シンシア

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シンシア -13p-

「お前ら、究極のストーカーかっ!!」
  冗談を言っている余裕が無くなってきていた。 歯を食いしばる。
  五階の他のところでは、腐死人がヘルフライドチキンをむさぼり喰い、赤ビールを飲んでいた。

  呼吸が荒く成ってきていた。
  汗で肌と下着が張り付き、肩で大きく息をする。
  鬼の形相で敵に立ち向かい、ひたすら銃を撃ちまくり、刀で切り、敵から逃れて行く。

「もう駄目っ、動けない!?・・・・・・」
「・・・クソッ・・・・・・」
  ゴクッ、唾を飲む。 (神様!?我等をお助け下さい!?・・・・・・弾・・・もつかな!?・・・)
  七階の他の所では、腐死人が地獄鍋と絶命酒で宴会を開いていた。

  ・・・・・・カシャカシャッ、カシャカシャッ・・・・・・。
「クソッ、開かないっ!?」
「ドケーッ、下がれーっ」
  バンバンバンッ・・・・・・、銃で数発撃ち、ドアを思い切り蹴り破った。
  そして、みんなが一気に外へ出た。
  火薬の臭いが漂う。

  下からの強いピンライトの光が、豪雨と闇を切っていく。 もう、みんなびしょ濡れだった。
「ファック ユー・・・・・・」
  歯を出して食いしばる。  願うように天に向かって神に叫んでいた。
  怒りと絶望感が体外に放出し、周りを威圧する。
  その間にも腐死人は、近付いて来ていた。

  少しの可能性を求めるように闇を、ゆっく〜りと見渡す・・・・・・!? 見渡す・・・!! 見渡し続ける・・・・・・。 
「もう駄目だっ!?・・・・・・」
「・・・私達っ、死・ぬ・の・ネ・ッ。 いや~!!・・・・・・イヤァーあ~アァ~・・・・・・」
 声が豪雨の音で瞬時に消えてゆく。

「黙れっ、だまれっ、ダ・マ・レッ!?・・・・・・シ~!?・・・・・・」
 左人差し指をゆっくりと自分の唇に持っていって当てたのだった。 みんなを納得させるように目で語りかける。
  ふと気が付いた時には、豪雨が小雨に成っていた。
  本能的に目が止まる・・・・・・!?
  一点を見据える・・・・・・!?  じっと暗闇を見つめる。 眼前に雫がし・た・た・り・落・ち・るのが数えられた。

  遠くから行きなり、目の前にヘリが一機、急接近して来た。
  ホバリングし、着地仕掛ける。
「早く乗れっ!!・・・・・・」
  生存者達は、目を丸くした。
  ヘリ操縦のプロとSWAT隊長の千堂と福富 明が乗っていた。
 
  一番始めに女性を乗せたと同時に開かないように止められた屋上のドアが破られ、凄い勢いで腐死人が屋上を侵食し、広がり始めた。
  直ぐにホバリングを高くし、ハシゴを降ろす。
  早乙女、関谷らが下から、千堂、福富が上から急襲して来る悪魔の荒波を撃ち続け、腐死人を倒していく。

  一秒一秒で伝わって来る威圧力。 正義感の強い城之内 猛(たける)が、関谷の肩を叩いた。
「先に行けぇーっ、ワァァァー」
  火炎放射器を放ち回した。
「しっかり、掴まれぇ・・・・・・」
  と千堂。

  空気をも震撼させる恐怖波動、
「ウワッ、ウワー・・・・・・!?」
 大きな声にみんなが下を見た。
  身の危険感にヘリを上げる。
  グッ、グッ、ググググッ、ゴゴゴゴー。  へりが凄く揺れた。
  千堂・福富・早乙女・関谷が直視し、目を見開いた。
  ハシゴにくっ付いていた。
「ナッ、何物だ・・・・・・!?」
「何だ・・・こいつは・・・・・・!?」
「でっ、出たなっ・・・・・・怪物のコスプレヤろー・・・・・・!?」

シンシア -14p-

「クソッ、また出やがったなー!?・・・・・・」
  みんなが生唾を飲み込んだ。

  五体を闇につながれ、細かい白い糸を引かせ、目で見える画面を歪ませた黒く大きな魔物が、そこには、居た。  赤い血と腐った緑が筋肉の間からにじみ出ている。

「アァァー・・・・・・」
  火炎放射器で腐死人からヘリを守り、離陸させ、三人の掛け声で一番最後に乗った下の城之内が足首を掴まれ、ハシゴから振り落とされた。  声が小さく成って消えて行く。 この時、三人は、知らず知らずのうちにヘリが高い所を飛んでいる事を思いしらされる。
「早く上がって来いっ」
  早乙女が言った。
  千堂・福富・早乙女がチャーミンに向かって撃ち続けた。

  身を屈めながら必死に上がって来る関谷が、まだ下に居た。
  向かって来る凄まじいばかりの暗黒パワーに三人共知らず知らずのうちに戦闘モードに入っていた。
「ワァァァァー」
「オリャァァァー」
「クッソォォォー」
  撃てども撃てども、ひるまずに上がって来る魔物。

