雛菊の剣(#1)/お前が笑っている時、俺も笑ってる

「無駄死にだな。Pはあいつを守ることになった。あいつを放って俺を助けにくることはない」
「化け物同士ってのは薄情なものだな」
九郎は嘲笑うかのような笑みを浮かべて七郎を見ている。
「気持ちの悪い化け物野郎が。一族の秘密を漏らしたお前を掟にしたがって殺すことができて嬉しいよ」
「刺客のお前を殺せば、俺は許される」
七郎の顔が憤怒に彩られる。
「母上は化け物のお前を産んで死んだ。母上の腹を食い破ってあの化け物鳥が出てきた。お前たちが母上を殺したんだ。俺は絶対にお前を許さない。俺は母上の仇をうつ。お前を殺した後は、あの化け物鳥を殺してやる」
「八郎もそんなこと言ってたな」
「八郎…」
「あいつは自分が自由になりたくて、自分が守るべき姫を殺した。掟に従い、親父に指名された俺が殺した。それだけだ」
「八郎を殺したのか!許さん!許さん!許さん!お前をぶっ殺す!」
七郎が後ろに跳びながらボールを九郎の上に投げ上げ、小さな刃物を投げてボールを突き破る。ボールが弾けて、飛び散った液体が九郎に降りかかる。液体を振り払った手が泡立つ。
「ひーひひっひっひ。やっぱりな。固くできても人間の体。酸で溶けるんだ。お前の体を溶かして砕いてやるよ。この化け物め。自分の体が壊れていく恐怖に怯えろ!」
九郎の腕が剣に変わった。九郎が七郎に切りかかろうとした瞬間、七郎が後ろに跳びながら玉を投げつける。玉は九郎に当たり爆発した。爆発で飛ばされた九郎が木にぶつかり、木は悲鳴をあげて砕け散った。九郎は苦痛に顔を歪めながら立ち上がる。
「なんだ、なんだ。丈夫にできてるんだな、化け物ってのは。腕の一本ぐらいちぎれるかと思ったのによ。まぁ、いいさ。安心しな、今のは小手調べだ。もっと強いのをお見舞いしてやるよ。何じっとしてんだ。ほら、かかってこいよ」
九郎は肩で息をしながら七郎をじっと見ている。

「何か狙ってるのか?それにしても、飛び道具の化け物鳥がいないと、お前って滅茶苦茶弱いんだな。おっと、俺が油断してるなんて思うなよ。お前は化け物だから、腕ぐらい投げてくるかもしれない。図星か?」
「よくしゃべるな」
「お前を殺せるのが嬉しくてしょうがないんだ」

つづく

愛のままに我がままに
作家:愛のままに我がままに
雛菊の剣(#1)/お前が笑っている時、俺も笑ってる
0
  • 0円
  • ダウンロード

13 / 14

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント