北原の占いは、よく当たるとのうわさを聞きつけた桃香は、さっそく、相方の占いをやってもらったところ、本校にはいないという結果となった。とにかく、相方になってくれそうな人物を占ってくれるように懇願したところ、名門K高校の横山先輩にお願いするように、との占い結果が出た。秀才の横山先輩ならば、面白い台本を書いてくれるし、桃香と同じ京都出身で関西弁を話すから、相方にふさわしいと付け加えた。
膳は急げと、桃香は横山先輩に連絡を取ったが、即座に断られた。漫才はやったことないし、時間もない、ときっぱりと断られた。だが、後輩で、仲がよかった秀才の北原がコンテスト出場まで相方をやってほしいと頼んだところ、2ヶ月間だけと言うことで、横山はいやいやながら引き受けた。横山は、何度か母校の糸島中学にやってきては、桃香の相方として漫才の稽古をやった。台本は、アドリブ天才の桃香の助言を聞きながら横山が作り、稽古を重ねながら、二人で改善していった。芸名は、林やす子、横山きよ子とし、コンビ名は“やすきよ“に決めた。
どうにか、形となった漫才がどの程度うけるか確認するために、放課後、先生たちには内緒にして、2年B教室で漫才をやることにした。占い俱楽部部長の北原、クラスメイトの親友の市川、新聞部部長の柏木の三人に評価を依頼した。漫才は、「ぼやき」「秋」「女性の魅力」の3つのお題を順次やることにした。放課後になると、漫才の公演を聴きつけた野次馬たちが、数人集まってきた。二人が、登場すると、小さな拍手が起きた。
*ぼやき*
やす:やす子、で~す(向かって左)
きよ:きよ子、で~す(向かって右)
二人:(二人抱き合ってキスをした後)やすきよ、で~す。(せりふを言いながら、やすは右手、きよは左手を斜め前方に伸ばす)
きよ:JCとJK、が漫才に革命を起こしにやってきました~、と言うことで、ガンバラな、あかんで~、日本一になろな!
やす:マジ、JCでっせ、この制服ほんまもんや、お~、お客さん、JCって言ったら、拍手きよったで、ほんまにおおきに。ところで、しょうみ、このごろのJCは、よう分からんな~、人間なのか、妖怪なのか、宇宙人なのか、こまったもんやわ。
きよ:あんたもJCやんか、わけの分からんことゆうな~、なに、ぼやいってんの。