「藤ケンは優しすぎるのよ!」
と森村は言うと、つないでいた健一の手を口に持っていき
健一の人差し指を強くかんだ。
森村は、口を離すと走り去った。
健一は血がにじんでいる指を見つめながら、しばらく呆然となってそこに立ちすくんだ。
「優しすぎるのよ!」
森村の言葉がこだました。
健一は我に返り、森村の後を追ったが森村の姿は見えなかった。
そうするうちに森村の家の前に来てしまった。
健一は心配でしばらく家の前に立っていた。
玄関のチャイムを押そうかとも思ったが出来なかった。
30分程待ったが森村は現れず仕方なく健一は家に帰った。
家に帰っても健一は心配だった。
そして同窓会に行った事を後悔した。
そしてしばらくたったある日、森村が自殺した事を知った。
健一は自分のせいだと自分を責めた。
健一は橋の上に立っていた。
健一は心の中でささやいた。
「さよなら命。くつのひもが結べない女の子。」
夕陽が健一の背中を照らしていた。
さよなら命-くつのひもが結べない-「新訂版」
初版発行 2000(平成12年) 12月30日
改訂版発行 2005(平成17年) 10月10日
新訂版発行 2011(平成23年) 11月24日
著者 富士 健(ふじたけし)
e-mail fujiken200605@ares.eonet.ne.jp
発売元 forkN