やすきよ

 爆笑の連続が続き、みんな、大きく頷いた。桃香の印象はがらりと変わっていった。

周りから変人、不良と思われていた桃香であったが、漫才をする気迫に満ちた彼女を

見た生徒たちは、心から拍手を送った。鬼教頭にも今まで見せたことのないような笑顔が

一瞬爆発した。最後の漫才に入ると、口笛を鳴らす生徒も出てきた。いつの間にか、

教室は生徒たちでいっぱいになっていた。

 

 

*女性の魅力*

 

やす:やす子、で~す。

 

きよ:きよ子、で~す。

 

二人:(二人抱き合ってキスをした後)やすきよ、で~す。(やすは右手、きよは左手を斜め前方に伸ばす)

 

きよ:今時の女の子は品も色気もないわ~、おっさん歩きやもんな~、どないかしてほしいわ。やすもどないかし~や。

 

やす:え~、わてのどこがおかしいねん。女の子らしいとおもうねんけど。へんな歩き方してるか?

きよ:ほんま、気づかへんの。膝を外に開いて歩いてるやろ。みっともないで~。膝は、開いたらあかん。くっつけるように歩くんやで。よ~見ときや。こうやるんや。(着物を着たときのように、きよは内股で歩いてみせる)こんな具合にやってみ。やらんかいな。(やすの肩をポンと叩く)

 

やす:(きよから少し離れて、ロボットのようにぎこちなく膝をこすって歩く)こうか。こんなの、歩きにくいわ。わての気性に合わん。これが色っぽいんか?

 

きよ:やすの歩きは、気色悪いわ。もうやめとき。やすに品のある歩き方は、むりやわ。

 

やす:やすには、モンローウォークが似合ってるとおもうけどな~、どない。(お尻を思いっきり左右にフリフリ歩く)

 

きよ:あかん、もうやめとき、気色悪い。おっさんでも、逃げていくで。それと、あぐらは、やめなあかん。股を開いたら、下品や。しっかり、閉じて、横すわりをしや。いいか。こんなんや。(きよが横すわりをして、ほんの少し首をかしげ、笑顔を作る)さあ、こんなんや、やってみ。

 

やす:明治女すわりかいな。こうか。(やすは、横すわりをして、しかめっ面をする)あ~、気持ち悪いわ~、あぐらが一番やで。(あぐらで座りなおす)あ~、気持ちええわ。

 

きよ:あぐらはみっともない。股間が丸見えやろ。女は股間を見せたらあかんのや。股間は、秘密の場所やで。秘密をばらすようなことをしたらあかん。常に隠さなあかんのや。女っちゅうものは、ベールに包まれるから、いろっぽいんや。わかるか?

 

やす:そか、開いたほうが、気持ちええで。

 

春日信彦
作家:春日信彦
やすきよ
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