シンシア

シンシア -12p-

打ち込み、焼くだけ焼いて被害を最小限に抑え、後にSWATが突入、鎮圧するという考えだった。 特例により、早く終息させようと即座にヘリが飛ばされる。

  その頃ビル内では、早乙女(ヤクザの若頭)と関谷(刑事)が逢っていた。
「よっ」
  早乙女が関谷の上がったお尻を触った。
「うお〜っ。 てっ、てめ〜、気安く触るなー、相変わらずキモイぜっ、お前っ!!」

「また再会したんだ。 まあまあ、少しは、落ち着けよっ、ナッ・・・・・・それにしても、この雰囲気、何か様子が、怪しいと思いませんか・・・・・・!?」
  辺りを見ても気に成るものが、何一つも見当たらなかった。

  エレベーターから代表で調査に行った人達が降りて来た。
  中央近く迄、歩いて来る。
「さっきの騒がしかったのは、六階の渡り廊下が三つ爆破され、下に落ちたからみたいなんだ。 それ以外には、何も異常がなかったよっ!?」
  みんながお互いに目を交わし合う。

  何かを見て感じ察し、一番始めに動いたのは、早乙女だった。
「チェッ、こんな予定じゃなかったのにヨォー。  何もかもメチャクチャだ〜」
  八つ当たりか!? ジュースの販売機を続けて三つ力任せに倒したのだった。

  ガッシャーン。  裏蓋を力任せにこじ開ける。  すると中から、多数の武器や薬が出てきたのだった。

「キサマーこんな所にー」
「オイオイッ、そんな事を言ってる場合じゃないみたいだぜっ。  あれを見ろよっ!?」
  顎で関谷達に指し図をした。

  ホールにポメラニアンやトイプードル、ミニチュアダックスフント、ヨークシャテリアなどがいっぱい歩み出て来ていた。

 続けて三人 目の前に現れた。
  ピンクの桜や赤いバラ、黄色いアサガオの絵の描いてあるエプロンをした男達だった。
「これから料理をしようってか!?・・・・・・せめて正装して白長帽子と料理服を着て出て来いよっ」
  一瞬 関谷と目が合った。
  鋭い眼光と早乙女の言葉により腐死人に変わり、行きなり急襲して来た。

  二階ホールのシーリングライト(天井)や丸い額の絵(壁)や気球(催し物備品)の丸が腐死人の魔口に変わる。
  子犬達も左右に黒焦げた悪魔の腕と手を持ち、前後に四羽の腐った鷹の顔と首を持ち、胴体は、逆さの羽を持つカラスとの複合のバケモノに成った。
  壁や床やエレベーターから腐死人が、止めどなくあふれ出て来る。

「武器を手に取れーッ!!」

  早乙女が大声でみんなに叫んだ。
  強奪戦、生き残りゲームが始まる。
「ワワワワァーッ」
  腐死人に向かって撃ち続ける。 知らないところでエレベーター、壁、階段がシャッフルする。

  バッシャ〜ン、バッシャシャーン、ゴゴゴゴ〜ッ、轟音と共にビルが壊れていく悪夢をみんなが見せ付けられた。
  逃げ惑う人間。 魂・肉・血、全てをむさぼり喰う怪物。  『野生の世界』の番組のスタートだった。  上に向かって生き延びて行く。

「キャー」 一緒に逃げている永作みくが腐死人に腕を掴まえられた。  女の体を引っ張り、
「汚ない手で触るナッ」
  バババババンッ、早乙女が銃で腕を撃ち続け、切り落とした。
「さぁー行こう。 走れっ」
  必死に叫ぶ。  そして関谷達も後に続いた。  交戦する。

シンシア -13p-

「お前ら、究極のストーカーかっ!!」
  冗談を言っている余裕が無くなってきていた。 歯を食いしばる。
  五階の他のところでは、腐死人がヘルフライドチキンをむさぼり喰い、赤ビールを飲んでいた。

  呼吸が荒く成ってきていた。
  汗で肌と下着が張り付き、肩で大きく息をする。
  鬼の形相で敵に立ち向かい、ひたすら銃を撃ちまくり、刀で切り、敵から逃れて行く。

「もう駄目っ、動けない!?・・・・・・」
「・・・クソッ・・・・・・」
  ゴクッ、唾を飲む。 (神様!?我等をお助け下さい!?・・・・・・弾・・・もつかな!?・・・)
  七階の他の所では、腐死人が地獄鍋と絶命酒で宴会を開いていた。

  ・・・・・・カシャカシャッ、カシャカシャッ・・・・・・。
「クソッ、開かないっ!?」
「ドケーッ、下がれーっ」
  バンバンバンッ・・・・・・、銃で数発撃ち、ドアを思い切り蹴り破った。
  そして、みんなが一気に外へ出た。
  火薬の臭いが漂う。

  下からの強いピンライトの光が、豪雨と闇を切っていく。 もう、みんなびしょ濡れだった。
「ファック ユー・・・・・・」
  歯を出して食いしばる。  願うように天に向かって神に叫んでいた。
  怒りと絶望感が体外に放出し、周りを威圧する。
  その間にも腐死人は、近付いて来ていた。

  少しの可能性を求めるように闇を、ゆっく〜りと見渡す・・・・・・!? 見渡す・・・!! 見渡し続ける・・・・・・。 
「もう駄目だっ!?・・・・・・」
「・・・私達っ、死・ぬ・の・ネ・ッ。 いや~!!・・・・・・イヤァーあ~アァ~・・・・・・」
 声が豪雨の音で瞬時に消えてゆく。

「黙れっ、だまれっ、ダ・マ・レッ!?・・・・・・シ~!?・・・・・・」
 左人差し指をゆっくりと自分の唇に持っていって当てたのだった。 みんなを納得させるように目で語りかける。
  ふと気が付いた時には、豪雨が小雨に成っていた。
  本能的に目が止まる・・・・・・!?
  一点を見据える・・・・・・!?  じっと暗闇を見つめる。 眼前に雫がし・た・た・り・落・ち・るのが数えられた。

  遠くから行きなり、目の前にヘリが一機、急接近して来た。
  ホバリングし、着地仕掛ける。
「早く乗れっ!!・・・・・・」
  生存者達は、目を丸くした。
  ヘリ操縦のプロとSWAT隊長の千堂と福富 明が乗っていた。
 
  一番始めに女性を乗せたと同時に開かないように止められた屋上のドアが破られ、凄い勢いで腐死人が屋上を侵食し、広がり始めた。
  直ぐにホバリングを高くし、ハシゴを降ろす。
  早乙女、関谷らが下から、千堂、福富が上から急襲して来る悪魔の荒波を撃ち続け、腐死人を倒していく。

  一秒一秒で伝わって来る威圧力。 正義感の強い城之内 猛(たける)が、関谷の肩を叩いた。
「先に行けぇーっ、ワァァァー」
  火炎放射器を放ち回した。
「しっかり、掴まれぇ・・・・・・」
  と千堂。

  空気をも震撼させる恐怖波動、
「ウワッ、ウワー・・・・・・!?」
 大きな声にみんなが下を見た。
  身の危険感にヘリを上げる。
  グッ、グッ、ググググッ、ゴゴゴゴー。  へりが凄く揺れた。
  千堂・福富・早乙女・関谷が直視し、目を見開いた。
  ハシゴにくっ付いていた。
「ナッ、何物だ・・・・・・!?」
「何だ・・・こいつは・・・・・・!?」
「でっ、出たなっ・・・・・・怪物のコスプレヤろー・・・・・・!?」

シンシア -14p-

「クソッ、また出やがったなー!?・・・・・・」
  みんなが生唾を飲み込んだ。

  五体を闇につながれ、細かい白い糸を引かせ、目で見える画面を歪ませた黒く大きな魔物が、そこには、居た。  赤い血と腐った緑が筋肉の間からにじみ出ている。

「アァァー・・・・・・」
  火炎放射器で腐死人からヘリを守り、離陸させ、三人の掛け声で一番最後に乗った下の城之内が足首を掴まれ、ハシゴから振り落とされた。  声が小さく成って消えて行く。 この時、三人は、知らず知らずのうちにヘリが高い所を飛んでいる事を思いしらされる。
「早く上がって来いっ」
  早乙女が言った。
  千堂・福富・早乙女がチャーミンに向かって撃ち続けた。

  身を屈めながら必死に上がって来る関谷が、まだ下に居た。
  向かって来る凄まじいばかりの暗黒パワーに三人共知らず知らずのうちに戦闘モードに入っていた。
「ワァァァァー」
「オリャァァァー」
「クッソォォォー」
  撃てども撃てども、ひるまずに上がって来る魔物。

「アァァー、クッソー、肩がーっ」
  怪物の手から放たれた多くの紫光ナイフの中の一本が、千堂の右肩を貫通したのだった。
  差し伸ばされた手でヘリ内に入る関谷。
  魔物は、身を左右に揺らしながら直ぐ下まで追って来ていた。

  ヘリに魔物の右手が掛かった。 そして、みんなが、それを見た。
「キャハハハハ〜」
  高笑い声と共に福富が石に成ってゴトンと音を出して倒れた。
  銃声の音が止む。

  みんなが福富を見て目を見開いた。
  唾を飲む。
  大きな魔物が腰まで見えていて、ヘリ内に片足が入って来ていた。
  そして魔物の前には、女性から変化したゴーゴンが立っていた。
  蛇の髪が動き、口があざ笑う。

   時間がコマ送りのスローモーションに成っていた。  誰もが死を直感した。
  しかし、その一瞬の間。
「目を瞑れェー、目・をツ・ム・レェー・・・!?」
「!!・・・」
「!?・・・」
  早乙女が、はっきりと大きな声で叫んだ。  カチャッ、カチャッ。

「オーリャァァー・・・・・・(当たれ〜ッ)」
  バグッ、ギャァァー、グワワワワァァー・・・・・・。
  ゴーゴンが回し蹴りで顔を蹴られ、後ろのチャーミンのいる方へ倒れて行った。
  雪崩れ式で共にヘリから外へ放り出される。
  ゴーゴンは、暴れた姿で魔物は、石に変わっていく格好で下の深い闇に落ちて消えて行ったのだった。

  右かかとに手応えを感じた後、静かに目を開けて上部につないだ手錠を外した。
  立って肩や胸で大きく息をする。
  二人が早乙女に向かって親指を立てていた。

  右手を少し上げて合図をする。
「救出しました。 ミサイルを発射します」
「了解・・・・・・ちょっ、ちょっと待った。 下から生存者が出て来た。 三十秒待ってから撃て!!」
「了解・・・三十・・・・・・二十・・・・・・十・九・八・七」
  カウントダウンされていった。
「六」の時にミサイルが幾つもの怪しげな紫の輪に包まれる。
「五・四・三・二・一」
  ミサイルが発射された。
  中心の六階に小型ナパーム弾が突き刺さる。

  ドッカーン、バッシャーン、ボーオォー。
  建物のガラスが割れ、中に火が駆け巡る。
  爆発による凄まじい突風でヘリが大きく揺れた。

「うわぁー、デカイぞつ。 ミサイル間違えたんじゃないのかぁー!?」と千堂。
  斜めに成って飛ばされて行く。
「大丈夫かぁーヘリっ、落ちないだろうなぁー!?」と関谷。

シンシア -15p-

「ウッホーッ、今度は、エアーサーフィンかよっ!? 一難去ってナントカやらか~」と早乙女。

  ヘリが安定感を取り戻した時にニースリーを見た。
  六階の渡り廊下を無くした建物は、まるで炎の十字架に見えていた。
  ふと早乙女の口から、つぶやくように言葉が漏れる。
「何だ。 季節外れのクリスマスか〜!?・・・・・・神様も季節感無いね〜・・・・・・とんだ演出だ・・・・・・!?」
  心の中でも喋っていた。
(生き抜いて行くのは、難しいんだよ。 そう簡単には、名を残させねぇーよっ)

「今日、朝早く稲穂地方 高羽尾の・・・・・・」
「本日未明 陽炎県 稲穂市  高羽尾のデザイン建築ビル "ニースリーデポン"にミサイルが撃ち込まれ・・・・・・ビルがテロに乗っ取られた可能性があるかどうか・・・・・・!?・・・・・・ミサイルの誤射か・・・・・・!? どこから飛んで来たものか・・・・・・!? 」

  ローカルニュースでも、全国ニュースでもニースリーデポンの無音の "炎の十字架!?" が映し出されていた。 

  大型の緑野総合病院の急患出入り口の方ではなく、直ぐ横の病院出入り口に沿った路地に丸みのおびた白と赤のシャレタ未来型パンダは、停まっていた。

  たまたま急患出入り口に向かおうとしている途中で、不審な救急車を発見したのだった。
  距離およそ三十メートル。  二十六歳の内科医師 保田 友梨だけが誰も居ない、車内の電器の付いた救急車に気付いたのだった。 そして近付いて辺りを見て、乗り込んで車内を見ていた。
 
 そして不審な顔をして出て来て、数歩 歩いた時だった。
  車が突如、豪炎に包まれ、突風と炎と共に多くの注射器とメスと点滴チューブがシュッシュッ、シュルシュルシュルと音をさせて友梨の顔を目掛けて襲って来たのだった。

「キャーッ!?・・・・・・」
 凄まじい程の風に飛ばされ、丸っこい草木にぶつかった。 
  そして瞬間的に目を瞑り、腰を抜かして四つん這いに成った。
  しかし、頭の整理が付かないまま、目を丸くして再度 見た時には、車すら無く、以前と変わらない風景が目の前に映っていたのだった。

  暗く・・・・・・雨水が垂れ・・・・・・床に湖ができ・・・・・・。  壁を黒く焼いたニースリーデポンがその場にあった。

  切れ者のナンバー1とナンバー2の鏡 春令と剣先 学が、二階のホールに立っていた。
  懐中電灯をつけて、辺りを食い入るように見直す。  昔から、言われる現場百回を地でいき、温故知新をわきまえたクールな男達だった。

  白い手袋をしてライトを当てたり、物をずらしたり、覗いたりしていた。
  気に成る物を見つける。
  天井に円状の何かを発見したのだった。
  鼻も微妙に血!?の臭いを嗅ぎ取る。 そして感!?

  仕事用の箱を開け、スプレーを回して吹き掛けた。
  続いてオルタネイトライトを当てる。
  すると中空にルミノール反応・血痕・青い雫が四方八方に、また下から上へ垂れているのが判った!?

「うっ・・・・・・!?」
  言葉が重なり、二人共 目を合わせた。
  頭上から静かに一メートル弱位の半透明のキンコジ (ソンゴクウの頭にはめられていた輪)が、通り雨のように幾つかゆっく〜りと回転しながら、二人を急襲した。
  異空間に飛ばされる。

  スパンッ、スパンッ、聞き覚えのある乾いた音とガラスの割れる音と物の壊れ散る音と叫び声と唸り声・・・・・・!?
  二人同時くらいにおもむろにカウンターから顔をだした。
  四十〜五十匹位のゾンビが、こちらに


 

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
作家:MNALI PADORA
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