「昨日は早めに帰っちゃってごめんね。バスの本数が少ないから」
次の日、登校してきた由紀に例の写真を見せた。
「……どこにあったの?」
「図書館の書庫よ」
「……そっか、ありがとう」
由紀はその写真を見て少し笑った。美希は由紀に近づいて訊いた。
「由紀が七不思議を解く目的はこの写真だったんじゃないの?」
「どうして七つ目の不思議を教えてくれなかったの?」
由紀は美希に悲しそうな顔で聞いてきた。
「……担任の先生が言ってた。由紀のお母さん、この学校の生徒だったんだね」
由紀は顔を伏せた。
「由紀が生まれた後、居なくなったってことも聞いた」
「お母さん、近所の興信所で働いてたの」
少し顔を上げた。
「高校の頃から頭が良くて探偵向きだったらしいの。でも私が生まれた頃、何かに追われるように消えたって聞いた。私の家にはお母さんの写真は一つも残っていなかった。でもこの高校に写真が残ってるとも聞いたの。だからこんなことしてたの。学校の先生は写真の事教えてくれなかったから美希の事利用した。ずるいよね」
由紀は苦しそうだった。
「そんなことないよ」
美希は言った。
「お母さんを探すために仕方なかったんだよ。この写真があればお母さんを探せるんでしょ?だったら利用されたなんて私は少しも思わないから」
「ごめんね……」
由紀は泣き出してしまった。美希は抱きしめた。
「だいじょうぶだよ。これからはお母さんのまねして探偵ごっこする必要ないんだから。もう探偵と助手って関係は終わり」
美希は泣き顔の由紀を正面から見つめて言った。
「友達になって下さい」
由紀は一瞬訳がわからない顔をしていたが、少し笑った。
「こちらこそ宜しくお願いします」