”光や電子が粒子であって波でもある”という実在は可能なのか?
確率振幅を複素数φと記す。その意味は|φ|2=φ*φが確率密度を表しており、その総和、つまり全確率が1になるということである。
上記命題において
φ=φ粒子+φ波動
を意味しないことは、2重スリットの実験からわかる。
光源、1つ孔の第1スリット板、2つの孔1と孔2が空いた第2スリット板、そしてスクリーン上に検出器を置いた実験装置を想定する。
・φ粒子の計算
孔1だけをもつ(孔2を塞いだ)第2スリット板を通過する光の確率振幅
=φ1
確率密度は|φ1|2
孔2だけをもつ(孔1を塞いだ)第2スリット板を通過する光の確率振幅
=φ2
確率密度は|φ2|2
確率密度の総和は
∴|φ粒子|2=|φ1|2+|φ2|2
これは孔1と孔2をもつ第2スリット板において、光がどちらの孔を通ったかを観測するとき(分離時)の確率密度に等しい。
・φ波動の計算
第2スリット板の孔1を通過する光の確率振幅
=φ1
第2スリット板の孔2を通過する光の確率振幅
=φ2
確率振幅の和は(重ね合わせの原理)
φ波動=φ1+φ2
確率密度は
∴|φ波動|2
=|φ1+φ2|2=|φ1|2+|φ2|2+(φ1)*φ2+φ1(φ2)* :干渉項
これは孔1と孔2をもつ第2スリット板において、光がどちらの孔を通ったかを観測しないとき(非分離時)の確率密度に等しい。
以上の結果は、光の位置を第2スリット上で観測するときと、観測しないときとで確率密度が異なることを意味する。すなわち、
光は粒子性をもつ状態と、波動性をもつ状態とを重ね合わせた状態にあるのではなく、
結果はどちからであって、観測の有無によって確定的に決定される。
確率振幅の和が重ね合わせの原理にしたがう限り、光がどの状態にあるかを特定できない(いずれの状態も可能であること:確率性)。
重ね合わせの原理は、確率振幅の満たす方程式が線形であることを要求する。
Cf)
・量子力学の巧妙さは、粒子性とか波動性とかを気にせずに計算できることにある。
確率振幅φ1とφ2を複素平面上の2つのベクトルとみなせば、
粒子性は、|φ1|と|φ2|を2辺とする直角三角形にピタゴラスの定理を使う場合に相当する。φ1とφ2とが直交している状態である。
一方、波動性はφ1とφ2とが直交していない状態であり、余弦定理を使う場合に相当する。φ1とφ2とのなす角度θの余弦関数cosθの項が干渉項の正体である。
粒子性、波動性がいずれも古典的な概念(古典論からの派生概念)であることを認めてしまえば、
いつでもゴミ箱に投げ捨てることができる。
・ ニュートンは光の粒子説を主張し、
ホイヘンスは光の波動説を主張した。
物理学が哲学と違うのは、実際に検証可能な点にある。
つまり哲学的に粒子説と波動説との優位性を議論することはできても、決着はつかない。結論として量子力学は、どちらも間違っていることを教えている。