あなたは今、並み居るライバルを抑え、書類選考、現場の面接を通過して、あとは最終面接を待つだけという状態にあるかも知れません。
これまで、既に多くの難関をクリアしてきたあなたは、自分に自信を持って良いと思います。
ところで、最終面接の合格率は、ある統計によると30~50%だそうです。
この数字を見て、私は思ったより低いと思いました。
それまでの企業側の採用にかけてきたコストと時間を考えると、かなりもったいない話です。
ただ、これは企業側に限った話ではありません。
あなたは、最終面接に至るまで、エントリーシート→履歴書→筆記試験→面接と進んできているわけですから、数ヶ月の時間はもちろん、これまで相当精神を擦り減らしてきたはずです。
そういう意味でも、あなたに与えられた、この最終面接というチャンスを生かして、是非ともこれまでの努力の実を結びたいところです。
もし、あなたが自信があるのであれば、一発勝負で望んだとしても全く問題ないと思います。
また、余計な知恵や準備がない方が、プレッシャーがなく自分の良さを出せるというタイプの人もいます。
しかしながら、少なくとも今こうして、本書を読んでいるということは、不安があるか、もしくは自信をより強固なものにしたいのか、のどちらかではないかと思います。
また、本書にあなたの貴重なお金を払ってもらっている手前、「今のあなたのままで自信をもって望めば大丈夫!」というワンフレーズで終わるわけにはいきません(笑)。
本書は、最終面接をする側から見た、あなたへのアドバイスです。
私は、これまで12社の会社の社長をしてきました。
そして、2,000人を超える人達の面接をした経験があります。
その中には、私がまだ社長という立場じゃないときに、当時の社長の反対を強引に押し切って採用した人間が3人いるのですが、会社に貢献してくれた後それぞれ巣立っていき、今では3人のうち、1人は大手上場企業の社長、1人は海外著名企業の社長、1人は世界的に名が知られている職人として活躍しています。
そういう意味では、人を見る目に関しては、誰よりも優れているのではないかと自負しています。
私の場合、どうしても採りたいのは、学力でも、第一印象でも、今の能力でもなく「何かやってくれそう」と思われせてくれる人物かどうかでした。
多少の温度差はあると思いますが、相手に期待感を持たせれるかどうか、というのは非常に大事なことだと思います。
面接に関する本は、世の中にたくさんありますが、本書は、これまでのものとは視点を変えて、面接に必要な事項を私なりに分析して、3つの構成要素にわけて、それぞれについて説明をしています。
これにより、最終面接に対する準備がしやすくなり、自信をもって本番に望めるようになるのではないかと思います。
最終面接に合格して内定を勝ち取って、1日も早く、残りの学生生活を有意義に過ごしてください。
本書が、その一助になれば、嬉しいです。
1)面接に正解はあるか?
僕がこれまで面接してきたなかで、不合格とした案件を振り返ってみると、以下のようなものがあります。
①特別な理由もなく遅刻しそれに対する謝罪も無かった方
②面接中にリラックスして良いと言った途端に羽目を外しすぎた方
③履歴書に書いていることと実際に大きな乖離が発覚した方
④話をしているときに目を合わせない方
⑤上から目線の言動が多かった方
⑥本人の意見を聞きたいのに、質問に対して差し障りのない答えばかりだった方
⑦面接が終わった後、外で偶然見かけたらまるで別人だった方
⑧覇気が感じられず、パッとしなかった方
⑨自社のことを聞いても、まったく分かっていなかった方
⑩一緒に頑張ろう!」と声を掛けたときに、リアクションが良くなかった方
こうしてみてみると、
①~③は「一般常識に欠けている」
④~⑥は「うちの会社には合わない」
⑥と⑦は「一緒に働きたくない」
⑧と⑨は「熱意が感じられない」
という感じです。
つまり、能力とは無関係な理由ばかりです。
「最終面接まで来る人の能力はほとんど差がないので、最終面接では能力はポイントにはならない」みたいなことが書いてあるのを見たことがありますが、正確には「差がない」のではなく「計ることができない」のです。
学生と社会人に求められる能力は異なりますし、その分野で働いた経験や資格が無ければ、能力を計ることは困難です。
それよりも、あなたの「人となり」や仕事や会社に対する「意識や姿勢」が見られています。
このように、最終面接というのは、それまでの面接とは違って、いくらマニュアルを読んできたとしても、ふとした瞬間に素が出てしまったり、本性を見抜かれるものです。
ここで、誤解をしないようにして欲しいのですが、素や本性が悪いということではありません。
それを出して良い状況と、出すべきではない状況を、分かっていないこと自体に社会人としての資質が問われているのです。
言い換えれば、面接の中には「不正解のある課題」と「正解の無い課題」があるのです。
それを見誤ってしまうと、残念な結果になりかねません。
しかしながら、逆に言うと、この違いさえ分かっていれば、特に心配する必要はありません。
あとはリラックスして最終面接に望むだけです。
2)面接で評価されるポイント
結論から言うと、最終面接において、最も評価されるものは「熱意」です。
ひと言で言うなら、面接官は、あなたが「その会社で働きたいという気持ちがどれだけ強いか」を知りたいのです。
男女関係でも一緒だと思うのですが、告白されればその異性が気になりますし、ラブコールが強ければその熱意に心が動かされて、結果交際に発展するというケースは多々あります。
ましてや、採用面接の場合は、企業側もあなたとお付き合い(採用)することを前提に会っているわけですから、熱意を伝えることができれば相思相愛になることは難しくありません。
大事なことは、気持ち(熱意)は、言葉や態度に表さなければ相手には伝わらない、ということです。
また、男女関係を例にしますが、「あなたが好きです」と言われても、この人は「自分のことを分かってくれてるんだろうか?」「自分のどこを好きになってくれたのかな?」と思うはずです。そして、「見た目だけで言ってるのであれば、長続きしないかも」とも考えるでしょう。
同じように、「御社が好きなんです」とか「貴社にどうしても入りたい」だけでは、逆に「この人はきちんと考えているんだろうか?」と不安に思われてしまうかも知れません。
「御社の◯◯◯なところに惹かれています」とか「貴社に入って◯◯◯ことをやってみたいです」のような、具体的な形で熱意を使える必要があります。
(※今更説明の必要は無いと思いますが、御社というのは話し言葉、貴社というのは書き言葉なので、面接では「御社」、書類には「貴社」を使います)
もう1つ、最終面接で、その合否の7割を握るとも言われる、とても重要なポイントがあります。
それは以下の2つです。
①第一印象
②最後の逆質問
これについては、後ほど、詳しく説明します。
これは、どの面接に関する本にも書かれていないことですが、私は面接を成功させるためには、頭に入れておくべき心得が3つあると考えています。
それは以下のものです。
①リサーチ
②あなたらしさ
③演出
①の『リサーチ』というのは、情報収集のことです。
あなたが最終面接を受ける企業および社長について、事前に情報を集めておくことです。
これだけは、面接が始まる前までに行っておく必要があります。
②の『あなたらしさ』というのは、他の候補者にはない、他ならぬあなた自身の個性を面接官に知ってもらうというものです。先に述べた「正解の無い課題」のときに、発揮して欲しい項目です。
③の『演出』は、先に述べたような「不正解のある課題」について、あなたらしさや本心を封印してでも、大人な対応をして欲しい部分になります。
②と③については、面接の最中での話になります。
ただ、事前に、面接で予想される質問項目についてシュミレーションしたり、心の準備をしておくことはできます。
このように、3つに分けて考えると、最終面接に対する準備がしやすくなると思います。
これから、それぞれの3つについて詳しく説明していきます。
応募企業は敵ではないですが、「戦いに勝つにはまず敵を知れ!」は鉄則です。
もちろん、入社希望をしている企業なので、既にあなたは、これまでにもその企業については十分に調べているかも知れません。
ただ、最終面接へ向けた情報収集となると、これまでとは少し違った角度で見直しをする必要があるのです。
これは、相手が、これまでのような「人事」だったり「現場」の人ではなく、「経営者」もしくは「事業責任者」であるからです。
よって、少しでも彼らとのコミュニケーションが取れるように、「大きな視点」だったり「経営的な視点」で、企業をリサーチし直してみましょう。
