今度、きものを着よう その2

きものに惚れ込み、手入れに余念がない理由でございます。

 

きものは単純に美しいだけでなく、着れば、われわれの祖先の知恵が詰まっていることが如実に分かります。きっちりと畳めば長方形になって収納に実に便利であること、半襟だけを取り外して洗濯出来ることが、理にかなっていること、袖にくっついた袂があることで、着る人の動作に余情と色気が加わること、絹と言う織物が、殺菌効果があって虫もよせつけないこと。これらの全てが、生活を快適に、豊かにしようと試みた、いにしえの日本人の知恵の結集なのです。

 

どうか、今お読みになってくださっているあなたが、心から愛せるきものと出会えますように。

 

★《男性編》ではお手入れの仕方は書かなかったので、《女性編》をご高覧下さいませ。


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註1:御召(おめし)

縮緬組織(強撚糸を緯糸に織り込む)の絹織物のこと。正確には「御召縮緬」であるが、略して「御召」と呼ばれるようになった。

徳川11代将軍家斉がこの種類の縮緬をとりわけ愛し、留柄(他の者が着ることを禁じた柄)を作り、これを御召料(位の高い人が着る衣類)としたことから、御召縮緬と呼ばれるようになった。

右撚りと左撚りの強撚糸に糊をつけて、緯糸に使って織りこむ。織り上がってから湯の中で糊を取ると、右撚りと左撚りの糸が戻り、互いに絡みあって、「シボ」が立って、独特のざらざらとした風合いになる。

戦前は上流の奥様の普段着、という位置づけでかなりの人気があり、生産も多かったが、戦後はいわゆる友禅のきものに人気を奪われ、生産が減った。しかし最近になってそのシックで媚びないたたずまいに、きものファンの関心が高


まっている。

 

註2:雪駄(せった)

草履の一種。正装や礼装に合わせる履き物は、畳表(たたみおもて)(竹皮で編んだ表)の「草履」が正式で、いかに高価でも「雪駄」は履けない。これは、高価であっても、紬を正式な場所には着ていけないのと通じるものがある。

畳表の裏底に、牛革を縫い付けて、踵の部分に尻金(裏金)と呼ばれる金属製の鋲が打ち込まれているものが、「雪駄」である。歩いたときに、この鋲がチャラチャラと音を立てる。残念ながら筆者は聞いたことがない。

 

註3:地機(じはた)と高機(たかはた)

結城紬(ゆうきつむぎ)、結城縮(ゆうきちぢみ)を織る二種類の機織り機を指す。

地機は経糸を織り手の腰にくくりつけて、足につけた糸を引いて経糸の間を開けて緯糸を打ち込む。これは原始的なカタチの機械で、結城紬は伝統的にこの地機で織られてきた。

それに対して高機は、織り手は枠に腰掛け、足踏み形式で経糸の上げ下げを行なうという能率的な機である。

 

「今度、きものを着よう  その2」ここまで

深良マユミ
作家:深良マユミ
今度、きものを着よう その2
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