合コン殺人事件

ナオ子は、そっと、夫の横に腰掛け、話に割り込んだ。「あなた、彼女は、課長のご息女でしょ。この辺にしておきましょうよ。これ以上、頭を突っ込むと、一生を棒に振ることになりませんか?」沢富刑事もそのことが気になっていた。「そうですよ。この辺でいいじゃないですか。こんなややこしい事件は、もう、こりごりです。ねえ、奥さん」沢富刑事は、ナオ子の顔をちらっと覗き、小さく頷いた。

 

 伊達刑事も、同じ考えであった。「そうだな。何の証拠もないんだ。いくら、憶測しても、逮捕はできん。もうよそう、そうだ、今日、課長から電話があって、来週の日曜日、遊びに来ないかってさ。沢富も一緒に。本部長も来るそうだ。どうだ?」沢富刑事は、ひろ子の言った言葉が、脳裏によみがえった。“もし、Hがホシなら、きっと接近してくる。”「え、私もですか?それは、ありがたい。喜んでご一緒させていただきます」

 

 ナオ子は、大きな声を張り上げ、立ち上がった。「ほんと、よかったじゃない。今日は、お祝いしましょ。そう、お寿司を取りましょう。沢富さんも、今日はゆっくりなさって」ナオ子は、有頂天になってしまった。課長と本部長に気に入られたと言うことは、出世、間違いない、と心の底で叫んだ。「ハア、お言葉に甘えて」沢富刑事は、改めて、ひろ子が言っていたことを思い出した。“本当に、接近してきたら、Sは、本ボシ。”沢富刑事は、頷いき、心でつぶやいた。ついにきたな。とうとう、Hは、動き出してきたな。今に見ていろ、必ず尻尾を掴んでやる。

 

春日信彦
作家:春日信彦
合コン殺人事件
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