ナマポ!生活保護のススメ

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 そんな時、偶然数すくない友人の竹原秀夫と会社の社宅の話になった。「俺、今年一杯で今の職場も派遣元も辞めないといけなくなったんだ」竹原は俺が今回の件に限らず、いつも色んな職場を転々としていることを知っていた、そしてそういう風になってしまった俺の性格、その性格を作った家庭環境のことも知っていた。なんせ高校で同級になってから、10年以上付き合いが続いている数少ない友人だ。

 「ふ~ん、で実家帰るの?それかまたどこか住み込みの仕事探すのか?」改めて人の口から問題を突きつけられると、事の面倒さに気持ちが落ち込んでしまう。塞ぎこんでしまった俺に、竹原がポツリとこんなコトを口にした。「ワイんとこの会社の社宅、空いとる部屋があるから、入居出来るかどうか聞いてみようか?」

 竹原は地元では有名な中堅工務店で働いている男だ、彼の言う物件はいわゆるタコ部屋ではなく、ごくごく普通のアパートだと聞いている。願ってもない話なので俺は是非口聞いてみてくれ、と言っておいた。あんま期待すんなよ~と言っていたが、正直期待していた。

 幸い話はすんなり通り、まったく面識のない彼の会社の営業マンに物件の紹介をしてもらった。今済んでいるところとさほど距離も離れておらず、引越しは自分の所有している軽四で数往復するだけで済んだ。次は仕事探し、俺は今年で32歳だ。転職活動ね、、、求人誌をパラパラめくるが、この先一生を託す、そんな気持ちになれるような会社は何もない。「とりあえず目一杯せどりしながら考えてみようか」そう決めて新生活をスタートすることにした。

 「せどり」これは派遣で働いていたころから、やっていたことで、単純にブックオフなどの新古書店から本やCD,DVDなどを買ってネットで販売して利ざやを取るというものだ。ネットに繋がるパソコンとプリンター、それから1万円もあればとりあえずはじめることが出来る。引っ越したばかりでネットに繋がる環境がなかったので、引越し後ネットの回線工事の申し込みをして、パソコンがインターネットに繋がるまで1ヶ月ほどかかる。俺は失業保険をもらいながら、適当に就職活動をするフリをして、再スタートの日をのんびりと待った。一応、個人事業主になるので、開業届けを出さないといけないのかな?と思ったがカタチだけでも「他に収入を得る手段がある」となると失業保険がもらえないかもと思い、それは後回しにすることにした。

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 当初の予定では、この元副業のせどりに本業並みの力を注ぎ込めば、生計を立てていける目論見だった。

 しかし、その目論見が大甘だったことに気づくのはそう遅いことではなかった。マイペースでやっていけばいいと思っていたのが、そもそも誤りで月々のお金の収支がマイナスになるばかりの日々が、およそ半年ほど続いた。当初は最高の気分だった。存分に寝て、起きてひと心地ついたらPCたちあげて注文チェックをし、注文があれば梱包をしてコンビニや郵便局に持ち込んで発送。それから気分で、仕入れのために新古書店を廻ったり、近くの港へ車を飛ばしてゆっくりしてからアパートに戻り、せどり関係のブログを色々読んでみたり。。。

 今までの工場勤務から解き放たれた最高の気分から、結果が思うように出ず気分がゆっくり半年ほどかけてオチていって、そこからさらに半年は資金繰りでワケがわからなくなっていった。クレジットカードの支払いを、別のクレジットカードの支払いで補うようになり、次回の引き落とし額が捻出出来そうになくなって来て、月1万ポッキリの支払いのリボ払いに切り替えたり。


笹舟
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