連想ゲームの着地点

「この日常感が良いのよ。つらい日とかでもさ。この記事見てるとなんかすっごく和むもん。わたしは大分行ったことないけどさ、これ読むと「あぁ、大ちゃんはこんな土地で育って。この記事の書かれた場所の近くで、大ちゃんのお母さんたちが暮らしてるんだぁ」って感じられるじゃん」

「でも、実際はこんな風にほのぼのしてねーぞ。事件だってそれなりに起こるしな。実際に行ったら理想と違うって言ったりしてな」

「そーかなぁ。そんな事いわないと思うよ」

まぁ、行った事ないから断言はできないけど。理想と違っても大ちゃんが住んでいた場所ならそれだけでテンションが上がってしまう。

「なら……試してみるか。実際のとこ、直接見に来いよ」

「え?」

「かっ観光ついでだ! そうあくまでついで。実家に泊まれば宿代もかかんねーし、おふくろも、紹介しろって煩いし。そのー、俺たちもいい歳だしな。それを踏まえてだなぁ。あー、まぁお前が良ければなんです……が」

語尾がどんどん尻すぼみになっていく。

「え? もしかして、それを言う為だけのあの前振り? 友人の話って嘘?」

「あれは実話だ」

大ちゃんはわたしからマグカップを奪うと、中身を一気に飲み干した。あー、苦いの苦手なのに。予想通り吹き出しかけた。

腕で口元を拭うと、わたしを睨みつける様にみた。

「で?」

「で? って、何よ」

「で、どうなんだ」

「ふふふ、そうだね~。いいんじゃないかな、わたし大分行った事ないし。丁度便利なとこに大ちゃんのご実家があるみたいですしねぇ」

「おぅ」

 わたしは大ちゃんに肩をぶつけながら、彼の顔を覗き込む。大ちゃんの顔はタコみたいな色をして、指輪をいじっていた。わたしは笑顔を抑えることができなかった。きっと頬がふにゃふにゃして変な顔しているだろう。

「覚えきれないくらい、いっぱい大分県の良いところ見せてよね」

「おぅ、任せとけ」

 付き合って八年。同棲して五年。

この指輪が本物になる日も近いのかも知れない。

 

白田まこ
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