南の短編集
ゴホン、ゴホン、
あの、押さえてもらえますか?
あっすみません。
ゴホン、ゴホン、
いや、お腹じゃなくて、
そうそう、口の方を。
有り難う御座います。
ゴホン、ゴホン、
いや、いや、
咳する時やめたら
意味ないですよね。
ですよね。
ゴホン、ゴホン、
指の幅広すぎ!
見ちゃダメだけど、
指の隙間から見ちゃう、みたいな。
大きいチョキ、もぅ超チョキ
みたいになってますから。
閉じて閉じて。
ゴホン、ゴホン、
何?何?何??
何で急にこっちの口押さえちゃうの!
今まで自分の体っていう
ルールでやって来たじゃない。
その急な方向転換、何~
次、頼みますよ。
妹:(一人なのにお風呂で兄がうるさい。)
民耳箕くんは、聞き上手です。
大体、仲が良い人達は
彼を呼ぶ時
「タミノ」くんと、呼びます。
今日もタミノ君は
職場の皆の話を
ニコニコ聞いています。
Aさん:昨日、家の鍵掛けるの
忘れちゃったのよー
タミノくんは茶化したりしないで
ニコニコ。
Bさん:今日お財布忘れちゃったの。
タミノくんは心地よく相づちをします。
ニコニコ。
Cくん:今日自分が誰か忘れちゃってさー
ニコニコ
Aさん:今日は鍵も忘れちゃったの。
Dくん:あちゃー仕事の資料を電車に忘れた!
ニコニコ
翌日、
タミノくんは昨日皆が忘れた物を、
自分が全部忘れてしまいました。