さよなら命ーくつのひもが結べないー

132

「藤ケンは優しすぎるのよ!」

と森村は言うと、つないでいた健一の手を口に持っていき
健一の人差し指を強くかんだ。


 森村は、口を離すと走り去った。
健一は血がにじんでいる指を見つめながら、しばらく呆然となってそこに立ちすくんだ。
「優しすぎるのよ!」
森村の言葉がこだました。

 健一は我に返り、森村の後を追ったが森村の姿は見えなかった。
そうするうちに森村の家の前に来てしまった。
健一は心配でしばらく家の前に立っていた。
玄関のチャイムを押そうかとも思ったが出来なかった。
30分程待ったが森村は現れず仕方なく健一は家に帰った。

家に帰っても健一は心配だった。
そして同窓会に行った事を後悔した。

 そしてしばらくたったある日、森村が自殺した事を知った。

 健一は自分のせいだと自分を責めた。

 健一は橋の上に立っていた。
 健一は心の中でささやいた。

「さよなら命。くつのひもが結べない女の子。」

 夕陽が健一の背中を照らしていた。

133

 さよなら命-くつのひもが結べない-「新訂版」

      初版発行    2000(平成12年) 12月30日
      改訂版発行  2005(平成17年) 10月10日
      新訂版発行 2011(平成23年)  11月24日
     
      著者 富士 健(ふじたけし)
     
      e-mail fujiken200605@ares.eonet.ne.jp 

  発売元 forkN

富士 健
作家:富士 健
さよなら命ーくつのひもが結べないー
10
  • 0円
  • ダウンロード

132 / 133

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント