7.謎だらけの娘
幼なじみの倉田耕作は夏木と同じ大学へ進み、一時期夏木と同様プロゴルファーを目指したのですけど。でもでも己の限界を感じて、早々に大手ゴルフ場運営会社に身を投じました。
そして現在山東興業グループの若手取締役として抜擢され、あるゴルフ場に身を置いておりました。
この倉田氏現在夏木父娘が住みます埼玉県大宮市にありますゴルフ場におりまして、夏木の妻・利江さんが亡くなる前には家族ぐるみで付きあっておりました、夏木の無二の親友とも言えた人でした。
あの日の出来事がありまして以来、その倉田氏に呼び出されました夏木さん。そこで倉田さんから申し出られましたことって、またまた夏木さんをまたまた驚かすに十分と言えるものだったのです。
だってですよ、その提案とは娘・由美さんと現役プロゴルファー夏木さんとの対決を求めるものだったのですから。
それ聞きまして夏木さん、現在の自分を冷静に眺めましたんです。確かに今の自分は以前の自分とは違い、なかなか試合には出られない身。出られたとしても、以前のような結果も出せないプロでしかありません。
でもですね、そんな自分を自覚していたとしても、中学生になったばかりの、それも女の子と対戦させるって?。
倉田もプロを目指した男、それに現在の立場でプロ・研修生を雇用している人間。その立場ある人間が、力落ちたと言え現役のプロに年輪もいかない子供との勝負を提案するとは。
それ聞きまして夏木さん、やり切れない思いに駆られます訳で。
それも自分がゴルフ一筋道をわき目もふれず、家族も顧みずに突き進んできたとは自覚できますけど。でもその結果娘が自分と対戦するだけの力を付けていたなんて、その上娘のゴルフに妻、義理の妹や親友まで関わっていたことを知らなかったという事実。
その知らない・知らないことばっかりの中で、娘のゴルフが自分と対戦できるレベルなっている?っての驚き。でもそれって夏木さんにとって、夫として・父親としての存在感があまりにも薄かったとしか言いようがないことに、殊の外滅入ってしまっているとも言えたでしょうか。
8.親友の提案
そこで夏木さん、なるべく冷静になりまして倉田さんに
「倉田よ、お前がどんなこと考えてるか判らないけど、それって俺えらく見くびってるってもんだよなぁ」
「それ判って言ってるんだよな」
「場合によちゃぁ、俺お前との縁切ることになるかもだよ」
それに応えて倉田さん、特徴あります童顔の笑顔崩しまして
「夏木よ、俺もゴルフの素人じゃないさ。意味があるから提案してるんさ」
「もしお前がそれやってくれて、意味ないって感じたら縁切ってもらってもイイよ」
とサラッと答えたのでありました。
こう言われますと夏木さん断る理由がなくなりまして、タカが女の、それも子供とのゴルフ対決を不承不承でも受けなければならなくなりました。
その理由は親友だからという理由ばかりではなく、この倉田氏には夏木さんプロとして何かと援助受けてたもんですから。
なので夏木さん、
「わかったよ倉田、段取りはお前に任せる」
「だからヨシナに頼む」
「ただし言っとくけど、たぶんお前の思うようにはならないよ」
そう言うのが精いっぱいで、倉田氏のゴルフ場を後にしたのでありました。
そんなとんでもないお話しが、このこのゴルフ場の応接室で交わされておりましたこと、彼の由美ちゃんは知る由もなかったのでありました。
その由美ちゃんと言えば、間もなく夏休みになりますひと時を、例の庭の練習ネットで練習に余念がない。
だって相変わらずお父さんは仕事・仕事で、家にほとんどおりません。部活無事?やめまして、学校から帰りましたら宿題やる以外は練習三昧。
まさに由美ちゃんの思い通りの毎日、過ごせていたのでありましたから。
9.遂に遂に
そしてそして、その日はいよいよやってまいりました。その日とは倉田さんの計らいで、夏休みに入ったばかりの平日。
その対決?の場を由美ちゃん倉田さんから、
「由美ちゃんのゴルフをパパ見たいってさ」
「だから由美ちゃん普段通りにプレーすればイイからね」
「それしっかりできたら、パパ由美ちゃんのゴルフ続けること認めてくれるってだから」
そんな風に言われてます今日の由美ちゃん、ただただこの日を楽しみにしていたようなんですね~。
でもあの日以来の父娘関係十分には回復致しておりませんで、相変わらずの夏木さんの仕事ぶりですからゆっくり話することもできませずのここまで。
ですからこの件での会話はほとんどなかった、て~のが本当のところでございました。
そこにはこの日を半信半疑で迎えます夏木さんと、ただ父親に自分のゴルフを見せたいってだけ思ってます由美ちゃん。
そしてそしてその成り行きに息をひそめる様にして、何かの期待持って見守ります倉田さん。
はたしてはたしてその成り行きはいかがなりますのか、乞うご期待なのでありますけど。