少女ふたり

翌日、朝から仁科がにやにやしているなと思っていたら、昼食の時にその理由が分かった。渚と灯と一緒に食堂で食べていたら、仁科がとっておきの宝物を見せびらかすように喋り出したのだ。
「灯ちゃん灯ちゃん、とっておきのニュースがあるんだよ」
「おぉっ、何だ!?」
「なんとっ!この2人が夜に裏庭でいちゃついていたんだ!」
俺は思わずカレーを吹き出しそうになった。渚もむせている。
「なっ、何で知ってるんだ」
「そりゃ~あんた、昨日彼女と裏庭から帰る途中でちらっと横を見たら、寮長と並んで座ってるとこを見ちゃったからでしょ」
うひひ、と笑って肘で小突いてくる。それに辟易していた時。
「駄目だっ!」
出し抜けに灯が立ち上がった。
「あ、灯ちゃん?」
驚く渚を見下ろして宣言する。
「私のもんに手ぇ出すな!渚でも許さん!」
「なっ……別に灯ちゃんのものではないでしょう?」
「わ・た・し・のなの!男子寮に忍び込んだ時に助けて貰ったこともあるんだぞ!」
「そ、それなら私も昨日助けて貰ったけど……」
状況についていけず目を白黒させる俺の前で舌戦が繰り広げられる。食堂で談笑していた生徒たちもなんだなんだと注目している。仁科は笑っていてアテにできない。
「ストップ!」
俺は立ち上がって渚と灯の間へ、二人の視線を断ち切るように手のひらを入れた。
「ちょっと落ち着けよ、頼むから」
「落ち着いてられるか!」
「そ……そうね、はっきりさせましょう」
なんだか矛先がこっちに向いてしまったようだ。
「お前はどっちが好きなんだよ!?」
「それとも他に好いている方がいらっしゃいますか?」
2人の問いかけにも俺は周りの視線にも耐えきれなくなり、食堂から逃げだした。
どうにも平和な学園生活は送れそうにない。





※この物語は、「ギャルゲーってこんなんかな」という想像を元に描かれたフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。ギャルゲー好きな方申し訳ありません。
高谷実里
作家:高谷実里
少女ふたり
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