N次創作大賞

一次審査通過作品

大賞「少女?ふたり」樹月敏郎

少女ふたり

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【あらすじ】

文化祭の女装コンテストの出場者に選ばれ、その上優勝までしてしまった有馬は、クラスメイトの別所美佳に「女装して私のお婆様に会って!」とお願いされる。なんでも有馬の女装姿が、彼女の幼い頃からの友人である「香奈恵ちゃん」にそっくりであるらしい。
最初は断った有馬だったが、彼女の熱意にほだされ協力することを決める。

【受賞コメント】

この度は大賞という私には過分とも思える評価を下さり、感謝の言葉に余っております。
今回のコンテストでは多くの作品がエントリーされていますが、漫画形式での参加は私1人のようでしたので、投稿した後になって日に日に「場違いではなかっただろうかと不安でビクビクと縮こまっておりました。(笑)
見る方によっては、私の作品は拙いものかも知れませんが、ひとりでも多くの方に楽しんで頂く事ができればと願っております。

【選評】

大賞となった樹月敏郎さんの「少女?ふたり」は受賞作唯一の漫画作品となりました。
元となるイラストのテイストに忠実に、元々の自分の絵柄であるように自在に描けているところにまず驚かされます。そして、わずか20ページの短編漫画ですが、構成や人物の表情などに光る点が多々見受けられ、同作者の他の作品も読んでみたい! と思わせるパワーがありました。
詰め込みすぎず、制限ページ数を最大限に生かして描かれているので非常に読みやすいですし、老若男女問わず万人が楽しんで読める作品ということで、大賞の受賞となりました!

佳作「花見酒」huku

花見酒

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【あらすじ】

いまは普通の女子高生として人の世で暮らすかぐやは、一年に一度、花見の時期に、異形であった彼女らが育てられた神社に帰る。迎えるのは、彼女らを見守ってきた「猫」。
猫から渡されたかつての装束を着、異形へと戻ったかぐやと猫は昔話をはじめる。それはかつて同じ場所で育った、猿の気どり屋や、虎のねえさま、そして育ててくれたおいさんの話……。

【受賞コメント】

イラストからあふれる力に導かれるように書かせていただきました。
自分だけでは生み出せなかった一人と一匹だと思います。
佳作という賞までいただき、感謝の念に堪えません。この度は誠にありがとうございます。

【選評】

多くの作品の応募があったお題「花見酒」ですが、ほとんどの作品が男性主人公目線による、イラストにある女性と猫と出会うというストーリーで、こちらの作品のように、イラストの女性自身を主人公になるものは珍しく、目を引きました。
登場人物はかぐやと猫の2人(匹)のみという潔さですが、登場人物を必要最小限に絞ることで、人物の心情をより深く描くことに成功しています。
まっすぐなかぐやと、少し斜に構えた猫のキャラクター造型も魅力的で、2人の会話の節々から立ち上る別れの予感には胸に迫るものがありました。

佳作「7thリュカ」トルサージ

メカと男性

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【あらすじ】

人の意識だけが永久に生き続ける、汎思念世界「ニューエ」への人類移住が始まってから50年ほど経った現在。
移住許可が下りる年齢・18歳になり、脳の全ての情報をサーバへと移植する手術を受けた主人公は、女性の形をした「リュカ」と呼ばれる誘導プログラムに案内されて、ニューエの中枢へと向かう。

【受賞コメント】

今回N次創作コンテストの佳作を頂きました。ありがとうございます。
コデラ様の描かれたお題イラストの透明感と緻密さを少しでも表現できればと思い、この小説を書き上げました。仮想現実の電子世界を流浪する主人公と誘導プログラム『リュカ』の物語を、お楽しみ頂けたら幸いです。
N次創作は波及創作を前提とした面白い試みだと思っています。様々な感覚をインスパイアすることで、一人では成し得ない新しい相乗効果が生み出されるのかもしれません。こうした機会を設けて頂いた皆様に、感謝しています。

【選評】

どの作品も非常にレベルが高く、受賞作選出が難航した「メカと男性」。最終的に3作品が残った中、用語や設定の細部にまでこだわりが見え、本格SFとしての世界観をしっかりと構築していることを評価し、トルサージさんの「7thリュカ」が受賞となりました。
また、ライトな短編が多い中、目を惹くハードボイルドな空気感も魅力的。ネットワ-ク世界という舞台の閉鎖的な雰囲気を容易に突き抜けてみせた最終章は圧巻です。

佳作「与えられた二直線」柚鳥百合子

背中合わせ

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【あらすじ】

高校に入学して早々、数学のテストで赤点ギリギリの成績を取ってしまった未明。私が得意なことは料理と裁縫だけ――自分に自信のない未明はますます落ち込んでしまう。
そんなとき、勉強もスポーツも得意なのに気取っていないところから「王子様」と呼ばれる星一と出会い、憧れを抱くようになり……。

【受賞コメント】

この度は受賞作に選んで頂きありがとうございました。
24様のイラストが可愛らしく、モチーフの一つ一つを物語にしたいと思いながら書きました。
読んで下さった方々の心にふんわりした幸せが届くといいなと思います。

【選評】

いい意味で、少女漫画の王道のようなガール・ミーツ・ボーイストーリー。未明は少しネガティブだけど等身大の女の子、星一はラブストーリーのヒーローにふさわしいイヤミなくかっこいい男の子、会話のひとつひとつがキラキラしていて印象に残り、すべてが甘酸っぱい。誰もに愛される青春ラブストーリーの条件を備えた作品です。
お題イラストに描かれている数学のモチーフや、バッグについた黄色いテディベアなどがストーリー内で上手に使われているのも選出の決め手となりました。

forkN賞「不貞寝トリップ」村咲アリミエ

異世界

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【あらすじ】

隣の席の憧れの女の子に「ファンタジーのお話って読む?」と尋ねられ、バカ正直にあんまり読まないと答えてしまった主人公・牧野勇樹。
自分のバカさ加減に呆れかえり、授業中に不貞寝をしたはずが、気がつくと草原のど真ん中に立っていた。なんとそこは妖精やドラゴンが存在するファンタジーの世界で……。

【受賞コメント】

この度は、forkN賞を受賞することができ、大変嬉しく思います。
素敵なイラストに出会えてよかったです。雨様、ありがとうございます。
ファンタジー好きな方にはもちろん、主人公と同じようにファンタジー作品はあまり読まない方にも楽しんでいただけたらと思い、書きました。書いた本人は、それは生き生きと書いていたと思います。ファンタジー、大好きです。 本当に嬉しいです。この嬉しさパワーで、今ならファンタジーの世界にトリップできるような気さえします。ありがとうございました。

【選評】

物語内で主人公の相棒となる「妖精」とのやりとりが、思わずニヤッとしてしまうほどユーモラス。どちらかというとシリアスで重い印象のあるお題イラストから、こんなコミカルな作品が生まれるのはいい意味で意外でした。
異世界のあれこれに突っ込み、戸惑う主人公の面白さは、主人公の「ファンタジーを読まない」という設定の勝利。「ファンタジーを内包するファンタジー」、いわばメタファンタジーと言える構成は、主人公のように日頃ファンタジーを読まない読者にも受け入れられそうです。

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