魔界島の決闘

 さやかはスタートからずっと神に祈っていた。アンナの勝利を信じていた。桂会長は勝利を目前にしてソファーで走りを眺めていたが、最終コーナーに突入したアンナを見て目を閉じた。アンナの安否を気遣ったのだ。スピンすれば生死をさまよう大事故になる。彼も神に祈った。命だけはお守りくださいと。


 彼が目を開けるとフェラーリはゴールに向かって驀進していた。MAXスピードはモンスター以上にチューニングされてあった。37・38・39・40・41時間は止まった。タイムは1分51秒841であった。アンナはあふれる涙で何も見えなかった。「やった、勝った!勝った!」さやかからの無線の悲鳴を聞くと気を失った。


 さやかは涙が止まらなかった。奇跡は起きた。さやかは涙を流しサーキットに飛んでいくとアンナをしっかりと抱きしめた。アンナはさやかとの別れを阻止できたことで涙が止まらなかった。


 10時に迎えのヘリがやってきた。二人は桂会長と別れの挨拶をしようとしたが彼の姿は無かった。代わりにサリーが飛び立つ二人に大きく手を振った。彼は五重の巨塔のリビングにいた。大きなモニターに映し出された飛び立つヘリを一人じっと見つめていた。そして、宝石箱から十字架のペンダントを取り出すと首にかけた。それは再会の約束を誓って、レイナからプレゼントされたペンダントであった。

春日信彦
作家:春日信彦
魔界島の決闘
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