ダムの危険性
水素と酸素からできている化合物(H₂O)は、気温、圧力の変化によって、気体、液体、個体と状態は変わります。その液体の状態を水と言います。信じ難いようですが、人間の約7割は水なのです。大陸を囲む海も塩化ナトリウムを含む水です。川も水です。そして、私たちは、浄化された無害な水を日常飲んで命をつないでいるのです。人は、水を摂取せずして生きていくことはできません。当然、地球上の植物や動物も水の摂取を不可欠としています。
また、現代においては、水は様々なところで活躍しています。最も身近なところでは、水の落下移動を利用した水力発電です。また、熱によって気体となった水蒸気は、火力発電や原子力発電で活躍しています。もはや、電気がなくては現代文化は成り立ちませんが、この電気を作り出す主役は、H₂0なのです。農業、工業、日常生活において、水は不可欠な存在なのです。一方、水を摂取しすぎても生物は死んでしまいます。水は、生物にとって生死にかかわる物質と言えます。
今述べたように、水は発電に利用されていますが、それに必要な設備としてダムがります。ダムに貯水がなされることによって発電だけでなく水害の防止にも役立っています。ダムは、川の水量を調節するために貯水したり、放流するわけですが、ここで大きな問題になるのが、豪雨における緊急時の放流です。ダムの貯水には限界があるわけですから、限界を超えるような水量に到達するようであれば、ダムの決壊を防止するために放流を余儀なくされます。
豪雨におけるダムの決壊を防止するために緊急放流を行えば、何らかの被害が生じることは予想されます。当然、そのことを想定したうえでダムは建設されているわけです。ところが、発電量を増加したいがために緊急時の放流の危険性を配慮せずにダムを余分に建設している地域が世界にはいくつかあります。特に、中国では危険性が想定された数のダムが建設されていました。万が一、想定以上の豪雨が発生すると大災害が発生するわけですが、このことがついに今年現実となってしまいました。
中国では、この夏から秋にかけて豪雨に見舞われました。そのため、多くのダムは放流を余儀なくされ、都市部だけでなく、広大な農地も洪水の被害を受けました。このことが、工場操業停止による工業生産の低下と農産物の凶作をもたらすことは容易に考えられます。中国の広大な農地は、洪水によって破壊され、農作物は収穫できなることでしょう。今後の食糧難が危惧されます。
確かに、中国はダム発電の恩恵を多大に受けたことでしょう。でも、豪雨によって引き起こされたダム災害によって、これまでの恩恵は帳消しにされてしまいました。むしろ、ダム災害は国家崩壊の引き金になってしまったといっても過言ではありません。中国に進出している大企業は、中国の大災害を察知し、中国からの撤退を始めました。もはや、中国は世界の工場としてふさわしい地区とみなされなくなってしまったのです。