星を見つけた君ハートを見つけた僕

第2章 回想( 11 / 12 )

 そこに初めて辺りの喧騒が邪魔をした。
「桜~っ」と呼ぶ、女性の声がする。
「あっ!亜紀だ。戻らなきゃ」とちょっと慌てた桜がそこにいた。その慌て方を見て僕は、
「もしかして、今日帰るの?」と少し焦燥を覚えながら聴いてみた。
「うん、今日の三時頃の飛行機で」
「じゃ、急がなきゃね」
「俊介の連絡先教えてくれない?」と笑顔に戻って聴いてくる桜がやはりこの浜辺で一番輝いているようにみえた。
「うん、メールも教えるよ」と言ってお互いの携帯電話を交換し合って、自分のアドレスと携帯電話の番号を入力し合った。

「それじゃ、今度連絡するね。星見つけておくから」
「うん。ありがと。今日は楽しかったわ」
「うん。僕も楽しかった。帰り、気をつけてね」
「うん。それじゃ、また」
 と言って僕たちはその時は気持ちとは裏腹に違う方向に進んだ。

第2章 回想( 12 / 12 )

 その後、総司郎たちの元に戻ると、どこからか見ていたらしく、「やったな」と一緒に喜んでくれた。そして彼女が三時ごろの飛行機で帰るから、僕のアイデアに力を貸してくれ、と二人に頼み込んだ。二人は快く二つ返事で応えてくれた。そして僕たちは泣けなしのお小遣いを使い果たし、沢山の浮き輪を手に入れ、飛行機から見えるプライベートビーチを目指して自転車で突っ走った。
 地元の僕たちしか知らないプライベートビーチを目指して・・・・・・
 そして、そこで今桜だけのために出来る事をすることにした。
 総司郎と勇次は浮き輪を膨らます作業を買って出てくれた。僕はそれを海に浮かべていった。
 そしてなんとか三時までに浮き輪の文字が完成した。
 僕はこの時桜に一つの携帯メールを送った。
まだ、飛行機に乗ってなくて、届いてくれるといいんだけどと思いながら・・・・・・

 「泳げないキラ星のヒトデ様へ」
 泳げない君の為に海を浮き輪でいっぱいにするよ。
 そして海に浮かべたI LOVEYOUを君に送るよ。
 東の海を見ててね。

 離陸直後、桜から届いたメールには、
「涙で見えなかった。ILOVEYOUなんて。ありがとう」と…。

 その後、一週間ほど桜からの連絡が途絶えた。

第3章 回想( 1 / 11 )

 僕は一人焦り、妄想していたが、一人では抱えきれないと思い、総司郎たちに愚痴を聞いてもらうことにした。
「総司郎、俺んちに今すぐ集合だ!、勇次も呼んでくれ。作戦会議を開く」
「え~っ、今俺スイカ食べているんだよ。美味いぞ~お前が来いよ。分けてやるから」なんて総司郎はちょっと渋った返事をした。
「頼むよ、俺さ、あの時の彼女との事で相談があるんだよ。お前んちでは話せないだろ。今ちょっとピンチなんだ」
「ピンチって、もうおしまいなのか?」と総司郎。
「だから、とにかく来てくれよ。頼むよ」
「仕方ないな~。でも恋愛については俺も素人だぜ。勇次の姉貴にでも相談したほうがいいんじゃないか?」
「それは最終兵器だ!とにかく来てくれよ」
「わかったよ。じゃ、三十分後にな」
「おう!サンクス」
 と言って電話を切った。
 しかし、電話をかける相手が桜でないことがやはり自分の押しの弱さを痛感してしまう。

 あれから一度は電話をかけたのだが、桜の父親が出たらしく、こんな時間に失礼だのなんだのと色々な問題点を吹っかけて、呈良くあしらわれてしまった。その後何度か再トライしたのだが、つながらないのだ。

第3章 回想( 2 / 11 )

「おう、勇次もありがとうな。ちょっと相談に乗ってくれ」
「うん」と勇次は今日も口数が少ない。相変わらずだな。
「どうなっているんだよ。あの桜さんって言ったっけ?その後、どうなの?」
「それがさ、何度電話をかけても出てくれないんだよ。メールにも返事がないしね」
「お前さ、嫌われたんじゃないの?」と総司郎。よく切れる刀でずばりと切りつけられたようなセリフだった。
「やっぱりそうなのかな?」と考え込んでいると、勇次が、
「彼女に嫌われる事をしてないなら、嫌われてはいないよ。何か事情があるんだよ」と鋭いナイスフォローな指摘をしてくれた。
「勇次はそう思ってくれるか?」と僕。
「そうだよな。勇次はやっぱり目の付け所が違うな」と短絡的思考の総司郎が応えた。
 今の僕には全く余裕がないし、客観的に見ることが出来てない事も分かっているので、こいつらのこの考えは本当に嬉しかった。コップに注いだコーラの泡の音まで聞こえそうな静寂で苦しんでいた自分はもういなかった。僕の心臓の音のほうが大きくなっていた。勇次の声よりも…。
「じゃ、何だろう?どう言う事なんだろう?怪我したとかかな?病気になったとか?」と少し焦りが後押ししてネガティブな発想を展開してしまった。
「それじゃ、連絡つかないな。病院では携帯が使えないしね」と総司郎。
「可能性としてはそれもあるけど、携帯の料金切れと言う事も考えられるね」といつもより饒舌な勇次がまたもや論理的なロジックを展開してくれた。
「おおっ!それだそれ。そうに決まっているよ」と総司郎も同調していった。
「じゃ、もしそうだとして、今の俺に何が出来るかな?」

星兎心
作家:星兎心
星を見つけた君ハートを見つけた僕
0
  • 250円
  • 購入