【ISIS Selection 03】1978年ワールド・ツアー

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1978年ワールド・ツアー考( 1 / 8 )

ワールド・ツアーに至る道

デレク・バーカー(著)

 アメリカ以外の場所に住んでいる多くのディラン・ファンと同じく、私もボブ・ディランのコンサートを生で見る機会は1978年6月までなかったくちである。当時、私にとってディランは、この人の音楽が好きで、アルバムを数枚持っており、トップ・クラスのアーティストだから生で演奏を聞きたいなあという程度の存在でしかなかった。アールズ・コート公演が行なわれることになった時には、最終日が一番良い演奏をするだろうと思い、私は頑張って6月20日のチケットを取ることにし、友人がバーミンガムの指定されたボックス・オフィスの外で徹夜して、前方の席を取った。そして、25年前の6月のあの晩からというもの、私はボブ・ディランと彼の音楽に人生の多くを捧げることになり、現在に至っている。ゆえに、6月20日に私の人生を変え、年が終わる頃にはボブ・ディランの人生も変えたあの重要な1978年のツアーについて、四半世紀を経た今、シーンの裏側から検証してみる価値はあるだろう。




アールズ・コート公演(6/18)チケット半券


 1978年のワールド・ツアーについて記事が書かれることが殆どないのは驚きである。ワイト島フェスティバルを除くと、ディランが12年振りにアメリカ以外でコンサートを行なったのがこのツアーであり、現在45歳以下の人(アメリカに行くことが出来なかった人)には、これが初めてディランの生演奏に接する機会だったのだ。ヨーロッパでは長年ディランに飢えていた状態が続いたせいかもしれないが、こちらのオーディエンスやマスコミには1978年のツアーは好評だった。一方、アメリカではというと、1974年には全国的に、1975~76年にも局地的ながらツアーが行なわれていたため、明らかにディラン熱は冷めていた。その結果、秋から冬にかけてのツアーの一部のコンサートでは空席が目だった。
 『ストリート・リーガル』はアメリカのアルバム・チャートで11位まで上がるという立派な成績をおさめたが、『血の轍』『欲望』と続いた連続1位の記録をストップさせる結果となってしまった。後者2作品はその後も売れ続けマルチ・プラチナムを獲得しているが、『ストリート・リーガル』の売上は、発売後25年を経た現在、まだ100万枚を超えていない。ゆえに、リリース当時にこの作品に対して与えられたパッとしない評価は、今もなお継続していると言える。アルバムに収録されている曲は素晴らしいのだがレコーディングとプロデュースの手法がお粗末だ、というのが一般的な意見だ。シングル〈ベイビー・ストップ・クライング〉はヨーロッパでは殆どの国でトップ10入りを果たしたが、アメリカではビルボードのホット100にチャート・インすらしなかった。アメリカでは、ディランはもはや大衆とマスコミの期待に応えるアーティストではなかったようである。
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ロックンロール叢書
作家:デレク・バーカー
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