コンテストお題「人である前に」

 シロからの話で、私はすべてを理解した。なぜだか、シロの言ったことを、すんなりと受け入れることができた。それは、この世界が主のものであって、私たち三人で一人をなしているからなのかもしれない。

 ただ、シロへの攻撃は止められずにいた。シロは、必死になっていた。

 「主の欲望が爆発しているのか」

 私がそうつぶやくと、シロの盾にひびが入った。それは、理性の崩壊であった。

 「俺を殺せばきっと主は生きることができなくなる」

 シロは私を説得しようとしたのだろうが、私の答えはもう決まっていた。

 「主は、人間である前に、動物なのだ。動物ならば、欲望のままに生きることしかできないのだ」

 シロの盾が大きな音を立てて割れた。そして、シロの胸を剣で斬り裂いた。シロは最後に鬼のような形相を見せた。

 そして、私は狂気のままに膨れ上がった玉を斬りつけた。

(了)

 

荻野目ちぶる
作家:荻野目ちぶる
コンテストお題「人である前に」
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