途絶えたメール

 お菊は真剣な面持ちで数回頷いた。「はい、その考えは当たっているかもしれませんね。もしかすると、自殺じゃなくて、皇太子に殺されたのかもしれません。天皇家の出来事は誰も分からないのです。たとえ、殺人があっても警察は事件をもみ消す、とどこかの本に書いてありました。天皇家も警察も怖いところですよ」お菊は天皇家について書かれた本を思い出しながら話した。

 

コロンダ君は呆然として天井を見詰めた。「自殺じゃなくて、他殺ですか。これは恐ろしいですね。もし、和歌子妃が他殺であれば、野坂の他殺は十分考えられますよ。詮索するやからは、消されますね」コロンダ君はますます和歌子妃は殺されたように思えてきた。「お菊さん、天皇家のことはどうしようもないけど、野坂の仇討ちは成し遂げたいですよ。何かいい方法はありませんかね」野坂の他殺は間違いないと確信した。

 

 お菊は残っていたお茶をすすって飲み終えると、眼を閉じて考え込んだ。コロンダ君もいろいろ考えたが、野坂を殺した犯人がヤクザであればどうすることもできないと思えた。きっと、指図したのは警察に違いないと思えたが、もはや、ヤクザと警察がグルでは太刀打ちできないとあきらめかけていた。お菊さんはゆっくりと眼を開けるとつぶやくように話し始めた。

 「天皇家、警察、ヤクザ、A新聞社、を相手にけんかを売っても勝ち目はありません。へたに手を出せばこちらがやられてしまいます。分かっていることは、今の和歌子妃は偽者だということです。本物はだれかに殺されたに違いありません。おそらく、このことを知っているのは、亡くなった野坂さんとわれわれ二人じゃないですかね。そこで、われわれにできることといえば、このことを公に知らしめることです。でも、われわれが言っていることがばれれば、二人は消されるでしょう。1つの案ですが、2チャンネルを使って匿名で書き込みをしてみてはどうでしょう」お菊はこれしかないように思えて提案をした。

 

 コロンダ君は大きく頷き眼を光らせた。「なるほど、2チャンネルを使うわけですか。今の和歌子妃は偽者だ。本物は皇太子が殺した。こんな文言を匿名で書き込むわけですね。もし、このことが事実ならば、偽者の和歌子妃はノイローゼになって自白するかもしれませんね」野坂への弔いはこれしかないように思えて早速書き込むことにした。もはや、改憲した新生日本は、CIA主導の軍国主義日本に変貌してしまった。

 

 

春日信彦
作家:春日信彦
途絶えたメール
0
  • 0円
  • ダウンロード

17 / 18

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント