2番目の例はtake it out on ~です。
3. Don’t take it out on me.
八つ当たりしないでよ。
take it out on ~は「~に八つ当たりする」という意味になります。
take ~ outは「~を取り出す」、onは「接触→方向」なので、最
初の解釈としては「それを取り出して~に向ける」です。itは何を
指すのでしょうか。「状況のit」でしょうか。
辞書によっては説明しているものもありますが、これは「怒り、欲
求不満」という感情を指しています。itの指すものがわかれば、
「怒りを取り出して~に向ける」から「~に八つ当たりする」と自
然に理解できます。itをOに取ることが多いことから、Oのitを
含めてtake it out on ~で載ることも多いです。
take ~ out, take out ~(~を取り出す)+on ~(~に) 他動詞+副詞 前置詞 |
↓
take A out[ take out A] on B AをB(人)にぶちまける[向ける] 他動詞+副詞+前置詞 = 他動詞+A+副詞+前置詞+B、他動詞+副詞+A+前置詞+B |
↓
take it out on ~ ~に八つ当たりする[当たり散らす] |
4. Her family was well off in those days.
彼女の家族はその当時裕福だった。
well offは「裕福な」でよく知られている表現で、well off = rich
(裕福な)と覚えていても、なぜそういう意味になるのかはっきり
しません。well(うまく、十分に)があるので、なんとなく「裕福
な」という感じはしますが、offはどういう役目かと考えても、
「離れて」から思いつくことがなく、もやもやした状態のままで
す。
そこで副詞well, offを含む句動詞を考えてみます。すべて「彼の試
みはうまく行った。」という文意です。
His attempt went off well.
go off+副詞 (事が)~に運ぶ[進む]
His attempt came off.
come off (事が)成功する、うまく行く
come off +副詞 (事が)~という結果になる
いずれも自動詞+offで、come offの場合は副詞wellを伴わなくて
も「うまく行く」という意味になります。
go off, come offのoffは「ある事が離れて」から「ある事が終わっ
て」、さらに「ある事が行われて、ある事に成功して」に発展した
ものです。
したがって以下のように考えられます。
His attempt went off well.
go(進展する)+off(行われて)+well(うまく)
うまく行く
His attempt came off.
come(近づく)+off(成功して)
↓
うまく行く
His attempt came off well.
come(近づく) +off(行われて)+well(うまく)
↓
うまく行く
well offはgo off well, come off wellのoff wellと共通と考えて、例
文を分析してみましょう。
Her family was well off in those days.
be(~である)+well(うまく)+off(行われて)
人がSになり、「うまく行われていた」から「裕福だった」になっ
たと考えられます。語順がwell offと逆になっているのは副詞well
がoffを修飾しているからです。be off(行われている)のoffを
well(うまく)が前から修飾しているだけです。
be well off 裕福である = be rich
自動詞+副詞+副詞
しかし、これでもまだすっきりしませんね。そこでさらに似た表現
を捜すと、
be well off for ~ (物)が十分にある
があります。例文にfor ~以下を補って考えてみましょう。「裕福
な」ですから、for moneyがわかりやすいと思います。
Her family was well off for money in those days.
これでようやく「お金に対してうまく行われていた=お金が十分あ
go off well, come off wellの結果としての「状態」を強調したものが
be well offだと整理できます。
be well offの反意表現も含めてまとめておきましょう。
be well[comfortably] off 裕福である = be rich 自動詞+副詞+副詞 |
⇔ be badly[poorly] off 貧しい = be poor |
be well off for ~ (物)が十分にある |
⇔ be badly off for ~ (物)が不足している |
反意表現のbe badly offも副詞のwellがbadlyになるだけで、考え
方の手順は同じですが、確認しておきましょう。
Her family was badly off in those days.
彼女の家族はその当時貧しかった。
← Her family was badly off for money in those days.
「お金に対して十分に行われていなかった=お金が不足していた」
から「貧しかった」と理解できます。
いずれにしても、be well off for ~からいきなりbe well offを考え
るのではなく、時間がかかっても、副詞offのコア(行われて、成
功して)を理解することから始めましょう。そうしなければ、本質
的な句動詞の理解につながらず、同じイメージを持つoffを含む句
動詞に応用が利かないからです。
例えば、be, go, comeと対になる次のような他動詞bring, carry, pull
を含む表現
5. He brought[carried, pulled] his attempt off.
彼は自分の試みをうまく成し遂げた[成功させた]。
はoffが「行われて、成功して」とわかっていれば、「~を持って
来る[運ぶ、引く]」という動詞のイメージが違うだけで、簡単に理
解できます。
bring[carry, pull] ~ off, bring[carry, pull] off ~
~をうまく成し遂げる[成功させる]
他動詞+副詞
以上のように句動詞の理解に悩む経験は誰でもあると思いますが、
仕事でなければ時間を取って調べようという気にならないでしょう
し、受験であればとりあえず意味だけ覚えておこうとなるのは当然
です。そこで句動詞学習の経験から、難しい言葉を使わず、かみく
だいてまとめてみようと試みたのが本書です。
自分なりに英語学習で得た句動詞を考える上での要領は今までの説
明で少しわかってもらえたと思いますが、
視点を変える、省略を補う
の2点です。
ねこちゃん