時仁は、亜紀の将来のことを尋ねた。「亜紀さんは、頭がいいから、医者になるの？」亜紀は、首をかしげて返事した。「今のところ、AIロボットの研究をしようと思っているの。これからは、AI中心の社会になるから、いかに、AIを役立てていくかが、課題になると思う。今心配なことは、AIの能力が高まれば高まるほど、人間の活躍する場が、縮小される点なのよね。それと、みんながAIに頼るようになれば、頭を使わなくなって、知能が低下するような気がするの。だから、脳医学も勉強しようと思っている。AIと脳の研究は、同時にやる必要があると思う。人が、AIと共生できればいいけど、きっと、いろんな問題が出てくるような気がする」

　頭のレベルが違いすぎる亜紀の話に何と応答すればいいか戸惑った。「AIロボットの研究か。さすが、天才。俺は、アホだから、難しいことはわからないけど、AIに依存する社会になることは予測できる。俺みたいな、アホにできる仕事は、なくなるかもしれないな。でも、アホは、アホなりに生きていけるさ。俺は、極楽とんぼだし」明菜は不安げな表情で尋ねた。「人間アイドルよりAIアイドルのほうが人気になったら、どうしよう。いったい、なにすりゃいいの？」亜紀もAIがどのように社会を大きく変えていくか、予測できなかった。確かに、AIによって便利な生活ができるようになるとは思えたが、人ができる仕事については、やはり、悲観的未来が待っているような気がした。「そう、嘆かないでよ。AIは確かに人間より有能だし、いろんな仕事ができると思う。でも、人と人とのかかわりは、心じゃない。だから、心に関する仕事は、今後、ますます、重要になると思う」

　時仁は、今一つ、納得できなかったが、AIと張り合っても、勝てるわけがないと思い、AIのことは気にしないことにした。「そうだよな。AIと人間は、別物だ。俺は、人間なんだ。人間は、人間らしく、生きていけばいいんだ。AIと張り合っても、しょうがないし」明菜もうなずいた。「人間のかわいらしさ、っていうのがあるわよね。それがわかってくれるファンもいると思う。よし、頑張るぞ～～。きっと、世界一のアイドルになってみせる」時仁も胸を張って将来を語った。「俺もやってやる。アロンの杖を探し出して、天下を取ってやる。今に見てろ」亜紀は、時仁の妄想には、あきれたが、二人の情熱にエールを送った。「その意気よ。人間には、人間の良さがある。AIを利用して、みんなが幸せになれる社会を創造すればいい。ガンバ。負けるな人間」

　　　　　　　　　　　　中共の狂気

　8月10日（月）山の日。朝食を終えた亜紀は、平原歴史公園に出かけた。いつもの白いベンチに腰掛け、広場を見渡した。公園には、子供達の姿はなかった。3月のころから、コロナパンデミックで公園に遊びに来る子供達もいなくなった。青空を見上げた時、風来坊がやってくるような予感がすると東の青空から、一羽の鳥が公園の上空に現れた。いつもならば、公園の上空をカ～、カ～と人をバカにするような鳴き声を上げて二度旋回して下降してくるのだったが、今日は、特攻戦闘機が突っ込んでくるように、亜紀めがけて急降下してきた。いつもののんきな風来坊にしては、様子が変だと思い、即座に立ち上がり、風来坊に大きく手を振った。ベンチ横にフワッと着地した風来坊は、ヨ～～と挨拶して、ベンチの背にヒョイと飛び乗った。

 特攻隊員にでもなったような風来坊に尋ねた。「いつもの極楽とんぼの風来坊とちょっと違うじゃない。コロナに感染して、頭が変になったんじゃない。うつさないでよ」風来坊は、即座に否定した。「まったく、コロナ、コロナって、そう、騒ぐんじゃない。PCR検査しなくとも、陰性だ。熱もないし、この通り、すこぶる元気だ。そんな、ことより、一大事だ！」亜紀は、いつにない興奮した風来坊に尋ねた。「カラスにとって、一大事って、何よ？」大きく深呼吸して、目をパチクリさせた風来坊は、「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせて、気持ちが少し落ち着くと返事した。「カラスのことじゃない。人間のことだ。聞いて驚くな、コンペーが戦争すると叫んでいる。ついに、発狂したぞ」

　亜紀には、ちょっと、信じがたかった。亜紀は、風来坊を疑うような口調で質問した。「ちょっと、それはないんじゃない。戦争しても、アメリカ連合、いや、世界連合に、勝てるはずがない。さらに、7月からの洪水で農地は破壊され、食糧危機に陥ってるのよ。兵糧攻めにあえば、餓死するのは、中国人なのよ。そんなバカなことはしないでしょ」風来坊は、目を丸くして返事した。「確かに。アメリカに戦争を吹っ掛けるということは、世界を相手に戦争を吹っ掛けるのと同じだ。戦争する以前に、SWIFT、CHIPSからの破門を食らい、諸外国からの農産物も手に入らなくなれば、中国人の半分は、餓死する。万が一、本当にコンペーが発狂したのならば、核ミサイルをアメリカ、台湾、日本にもぶち込むかもしれない。そうなったら、日本は、おしまいだ。一刻も早く、コンペーを消さないと、手遅れになる」

