亜紀は、ニコッと笑顔を作り、お願いした。「これは、ヒフミンに奇跡を起こすお守りなの。ピースが、このネックレスをつけていてくれれば、きっと、ヒフミンの気持ちが変わるはず。ピースと結婚したいぐらい、ピースのこと大好きなんだから。ヒフミンに抱っこされたら、ニコッと笑顔を作ってね」ピースは、イヤなこった、と思ったが、亜紀ちゃんのお願いであれば、しぶしぶ我慢することにした。
昨日も一昨日も遊びに来なかったので、今日あたりは、ヒフミンが遊びに来る予感がした。昼食を終えて、亜紀が窓際でピースと戯れていると、案の定、ヒフミンは、植木の外から手を振って合図を送ってきた。いつものようにベランダに飛び出しピースを両手でつかみ高く持ち上げ、ぶらぶらと振って、ヒフミンをおびき寄せた。能天気なヒフミンは、人目も気にせず大声で叫んだ。「ピース、大好き~~」
ガサツなヒフミンはいつものようにドタドタドタと音をたて二階に駆け上がってくると、素早く亜紀からピースを奪い取りギュッと抱きしめた。一瞬、ピースの首元に目が行った時、ヒフミンの大きな目が点になった。鈴の横に“王将”の駒があった。しばらく黙っていたヒフミンは、グイッとピースを見つめると、チュ~~とキスをした。亜紀は、心で手を合わせた。そして、神に祈った。“ヒフミンがプロになれますように。神様、お願い。神様、お願い。”