空白station-サンプル版-

黄昏rain( 1 / 2 )

 久しぶりの再会というものは、突然にやってくる。それはまるで突風のようでまた無風のようでもある。

 そこを立ち去ろうと思った時には、すでに遅い。もう目が合っている。

 「あれ、修平だよね?」

 その平然とした呼びかけに僕は、一呼吸、間を空けて返事をした。

 「そうだよ。そっちは彩だよね?」

 「君は、相変わらずだね。」という彩の言葉に、まだお互いが付き合っていた頃と何一つ変わっていないと感じた。

 僕と彩が別れて、三か月になる。と言っても付き合っていた期間も六か月と短いのが。。。

 彩は、僕が上京してきて初めて付き合った女の子で、さらに言うなら初めて一目惚れした女の子であった。

 一目惚れという事象を言葉で表現することは非常に難しい。理屈じゃなく一目見た瞬間に好きになっているのだ。体験したことがある人にしかわからない感覚だと思う。

黄昏rain( 2 / 2 )

 別れた理由というか振られた理由はそこにある。要は、想いが重すぎたのだ。
 それが一方的なら尚更だろう。
 僕は、彩のことが好き過ぎた。そしてそれを彩は、受け止めきれなくなった。単純なことだけれど複雑で、しょうがない割り切るしかなかった。恋愛は、片方がよければそれでいいというものではないから。
 「修平は、今日は用事?」
 僕がここ渋谷のハチ公口前に来たのは、新しい彼女との待ち合わせのためだ。
 それを直接言おうかどうか言葉に詰まる。
 あれだけ好きだと言っていたのに新しい彼女がいるという後ろめたさだったり自分が軽い男だと思われるのが嫌だという自尊心からだ。
 「うんそうだよ。待ち合わせ。彩の方は?」
 嘘にならずそれでいて核心の部分を削った言葉。
伊藤夏海
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