「アァァー、クッソー、肩がーっ」
  怪物の手から放たれた多くの紫光ナイフの中の一本が、千堂の右肩を貫通したのだった。
  差し伸ばされた手でヘリ内に入る関谷。
  魔物は、身を左右に揺らしながら直ぐ下まで追って来ていた。

  ヘリに魔物の右手が掛かった。 そして、みんなが、それを見た。
「キャハハハハ〜」
  高笑い声と共に福富が石に成ってゴトンと音を出して倒れた。
  銃声の音が止む。

  みんなが福富を見て目を見開いた。
  唾を飲む。
  大きな魔物が腰まで見えていて、ヘリ内に片足が入って来ていた。
  そして魔物の前には、女性から変化したゴーゴンが立っていた。
  蛇の髪が動き、口があざ笑う。

   時間がコマ送りのスローモーションに成っていた。  誰もが死を直感した。
  しかし、その一瞬の間。
「目を瞑れェー、目・をツ・ム・レェー・・・!?」
「!!・・・」
「!?・・・」
  早乙女が、はっきりと大きな声で叫んだ。  カチャッ、カチャッ。

「オーリャァァー・・・・・・(当たれ〜ッ)」
  バグッ、ギャァァー、グワワワワァァー・・・・・・。
  ゴーゴンが回し蹴りで顔を蹴られ、後ろのチャーミンのいる方へ倒れて行った。
  雪崩れ式で共にヘリから外へ放り出される。
  ゴーゴンは、暴れた姿で魔物は、石に変わっていく格好で下の深い闇に落ちて消えて行ったのだった。

  右かかとに手応えを感じた後、静かに目を開けて上部につないだ手錠を外した。
  立って肩や胸で大きく息をする。
  二人が早乙女に向かって親指を立てていた。

  右手を少し上げて合図をする。
「救出しました。 ミサイルを発射します」
「了解・・・・・・ちょっ、ちょっと待った。 下から生存者が出て来た。 三十秒待ってから撃て!!」
「了解・・・三十・・・・・・二十・・・・・・十・九・八・七」
  カウントダウンされていった。
「六」の時にミサイルが幾つもの怪しげな紫の輪に包まれる。
「五・四・三・二・一」
  ミサイルが発射された。
  中心の六階に小型ナパーム弾が突き刺さる。

  ドッカーン、バッシャーン、ボーオォー。
  建物のガラスが割れ、中に火が駆け巡る。
  爆発による凄まじい突風でヘリが大きく揺れた。

「うわぁー、デカイぞつ。 ミサイル間違えたんじゃないのかぁー!?」と千堂。
  斜めに成って飛ばされて行く。
「大丈夫かぁーヘリっ、落ちないだろうなぁー!?」と関谷。

シンシア -15p-

「ウッホーッ、今度は、エアーサーフィンかよっ!? 一難去ってナントカやらか~」と早乙女。

  ヘリが安定感を取り戻した時にニースリーを見た。
  六階の渡り廊下を無くした建物は、まるで炎の十字架に見えていた。
  ふと早乙女の口から、つぶやくように言葉が漏れる。
「何だ。 季節外れのクリスマスか〜!?・・・・・・神様も季節感無いね〜・・・・・・とんだ演出だ・・・・・・!?」
  心の中でも喋っていた。
(生き抜いて行くのは、難しいんだよ。 そう簡単には、名を残させねぇーよっ)

「今日、朝早く稲穂地方 高羽尾の・・・・・・」
「本日未明 陽炎県 稲穂市  高羽尾のデザイン建築ビル "ニースリーデポン"にミサイルが撃ち込まれ・・・・・・ビルがテロに乗っ取られた可能性があるかどうか・・・・・・!?・・・・・・ミサイルの誤射か・・・・・・!? どこから飛んで来たものか・・・・・・!? 」

  ローカルニュースでも、全国ニュースでもニースリーデポンの無音の "炎の十字架!?" が映し出されていた。 

  大型の緑野総合病院の急患出入り口の方ではなく、直ぐ横の病院出入り口に沿った路地に丸みのおびた白と赤のシャレタ未来型パンダは、停まっていた。

  たまたま急患出入り口に向かおうとしている途中で、不審な救急車を発見したのだった。
  距離およそ三十メートル。  二十六歳の内科医師 保田 友梨だけが誰も居ない、車内の電器の付いた救急車に気付いたのだった。 そして近付いて辺りを見て、乗り込んで車内を見ていた。
 
 そして不審な顔をして出て来て、数歩 歩いた時だった。
  車が突如、豪炎に包まれ、突風と炎と共に多くの注射器とメスと点滴チューブがシュッシュッ、シュルシュルシュルと音をさせて友梨の顔を目掛けて襲って来たのだった。

「キャーッ!?・・・・・・」
 凄まじい程の風に飛ばされ、丸っこい草木にぶつかった。 
  そして瞬間的に目を瞑り、腰を抜かして四つん這いに成った。
  しかし、頭の整理が付かないまま、目を丸くして再度 見た時には、車すら無く、以前と変わらない風景が目の前に映っていたのだった。

