秋の桜を愛でましょう

 目を覚ますと、俺はいつもの部屋にいた。
 ちゃんと布団に寝ていたし、下着も新しいのになっている。
「夢だったのか……?」
 俺は大きくあくびをしながら、ぼりぼり頭をかいた。
 時間を見ようとして、テーブルの上に置いてあるリモコンに手を伸ばす。
 俺は目を疑った。
 手の甲には、デフォルメされたウサギのキャラクターがプリントされている絆創膏が、一枚貼ってあった。
 何も言わずに、俺は絆創膏を指でなぞると、イナバの笑顔が浮かんでくるようだった。
 俺は、笑顔でため息をつく。
「ふふ、もしかしたら夢じゃなかったのかもな」
 俺は再びリモコンに手を伸ばすと、テレビのスイッチを入れる。
 リモコンをテーブルに置いて、近くにおいてあったスマホを何気なく手に取った。
 暗い画面をタッチすれば、いつもの味気ないメニュー画面が出てくるはずだった。
「……ははっ! 本当にマジなのか!」
 高校生の時に、初恋の女の子に告白した時だって、こんなに心臓はドキドキしていなかったと思う。
 スマホは、一枚の写真を画面に表示し続けていた。
 画面には、ひょうたんを背負った猫と、ピンクの着物を着た女の子が写っていた。
ささのは
作家:ささのは
秋の桜を愛でましょう
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