤ちゃんを寝かせる籠のような物も

とにかく荷物が多い、家に乳飲み子がいるとどこ行くのもおっくうになります。

 

玄関の前で妻が「お昼前に来ると昼飯たかりに来たと思われそうだね。」と言いました

「大丈夫、そんな事気にする位次元の低い人じゃないから」と言うと「そぅ~なの」と

少し開いた玄関を開けるとすぐ前に直子さんが立っています。

私から中に入って「こんにちは、お邪魔します。」と言って「私の妻と娘です」と言うと

「はい、こんにちは」と言い娘の真希の頭を撫でました。

そして、妻に「福田です、はじめまして」と言うと「高山の妻で恵です。」と挨拶しました。

私は、心の中で『妻と愛人の初のご対面だ』と思っています。

ご主人もすぐ出てきて「やぁー、高山さん久しぶりです、それからおめでとう。」と言って

くれました。「どうも、ご祝儀まで頂いてほんとに有難うございます」とあいさつしました。

 

中に入ると居間の方に座ります。少し低めの籐家具が置いてありそこに妻と私が座り

美希は妻の傍に持ってきた籠に寝かせます。

ご主人が私の真向かいに座り真希と守君は子供用の小さな椅子に座ります。

そして、直子さんが飲み物を準備しています。子供のジュースと大人はお茶を

それぞれの前に置きながら何故か妻の顔を何度も見ています。

そして、「メグちゃんじゃない?」と言い顔を近づけ「やっぱりメグちゃんだ。」と言います

私が、「妻を知っているんですか?」と聞くと妻に「ほら、近所にいたナオだよ」と

順の同級生だよと言うと妻は思い出したように「ああ、知ってる直子ねえちゃん」と

「中学3年までしかいなかったからね。」と言い「順は、元気にしている。」と言いました。

私が「順子姉さんの同級生だったの」と聞くと「そうか、高山さんの義姉さんになるんだ」と

笑っていました。ご主人が「直子の知ってる人」と聞くと「奥さんは友達の妹さん」と言うと

笑いながら「へぇ~、世の中狭いね、悪い事出来ないね高山さん」と言うと

一瞬ドキッとして「そうですね、どこに知り合いや親戚がいるか判らないですね。」と

言うとご主人は妻に「それじゃ、奥さんたまには娘さんと一緒に遊びに来て下さいよ」と

笑いながら「高山さん、今日は来てくれてありがとう」と言い「ほんとに申し訳ないけど

実は、これがあって」とゴルフの素振りの恰好をしています。

私は「そうですか?良いですよ気になさらないで行ってきて下さい。」と言うと

「それじゃ、奥さんもごゆっくりなさってください」と言って玄関に置いてあるバッグを持ち

出て行きました。

 

 第2章はこれで、終わります。 

 

 

パヤオ
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