弟の涙

 翌日、美波は朝錬に出かけた。部室で着替え道場に出てみると、峰岸がやってくるのを待っていたかのように、三島が一人素振りをやっていた。三島に近づいた峰岸は声をかけた。「おい、話がある」三島は、素振りを続けながら答えた。「なんだ!」峰岸はしばらく間を置いて、答えた。「ダメだった」三島は、もう一度聞き返した。「何だって!」三島は、素振りの手を止めて、峰岸の顔を見つめた。

 

 峰岸も三島の顔を見つめ答えた。「士官学校、不合格だった」突然、三島に笑顔が爆発した。「そうか、ダメだったか、お前は、軍人に向いていなかったということだ、剣道をやれってことだ」三島は、言い終えると、突然走り出した。三島はうれしかった。三島も峰岸と一緒に剣道をやりたかった。三島は峰岸が見ている前で何週も道場をぐるぐると走り続けた。そして、何度もつぶやいていた、峰岸は、やっぱ、かわい~、かわい~、かわい~

春日信彦
作家:春日信彦
弟の涙
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