私のようには絶対に成るな

そのとき、トラノがメイヤの前に立ちはだかった。

ヒョウはトラノに何度も噛み付いた。


やがてヒョウはその場から去っていった。

トラノは血まみれになり、もう動かなかった。

彼女はもう諦めて下りるしかない。


俺は自分の身代わりにテイナを死なせた。

なのに、トラノはメイヤの身代わりになって死んだ。

やっぱり、俺が山に挟まれて死ねば良かったのに。

トラノが死んだのも俺のせいだ。

もう死んでしまいたい。


「ペリダン酷いじゃないか」

「そんなことするから、トラノも死んじゃったよ!」


メイヤに連られてライも言った。


俺は二人の顔を睨みつけると言った。

「やい!そのことは二度と口にするな」

「やだ」

「ペリダンが死なせたのに、おかしいじゃないか」


やっぱり子供たちは言うことを聞かない。

だが、俺には二人を無事に連れて山を下りる責任がある。


「いいか、弱い者は強い者の言うことを聞かないといけない。

世の中、そういう物だからだ。

どういうことかと言うと、俺の言うことを聞けないと言うなら置いていってやる!」

「そんな。。。ごめんなさい」

「ごめんなさい」


彼らは口々に謝った。

ますます自分のことが嫌になった。


死ぬのは怖いけど、やっぱり俺も途中で自分で死のうか。

いや俺はテイナを死なせたけど、だからと言って自分が死ぬのはどうなのだろう。


死にたくない、せっかく親からもらった命なのに。

いやだからこそ、俺が空と山頂の間に挟まれるべきだったのではないだろうか。


繰り返しそんなことを考えた。


テイナが山に挟まれたことはみんな知っていることだろう。

下りたらみんな何と言うだろう。


とにかく今は子供たちを無事に登山口まで連れて行こう。

そのあと、俺にどんな罰が与えられても受け入れよう。

そう決めた。


夜遅くになり、村に下りた。

たくさんの人が迎えに来ていた。


メイヤとライは両親の所へ走っていく。

俺は周りの人の方に目をやった。

怒っている人がたくさん目につく。

中にはこちらを目がけてピストルを構えている者もいる。


そのとき、誰かが言った。

「ペリダン、よくやった!」

鴨坂 科楽
私のようには絶対に成るな
0
  • 0円
  • ダウンロード

5 / 5

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント