義雄 「・・・馬鹿いえ」
優子 「わかってるわ。ケンカにいったんだわ。私、山下君には責任感じてるのよ。
私が山下君を演劇部のためと思って阿川君に紹介したんだから。
山下君、才能あるからそうしたんだけど、阿川君、松井さんとつきあいだして
からどんどんおかしくなっていくわ。
山下君に迷惑がかからないかと思って・・・」
英語の小柳愛子教諭がやってくる。
小柳 「あーら、山下さん、またお芝居書いてるの?今年の送別会でやったみたい
な私をだしにしたお芝居、また書かないでくださいね。
私が入れ歯をとったらまるっきりバアさんとか、日本語に通訳がいるとかっ
て。あのとき大笑いしてた人たち、もう卒業しちゃったからいいけど。」
義雄 「はい、もう書きません。」
義雄と優子、吹きだす。
[運動場 ] (放課後)
ブラスバンドの演奏するタイケの「旧友」が流れている。
運動部の生徒たちが練習をやっている。
[理科室の前の廊下]
掃除当番の男子生徒たちがふざけあい、一人の生徒をみなで理科室に押し込ん
で戸を閉める。
閉じ込められた生徒、下の戸を開けてとび出すと、そこに来た白衣姿の理科の竹
中金三教諭に出くわす。
竹中 「(大声で)アッ!コラ!なんだっ、アホッ!」
生徒、逃げ去る。
[吹奏楽部の部室]
義雄の指揮でブラスバンドが演奏している。
講師がそばの椅子に腰掛けて演奏を聴いている。
演奏が終わる。
講師が立ち上がり、義雄のかたわらに来て、生徒たちを見る。
講師 「この曲もだいぶうまくなったな。
トロンボーンはさらに音程が正確になるように、ポジションをしっかりおさえ
て音を出す練習をしなさい。
ユーホ二ウムは出番が多くて面白いだろう、この曲は。
山下君の指揮はうまいからよく見て従うように。
タイケの曲をもうひとつやっておきなさい。今日楽譜をもってきたから。」
-楽譜「ツェッペリン伯爵行進曲」-
講師 「ツェッペリンだ。テレビのスポーツニュースのバックミュージックでしょっ
ちゅうやっているから、みんな知ってるだろう。
どこの学校のバンドでもよくやってる曲だ。
いそがなくていいから練習しときなさい。」
[京浜急行追浜駅プラットホーム] (夕方)
義雄、立ち食い蕎麦の店に入る。
[ 蕎麦屋の店内]
上級生の下山幸吉が蕎麦を食っていて、義雄に気ずく。
下山 「山下君」
義雄 「あ、下山さん、(店員のおばさんにむかい)てんぷら蕎麦お願いします。」
下山 「おばさん、おれももう一杯。
おれ、この近辺の駅でひととおり食ったけど、ここが一番うまいよ。」
店員 「どうもありがと。」
下山 「山下君、今日電車に鞄おきわすれたんだって?」
義雄 「もう伝わったんですか。」
下山 「君、有名だもん。川中のせんちゃんの前で、前途有望を証明したこともね。
職員室で先生たちみんな大笑いになっちゃったんだって。」
義雄 「・・・・・・・・・」