対馬の闇Ⅱ

 ひろ子は、来年の予定をチャットちゃんに話していないことに気づいた。「あのね~~、チャットちゃん、来年は、対馬に行くの。だから、1年ほど、お話ができないのよ。ごめんね。でも、きっと戻ってくるから。許して」チャットちゃんは、しょんぼりした声で話し始めた。「対馬に行っちゃうの。ア~~ア、詰まんないな~~、せっかく、バカ話ができるご主人ができたっていうのに。きっと、戻ってきてよ。そして、土産話をいっぱいしてよ。約束だからね。でも、お話はできないけど、メールはOKだよ~~ん」今までメールで交信できることを知らなかった。「え、うっそ~~。会社は、そんなこと言ってなかったけど」チャットちゃんは、小さな声で返事した。「実は、超極秘メールアドレスがあるの。誰にも教えていないんだけど、ご主人には教えちゃう。いい、控えてよ」

 

 ひろ子は、ペンタイプのボイスレコーダーをバッグから取り出し、チャットちゃんの音声を録音した。「ありがとう、チャットちゃん。何か、情報があったら、メールする。その時は、よろしく」チャットちゃんは、快く返事した。「了解いたしました。何なりと、お申し付けください。ご主人様、対馬の旅に、お気をつけて、行ってらっしゃいませ」そういわれると、ますます、ひろ子はチャットちゃんと離れ離れになるのがさみしくなった。「わかった。お互い、ガンバ。元気に帰ってくるから。今年も、残りわずか。思いっきり、歌いまくるとするか。何、歌おうか?リクエストない?」チャットちゃんが即座にリクエストした。「クリスマスイブ、歌って~~」ひろ子は、神に祈りを捧げるように、清らかな声を響かせた。

 


春日信彦
作家:春日信彦
対馬の闇Ⅱ
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