  暗く・・・・・・雨水が垂れ・・・・・・床に湖ができ・・・・・・。  壁を黒く焼いたニースリーデポンがその場にあった。

  切れ者のナンバー1とナンバー2の鏡 春令と剣先 学が、二階のホールに立っていた。
  懐中電灯をつけて、辺りを食い入るように見直す。  昔から、言われる現場百回を地でいき、温故知新をわきまえたクールな男達だった。

  白い手袋をしてライトを当てたり、物をずらしたり、覗いたりしていた。
  気に成る物を見つける。
  天井に円状の何かを発見したのだった。
  鼻も微妙に血!?の臭いを嗅ぎ取る。 そして感!?

  仕事用の箱を開け、スプレーを回して吹き掛けた。
  続いてオルタネイトライトを当てる。
  すると中空にルミノール反応・血痕・青い雫が四方八方に、また下から上へ垂れているのが判った!?

「うっ・・・・・・!?」
  言葉が重なり、二人共 目を合わせた。
  頭上から静かに一メートル弱位の半透明のキンコジ (ソンゴクウの頭にはめられていた輪)が、通り雨のように幾つかゆっく〜りと回転しながら、二人を急襲した。
  異空間に飛ばされる。

  スパンッ、スパンッ、聞き覚えのある乾いた音とガラスの割れる音と物の壊れ散る音と叫び声と唸り声・・・・・・!?
  二人同時くらいにおもむろにカウンターから顔をだした。
  四十〜五十匹位のゾンビが、こちらに


 

シンシア -16p-

向かって来ていた。
「オおOh・・・・・・!?」
「マッマジ〜ッ・・・・・・!?」
  スパンッ、スパンッ、首を縮め、後ろに振り返った。
  全ての警察官や刑事達が、迫り来るゾンビに向かって発砲を繰り広げていた。 警察署!?
  反射的に鏡と剣先も戦いに加わる。
  ゾンビ達がみるみるうちに赤く成っていった!?
「・・・!?・・・!?」
「ナニッ!?・・・・・・」

  伸びていく、天井・壁・床に広がっていく。
  一気に爆発、そして炎上した。 全ての物が炎の中を舞う。
  一階の一室が焼却炉と化して人間を燃やし、焼き付くしていった。

  しかし、外から見ると中に普通に定員さんが何人かいるし、お客さんは、買い物をしているし、外壁も窓も何も壊れていないという普通通りの生活がそこにあった。 スーパー!?
  ただ、爆発した時は、多少窓がふくらんで揺れ、波紋をお越していた。
「モ〜ラッタッ!?・・・×××・・・」

(・・・・・・何事もなく、面白くでもない日常生活、恋人にするには、うっとうしい位の仕事・・・・・・時間に終われ、人から奴隷のように使われ、対人関係に疲れ、知らぬ知らぬうちにストレスを溜め、死ぬ迄 働かされる人生・・・・・・運が悪くて嫌気がさし、ヘドが出る)

  それとは、逆にコツコツと努力し、汗を掻いて真面目に頑張る人達もいた。
  人から活字離れを無くそうと、夢を創って行こうとする仕事。

  容姿は、やや可愛い系、性格も良く、人に好かれるタイプで現代に相応しくない朝比奈 恵は、芽育工房で出版業をしていた。

  しかし、実は、静かに百八煩悩を解放する呪文書を製作していた。
  手をかざし、紙に透かし文字を入れていく。
  本のタイトルは、『人が知らない隠したチャームは、夢が叶う』だった。
  微笑みを浮かべながら作業を進めて行く。

  ・・・・・・このホームページ上でも動画の透かし呪文が入っているという都市伝説の話しがあった・・・・・・。

  警察署から歩いていた。 歩き続けていた。
  そして三十分位した所で変身して入って行った。
  普通の挨拶、普通の会話をしてある一室に入って行く。
  乳児室の中には、看護婦が居たが透明なのと異次元の世界なので周りには、全く見えていなかった。

  真っ赤でドロドロの床。
「%■∞▼ ( タイマ )・・・・・・」
  と言い異次元の奴から黒い球体を貰った。
  中で魔物がスルーと動く。
  収まる場所を知っているかのように自ら掌から、ゆっくりと宙を舞い動き、立方体の透明な入れ物を擦り抜けて乳児の体内に次々と入っていった。
「成長したら全てを教えてやるよ」
  (・・・・・・犯罪率の結果をよくよく見てみると球体を入れてない人間の方が、犯罪をする可能性が十分に高い事が分かったんだけど・・・・・・もう、そういう時代が来ているんだろうな~!?・・・・・・)
 そして帰って行った。

 

  ・・・・・・我等は、みんなの中に一匹ずつ住み着いているんですよっ!?・・・・・・駆け引きを楽しみましょうよ・・・・・・『勝つ』か!?・・・・・・『負ける』か!?・・・・・・(微笑)。

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迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
作家:MNALI PADORA
シンシア
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