星を見つけた君ハートを見つけた僕

第2章 回想( 8 / 12 )

「これはその・・・・・・」っといって何か考えていたみたいだが、それを遮るように僕は起き上がり、桜さんの注意をひきつけておいて、
「僕に桜さんとお付き合いするチャンスをください」と座っている桜さんに手を差し出した。
「こんどは怪我してない星がみたいので、一緒に探してね」と言って僕の手を彼女なりに力いっぱい握り返してくれた。
「少し歩かない?」と今度は桜さんから誘ってくれた。
「うん」と言って、白泡舞い踊る波打ち際を二人で歩き始めた。

「私の家は東京にあるの。俊介君は話し方からするとこの沖縄の人よね」と言い当てられてしまった。
「うん。やっぱり無理があるかな?遠距離恋愛って」と僕が地方である劣等感の様なものを心に感じ、不安に思いながら聴いてみた。
「今まではそう思っていたけど、俊介君がそれをどうにかしてくれそうじゃない?ちがう?」なんて笑顔で不安を払拭してくれた。
「うん。そうなるように僕頑張るよ」
「うん。私も」


第2章 回想( 9 / 12 )

「じゃ、早速一つ提案!」と僕が左手を挙げて意思表示をした。
「何々?」
「いきなりかもしれないけど、名前は呼び捨てにしない?その方が桜が近く感じられるから」と呼び捨てにしてみた。
「俊介って案外強引ね」なんて呼び捨てで返してくれた。間違いなくOKという合図だ。勿論とびきりの笑顔も一緒だから。
「そうかな?もっと僕の事を知って欲しいな」
「うん。私も」と言って繋いだままの手を少し強く握り返してくれた。

「少し泳がない?」と桜を海水に誘ってみた。
「私泳げないの」とちょっとブラックコーヒーを飲んだときみたいに苦笑い。
「それじゃ、もう少しこの辺りで一緒に話をしようか」と僕。
 周りの観光客の喧騒がストップモーションででもあるかのように二人の世界には邪魔をすることがなかった。

第2章 回想( 10 / 12 )

「俺も趣味とかあるけど、桜には趣味とかあるかな?」と中学生恋愛マニュアルを紐解いて見せた。
「うん。詩を書くのが好きなの。音楽も好き。映画もたまに見に行くかな。一番の趣味は作詩だねやっぱり」と言って僕と顔を見合わせた。
「奇遇だね。僕も作詩を少しするんだ。メロディもたまに作るから、作詩といってもリリックなんだけどね」
「リリックって難しいでしょ?文字数とか合わせなきゃならないし」
「そんな事ないよ。桜にも出来るよきっと」と言ってまたお互いに顔を見合わせて笑った。
「じゃ、今度作品を見せ合いっこしようか?」
「うん。いいよ」と言って打ち寄せる波を蹴り上げて、喜びを表現した。
「きゃ、冷たい。お返し」と言って桜も波と戯れた。


第2章 回想( 11 / 12 )

 そこに初めて辺りの喧騒が邪魔をした。
「桜~っ」と呼ぶ、女性の声がする。
「あっ!亜紀だ。戻らなきゃ」とちょっと慌てた桜がそこにいた。その慌て方を見て僕は、
「もしかして、今日帰るの?」と少し焦燥を覚えながら聴いてみた。
「うん、今日の三時頃の飛行機で」
「じゃ、急がなきゃね」
「俊介の連絡先教えてくれない?」と笑顔に戻って聴いてくる桜がやはりこの浜辺で一番輝いているようにみえた。
「うん、メールも教えるよ」と言ってお互いの携帯電話を交換し合って、自分のアドレスと携帯電話の番号を入力し合った。

「それじゃ、今度連絡するね。星見つけておくから」
「うん。ありがと。今日は楽しかったわ」
「うん。僕も楽しかった。帰り、気をつけてね」
「うん。それじゃ、また」
 と言って僕たちはその時は気持ちとは裏腹に違う方向に進んだ。
星兎心
作家:星兎心
星を見つけた君ハートを見つけた僕
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