　コンペーは、本当に発狂したのか？冷静に考えれば、戦争できる国内情勢でない。約6億人は、貧困に陥っており、しかも、空前絶後の食糧危機に直面している。長江氾濫、干ばつ、バッタ、これらで農産物生産は半減する。こうなれば、江戸時代のような百姓一揆が起こりかねない。万が一、三峡ダムが決壊すれば、約4億人の被災者が出る。こんな現状で、戦争などできるはずがない。いや、逆に、世界に救済を呼びかけなければならない。「ほら、バッタが大量発生して、穀物が食い荒らされてるじゃない。風来坊、偵察し来てよ。身軽なんでしょ」

　風来坊は、あきれた顔で返事した。「おい、俺は、召使じゃないぞ。そんなことわ言われなくとも、中国の偵察は、コロナに感染しないように、3月からやっている。吉林省を偵察していた時、バッタに襲われて、危機一髪だった。今の中国は、国体をなしていない。野蛮人の集まりだ。山賊と同じだ。亜紀ちゃんも知ってるだろうが、中共のウイグル人への極悪非道は、人道的に絶対許されることではない。ウイグル人を奴隷のように働かせて、体調が悪くなれば、強制的に入院させ、治療と言って内臓を切り裂き、死亡させている。そして、あたかも、ブタの内臓を取り出すかのように、死体から内臓を取り出し、中国マフィアに売りさばいている。中共は、政府でも、何でもない。マフィアの親分みたいなものだ。中共は、人類のガンと言っていい。一刻も早く、壊滅せねばならん」

　中共は、発狂した悪魔のような宗教団体と同然。これ以上、世界が、悪魔中共を野放しにしておけば、台湾も日本も攻撃され、いずれ、ウイグル人のように中共の奴隷にされてしまう。「風来坊。中共は、悪魔なのよ。アメリカは、どんな政策をとるつもり。やはり、経済制裁が最も効果があると思うけど」風来坊は、うなずいた。「今、南沙諸島に空母を派遣しているが、今すぐ、戦争するつもりはない。というのも、中共幹部の欧米資産凍結をやったところ、彼らは、悲鳴を上げているらしい。そして、コンペーの政策に反感を持ち始めているそうだ。さらに、中共のドル取引をストップさせたから、食糧危機の現状において、食糧物資の輸入もできなくなっている。このままだと、国民の半数は、餓死することになる。コンペーは、国民を見殺しにする気だろう」

　もはや、発狂したコンペーは、人間ではない。中共幹部が、少しでも人間の心を持っているなら、きっと、国民の命を救うために、クーデターを起こすはず。最悪の場合、コンペーは、暗殺されるかも。亜紀は、トランプについて尋ねた。「トランプは、中共に対して、強行策をとっているけど、再選しそうかしら。今のところ、若干、バイデンが有利みたいね。バイデンは、中共の回し者なんでしょ」風来坊は、首を傾げて返事した。「いや～、何とも言えない状況だ。バイデンが、中共の回し者かどうかは、よくわからんが、中共に甘いことは確かだ。民主党は、副大統領に、黒人女性のハリスを担ぎ上げてきた。これが、吉と出るか？凶と出るか？何とも言えない。ただ、中共に対する強硬策が、トランプ支持率を上げていることも事実だ。このまま、中共に対する経済制裁が成功し、中共がアメリカに譲歩するようになれば、トランプの再選が濃厚になる」

　亜紀は、コンペーは、トランプに屈服するか、暗殺されるか、のいずれかと確信した。食糧危機を乗り切るには、世界からの食糧援助は不可欠。万が一、この現状で、世界を相手に戦争するなどと国民に公言すれば、必ず、暗殺される。コンペーも、そこまでアホじゃないはず。「ところで、日本は、どうすればいいの？日本は、中共の肩を持つってことはないよね」風来坊が、即座に返事した。「それはない。確かに、中共と手を組んでる企業はあるが、アメリカを敵に回すような愚かなことはしない。きっと、アメリカの子分として、経済制裁にも、戦闘にも、しっぽを振って参戦するはずだ」

　亜紀は、ちょっと不安になった。大企業は、中国に依存している。中国が崩壊したら、大企業は、どうなるのだろう？「中国が崩壊すれば、日本の大企業は、どうなるの？大きな痛手をこうむるわね」風来坊は、うなずいた。「確かに、中国の労働力はグローバル企業に利益をもたらした。でも、中国の労働力は、ウイグル人の奴隷労働だ。このような人権に反した労働は、壊滅すべきなんだ。今、多くのグローバル企業は、中共に支配されている中国から、アメリカに支援を受けているインドに拠点を移行している。スズキは、30年以上も前から、インドの価値を見出し、インド市場を拡大してきた。今後、ますます、グローバル企業にとって、インド市場は不可欠な市場となる。今、やるべきことは、自由主義諸国家が一致団結して、中共独裁国家を徹底的に、叩き潰すことだ。そのためには、自衛隊も、米軍を支援すべきだ」