Z32

 

 

「アガリヤさん」

「はい・・・・・」

「あのさ、箱を積む時はシールが見えるようにしてって、何度も言ったよね?」

「あっ・・・はい・・・すみません」

「ったく、使えねえな・・・」

「・・・・・」

 

 

なんの為に、という感覚は、とっくの昔に捨て去った。

 

まともな職歴もない、学歴もない、そんな37才の男が

 

「人並みの生活」

 

を送ることなど不可能だからだ。

 

いや・・・正確には不可能ではない。

 

人の何倍も賢く、何倍も努力をしたり、人の何倍も汚いことをすれば・・・

 

だが、そんな気力はない。

 

一度、絶望に浸ってしまった心は時間の流れを狂わせる。

 

ドラマのような逆転劇は、宝くじの1等を当てることよりも難しいことなのだ。

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