「経営と言われても何をすればいいのか?」と戸惑ってしまうかも知れませんが、そんなに難しいことをやって欲しいわけではありません。
具体的には、以下のようなものを見ておいてください。
1)プレスリリース、株主向け資料
これまで、あなたは会社のホームページで、企業概要や事業内容などは細かくチェックしていたと思いますが、ホームページにはそれ以外の情報も色々載っています。
①「プレスリリース」
企業の広報活動の一環として、公式にネタを配信しているものです。
企業によって「お知らせ」とか「サービスリリース」などと表記しているところもあります。
直近でやっていることや、出している商品などを知るのには絶好の資料です。
②「株主向け資料」
株式を公開している企業が、株主への状況報告や潜在株主(会社の株を買うかも知れない人)の投資判断のために出している資料です。
上場している企業に対して公表が義務付けられている「有価証券報告書」や「決算短信」
1年間の活動状況をまとめた「アニュアルレポート」などがあります。
こういった資料には「将来計画」や「経営課題」が書いてあり、これらには最終面接者が作成もしくは関与しているので、目を通しておいた方が良いです。(大企業では経営企画室のような部門が作成しているのが実態ですが、役員が必ず助言やチェックをしています。)
面接のノウハウ本には「企業理念」や「社長メッセージ」を見ておけと書いてあるものが多いのですが、正直言って、これらは形式的なものが多いので、一次面接のときには有効ですが、最終面接のときには小手先だけでは役に立ちません。
最終面接官は、ときおり意地悪な質問を投げかけてきます。
例えば、「会社の直前期の売上と利益の金額を知っていますか?」と聞かれたとしたら、あなたはすぐに答えられますか?
2)社長の書籍やブログ
大きな会社や人気のある会社の場合には、社長が本を出していることも少なくありません。こういうことを言ってしまうと残念に思われるかも知れませんが、社長は忙しいので、こういった書籍はぶっちゃけ、いわゆるゴーストライターが書いています。
しかしながら、そのゴーストライターは、きちんと会社や社長のことを調べて、社長への度重なるインタビューを通してまとめていくので、社長が書いたのとほとんど変わりません。
また、最近ではブログを書いている社長が増えています。
ブログは、外部の人達へ向けたPR要素もあれば、社内へメッセージの意味合いもあります。
内容的には、会社のことから日本の政治・経済まで、時には自分の価値観やプライベートな出来事に至るまで人により様々なので、どこまで参考になるかというのはあるのですが、社長が面接官だった場合の話すネタとしては絶好です。
会社にとって社長の存在は大きく、社長の性格や考え方が色濃く反映されますから、逆にその会社が自分が思っているとおりの会社かどうかを判断するうえでも、ブログは有効です。
場合によっては、あなたが入社すべき会社ではない、ことが浮き彫りになる、ということもあり得ます。
いずれにせよ、ブログには社長の本音が出ることが多いので、ブログがある場合には必ずチェックしておきましょう。
ちなみに、私は、以前はブログを書いていたのですが、それについての質問をもらうと、やはり嬉しいものです。
最終面接のときに「ブログを読んでいる」という話が出た応募者の中で、不合格になった記憶はありません。
これはブログを読んでるから合格にしたのではなく、そこだけ企業への関心が強いということで他の面でも他の応募者より熱意がまさっていたことによると思います。
3)会社や社長の取材記事
会社が、それなりの規模であれば、雑誌やネットニュースなどで、会社や社長についてのニュースや取材記事が掲載されているはずです。
会社の場合には、業績やサービス・商品についての評価から、将来戦略や成長可能性など、社長については、これまでの経歴や価値観だったり、ビジネスへの姿勢やビジョンなどを知るには良い機会です。
ちなみに、既述した①と②の資料は、内部の人が書いた内部からみた会社の姿ですが、こちらの方は外部の人が客観的視点からみた会社の姿が分かるので、非常に参考になります。
このように、リサーチは、最終面接の言わば「予習」となるものであり、やっておくと、自信をもって面接に望むことができます。
むしろ、社長のことをより知りたいと、最終面接が待ち遠しく思えるかも知れません。